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新規感染者100人超でも新たな要請はなし。 東京の感染状況について専門家が会見で強調したこと

都知事は「感染が拡大しつつある」状況であるとの専門家の総括を発表した上で、休業要請などが必要な段階ではないとの認識を示している。感染者数が増え続けてるのに、なぜこのような対応を取るのか?語られたのは医療提供体制、検査体制の変化だ。

7月2日、東京都の新型コロナウイルスの新規感染者数の速報値は107人。

緊急の記者会見を開いた小池百合子東京都知事は「感染が拡大しつつある」状況であるとの専門家の総括を発表した上で、休業要請などが必要な段階ではないとの認識を示した。

感染者数が増え続けてるのに、なぜこのような対応を取るのか?

小池都知事、そして専門家の医師2名から語られたのは、現在の感染者の7割は20代・30代の若年層であること、検査体制が3月時点よりも拡充されていること、そして若年層は重症化するケースが少ないため、現在の医療提供体制にはまだキャパシティがあるということだ。

感染者数の増加をどのように捉えれば良いのか。今後、取るべき対策は。小池都知事、そして専門家が会見で語ったことをまとめた。

「感染が拡大しつつあると思われる」

東京都は7つの指標をもとに、感染動態をモニタリングしている。この指標をもとにそれぞれ4段階で評価を行う。

【感染状況】:「感染が拡大しつつあると思われる」

(1)新規感染者数
(2)東京消防庁救急相談センター(#7119)における発熱などの相談件数
(3)新規感染者における感染経路不明者数および増加比

【医療提供体制】:「体制強化の準備が必要であると思われる」

(4)検査の陽性率
(5)救急医療の東京ルールの適用件数
(6)入院患者数
(7)重症患者数

今回、感染状況については「感染が拡大しつつあると思われる」として、4段階評価のうち上から2番目の評価を下した。また、医療提供体制については「体制強化の準備が必要であると思われる」として、4段階評価のうち上から3番目の評価を下した。

これらの分析を踏まえ、都知事は「感染拡大要警戒」と記されたフリップを掲げ、改めて注意を呼びかけている。

・年代別の感染者数では20代、30代が約7割
・地域別では新宿エリアと池袋エリアで多くの感染者
・感染経路別では、「夜の街」関連が約4割を占めている。

こうした感染者の傾向を発表した上で、小池都知事は接待を伴う飲食店だけでなく、「若年層の友人同士のパーティー、会食での感染」も確認されていることに言及。特に若者の場合は無症状である場合も少なくないため、「無意識のうちに感染拡大する恐れがある」とした。

「先日の会見でも申し上げましたように、宿泊療養含めまして、医療提供体制は十分確保されております。ただし、専門家の分析を踏まえ、高齢者層に感染が広がるなど、急速に感染増加する可能性は否定できない。より一層の警戒が必要です」

このままだと8月は接触歴不明の患者が6倍に

人口10万人あたり2.5人の感染者が確認された際に、社会に対して協力要請を行うことが望ましいと厚労省が定めた医療提供体制に関するガイドラインで定められている。

現在、東京都の新規感染者はこの数値を上回るペースで増えている状況だ。

国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師はこうした感染状況を分析する上で、こうした目安が3月、4月の段階での状況を踏まえて策定されていることを「頭に入れておきたい」とコメント。当時からは「状況が変わった」ことを強調した。

「PCR検査数も1日2000件以上に増えていますし、以前は陽性になられる方の中に50代、60代の方がかなりおられた。今は若い方が多い。慎重に捉えて、見ていきたいと思います」

大曲医師は同時に、警戒も呼びかけている。懸念されているのは、接触歴が不明な新規感染者の増加だ。

「7月1日時点での陽性者数の接触歴不明者は158%増。この状況で、変化なく増えていきますと、4週間後には1日あたり6倍の接触歴不明者となります。さらに4週間後には40倍になる。1400人の新規入院患者さん。これはかなりの数です。今日は、どういう状況かとお伝えしようかと考えました」

「患者さんの年齢層が変わるだけで、大きく医療の需要は変わってきます」

このままのペースで感染者数が増えれば、医療崩壊の危機が再び訪れるのだろうか。新規感染者数の増加が医療のキャパシティをどの時点で上回るかは「現段階で明確に示すことはできない」としながらも、このままでは4週間後には東京都がレベル1で用意している1000床の病床も埋まることも想定される。

このペースで感染者数が増えることは医療現場に「相当な負荷をかける」と大曲医師は強調した。

東京都医師会副会長の猪口正孝医師は、感染者の年代の変化に注意が必要だと語った。

「今日の107名のうち若年者、20代、30代が70%くらい。これが50歳、60歳以上となると重症化率が高くなってきて、入院の需要がグッと増してくる」

「今の数字が倍数化していくだけでなくて、患者さんの年齢層が変わるだけで、大きく医療の需要は変わってきます」

都知事「心からのお願いです」

感染者が増加する現状は「第二波」と捉えることができるのだろうか。小池都知事は明言は避けたものの、「第二波を起こさないために、堪える必要があるけれども、伸びていることが非常に嫌な感じ」と表現し、感染拡大を食い止めるためには都民の協力が必要であるとしている。

感染拡大を防止するため小池都知事は「夜の街」、夜の繁華街への外出には注意をするよう呼びかけた。「夜の街」関連の事業者には、従業員に積極的にPCR検査を受けさせるよう要望した。

「法律的なことはさることながら、協力のお願いをする。基本的な、心からのお願いです。また戻ってしまいますと、これまでのご協力が振り出しに戻る。このようなことはあってはいけない」

「学校も再開ということになって、子供たちの学びも改めて始まったところ。学校を止めてはいけない想いもありますし、経済社会活動との両立、新しい日常の定着、感染拡大防止とともに進めていきたいと考えています」