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住まいを失った人に「オリンピック選手村」解放を。東京都「民間事業のため難しい」

ビジネスホテルには住民票を置くことができず、携帯電話の契約や銀行口座の開設なども難しい。生活再建には、住民票を置くことのできる住居が不可欠だ。

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいは6月12日、東京都と東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会宛に住まいを失った人のために「オリンピック選手村」の一部を解放するよう要望する54,003人の署名を提出した。

署名はオンライン署名のサイト「Change.org」で、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定した直後の3月29日にスタートしたもの。

今後、より多くの人が住まいを失うことも危惧されている中で、住まいを失った人に住居を提供することを要望している。その入り口として、「オリンピック選手村」の解放を要望した形だ。

緊急支援ではなく、ビジネスホテルを支援のスタンダードに

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長、大西連さんは住まいを失った人への支援を充実することの必要性を強調する。

就労を目指す人のための東京都独自の支援制度「TOKYOチャレンジネット」、生活保護の一歩手前で生活再建を目指す人を支える「生活困窮者自立支援制度」、そして生活保護の3つのルートで現在、生活に困窮する人や住まいを失った人への支援は行われている。

東京都はこれまで、3つのルートを経由して住まいを失った人のために一時滞在場所としてビジネスホテルの部屋を提供している。その提供期間は断続的に延長されてきているが、先行きは不透明だ。

「今後、ビジネスホテルの利用が時限的な措置ではなく、恒久的に使うことができるようになれば良いと考えています。これまで生活保護を受けた際に入居先として案内される無料低額宿泊所は、多くの場合は相部屋でプライバシーの面からも良い環境であるとは言い難い状態でした。コロナ禍だから、ではなくより良い支援がスタンダードになることがベターです」

ビジネスホテルの利用には課題も

しかし、ビジネスホテルの提供だけでは解決の難しい問題もある。

ビジネスホテルには住民票を置くことができず、携帯電話の契約や銀行口座の開設なども難しいという点だ。生活再建のためには住まいが必要だが、その住まいを得るためには住民票や携帯電話が必要なため、道のりは容易ではない。

住民票を置くことの可否は居住実態をもとに決められる。「オリンピック選手村」の一部を解放することができれば、こうした問題もクリアできることが見込まれると大西さんは語る。

「これまでにも、相部屋に入ることは嫌だから生活保護は受けたくないという方がいらっしゃいました。国や自治体が連携して、より良い仕組みを作ってくれることを期待します。コロナの影響を受けた緊急支援ではなく、こうした支援を当たり前にして欲しい」

選手村利用は「難しい」

署名を受け取った東京都オリンピック・パラリンピック準備局の担当者は選手村は民間事業であり、大会期間中、東京都が借りて使用するものであることを説明。

大会期間後にはマンションとして入居することが決まっている部屋もあり、一時的であっても提供することは「難しい」との認識を示した。

一方、福祉保健局生活福祉部地域福祉課の担当者は、現在、住まいを失い、ビジネスホテルに宿泊している人々の「居宅移行を目指している」と話す。

合わせて、これまでTOKYOチャレンジネットを利用する人のみを対象にしていた、生活困窮者でも比較的入居しやすい条件の不動産情報を都内の各区市に閲覧可能な状態にしていることも明かした。

これにより、生活保護利用者などでもより容易に、初期費用が比較的低い物件などを探すことができる。

大西さんはあくまで選手村の解放を求める署名提出は「入り口」であると強調。今後も増えることが危惧される住まいを失った人への支援を充実させることを改めて、強く求めた。