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「ここが医療逼迫の肝なんです!」これを最後の緊急事態宣言に。尾身会長が語った“山場”と“希望”

政府は東京に4回目の緊急事態宣言を発出することを決めた。なぜ7月、8月が「最大の山場」なのか。そして、この山場を超えた先に見える希望とは。

政府は7月8日、東京に4回目の緊急事態宣言を発出することを決めた。期間は7月12日から8月22日まで。沖縄県に出されている宣言も同日まで延長する。

宣言発出に関して、諮問を受けた基本的対処方針分科会ではどのような議論があったのか。4度目の宣言はなぜ出されるのか。

西村康稔・新型コロナ担当相、尾身茂会長の会見をまとめた。

要請に応じない場合、酒類販売事業者や金融機関にまで…

西村大臣は春の第4波においても、東京では早い時期に緊急事態宣言を出したことで医療提供体制の逼迫を回避できたと説明。今回も同様の考え方で、早めに措置を講じることを決めたとした。

「東京の重症者数はじわじわと増えてきている。ステージ4にいっているわけではないが、いかないようにしっかり抑えるということで、守るために緊急事態の対応をとりました」

政府は緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が発出されている地域では、協力金支払いの手続きを簡素化し、前倒ししていくとしている。同時に要請に従わない飲食店への対策を強化する方針だ。

・営業時間短縮、酒類提供停止に違反している飲食店に対する見回り強化

・要請等に応じない店への繰り返しの命令、罰則の適用

・金融機関に対し、要請に応じない店に関する情報を共有し、要請や命令を遵守するよう働きかけることを依頼する

・酒類販売事業者に対し、酒類提供停止の要請に応じない店への販売停止を依頼する

「『協力していない店が、なぜあんなに賑わっているんだ』このような不公平感もあると伺いましたので、協力していただける店には(協力金を)先払いで。他方協力していただけない店には命令や罰則を何度でも出す。さらには金融機関や販売業者にも協力をお願いして対応しようということです」

西村大臣は、今回の4度目の宣言を最後の緊急事態宣言にしたいと語る。

「今年に入ってずっと自粛をお願いしてきています。メッセージを発信し、共感を得て、協力を得なければいけない。ずっと苦慮しております。まさに、ワクチンが行き渡るまで、できれば本当の『最後の我慢』にしたい。いわば我慢の夏に、最後の我慢にしたいということで、(宣言の期間を)22日までとさせていただきました」

7月、8月が「最大の山場」と語る理由

分科会の尾身会長は「なぜ今回、宣言の発令に至ったのか。4つの点が重要です」と語る。

(1)4連休、夏休み、お盆、オリンピックなど感染が拡大しやすいイベントが重なる最大の山場であること

(2)感染性が高いと思われるデルタ株への置き換わりが着実に進んでいること

(3)第3波、第4波と違い、40代-50代の入院や重症者が増えていること

(4)首都圏では匿名性も高く、多くの人と会う比較的若い年齢層のライフスタイルが散見されること

こうしたポイントを踏まえ、現時点での宣言発出が妥当であると判断したという。

尾身会長は8日の分科会では、宣言を出したとしても効果を発揮しない可能性があるとの声も上がったと振り返る。

「コロナ禍における個人の気持ち、色々な気持ちがあると思いますが、緊急事態宣言慣れ、コロナ疲れ、それから一般の人が結構感じているのは『オリンピック期間中に自粛要請って、一体どうなっているの?』という疑問ですね。また、飲食店も疲弊し、そろそろ自粛要請も限界になっている。結構なパーセントのお店に要請を聞き入れていただけていない事実もあるわけです。こういうものが人の気持ちの表れだと思います」

「したがって、様々な対策を打つ必要があると思いますが、政府は単にお金を出すとか、検査をするということだけでなく、こうした一般の気持ちに向き合ってくださいとお願いしました」

「ここが医療逼迫の肝なんです!」

同時に尾身会長は現時点での今後の見通しを示している。

分科会は変異ウイルスの影響で重症化や入院が増えている40代、50代におけるワクチン接種が進むことで医療提供体制への負荷が減ることを期待している。

感染拡大を抑え込むことができれば、8月から9月にかけて社会全体に安心感が醸成されると説明している。その後、20代や30代など希望者へのワクチン接種が進むことで、社会経済活動が正常化していくことが期待できるという。

「おそらく9月頃になると40代から50代の希望者の多くは、ワクチンをうつことになると思います。少なくともこの年代の重症化リスクが65歳以上の次に高い。この年代で重症者が増えている」

「ここが医療逼迫の肝なんです!」

尾身会長は大きな声で、何度も、40代から50代の重症者が増えていることがボトルネックであることを強調した。

「一言でいえば、医療の提供体制への負荷を下げる要素は、現在はワクチン以外にはないんです。9月頃になると、希望者の多くがうつということになる。そうなると医療への負荷は減り、安心感が今よりも出てくると思います」

「重要な時期ですが、一体感を持ってやれば、なんとかしのげる。ただし、相手は手強いですから、今までよりも強い一体感を持つことが条件になります。これを最後の緊急事態宣言にしたいと思っています」