新型コロナの感染拡大を食い止めるための「勝負の3週間」が終わった。
感染が拡大している地域、感染状況が高止まりしている地域、感染が下降傾向へ転じた地域それぞれでどのような対策が必要となるのか。
新型コロナ分科会の尾身茂会長と西村康稔・新型コロナ担当相は12月21日、緊急で記者会見を開き、東京などの感染拡大地域での忘年会、新年会の見送りを訴えた。
「レストランの再開が感染を最も拡大させる」との研究も
尾身会長は「勝負の3週間」を終えた今、見解を示すことが専門家としての責任であると語り、このタイミングで緊急の会見を開いた背景を説明した。
また、このまま活動が活発なまま年末を迎えると、正月の時期に感染者が増加しかねず、要員が比較的手薄になる医療機関にとって、さらなる負担になることも予想されるため、早い時期に呼びかけることにしたという。
会見では3つの課題が示された。
1)首都圏からの感染の「染み出し」
尾身会長は、首都圏の感染拡大を抑えることができなければ、全国の感染状況を下降に向かわせることはできないとした。
2)感染者の多くが20〜50代、二次感染者の多くも20〜50代
「その人たちの責任を問う、非難するつもりはない」と前置きしたうえで、感染して移動した症例は若年層に多いと話した。また、移動後に二次感染を起こした症例も若年層に多いという。
3)「飲食を介しての感染」
「レストランの再開が感染を最も拡大させる」という研究結果が、イギリスで発表されたという。
また、日本国内においても感染経路が明らかになっているケースでは「飲食店(での感染)が多い」とした。
感染者数が多いこと、地方に比べて生活のあらゆる場面における匿名性が高いことなどを理由に東京では現在、感染者の約6割の感染経路が追えていない。
だが尾身会長は、これまでのクラスターの発生状況や、地方での感染拡大も飲食を伴うケースが多いこと、また欧州でのデータを踏まえ、その多くは「飲食店における感染によるもの」という判断を示した。
感染拡大地域では忘年会・新年会は見送りを
尾身会長は個人的見解として「首都圏、東京を中心とした地域が、シナリオ3にあたるのではないか」との見方を示した。
内閣府が算出したデータや国立感染症研究所による分析結果では、北海道、大阪では飲食店の営業時間の短縮要請が出て以降、人出が減っていることが確認できている。
しかし、東京ではなかなか減っていないという。
では、どんな対策をとるべきか。
尾身会長と西村担当相は「全国の国民へのお願い」と、さらに感染拡大地域への呼びかけの二つのメッセージを出した。
忘年会や新年会といった会食の場は、飲酒の有無や開催時間、どんな場所なのかに関わらず、感染が生じやすいという。
ショッピングモールのフードコートでも感染した例が確認されていることなどにも言及し、感染が拡大していない地域では食事は静かに、家族やいつもの仲間で行い、5人以上は避けることを呼びかけた。
喋る際にはマスク着用、それが難しい場合はハンカチなどで口元をおさえることが望ましいという。
また、帰省について尾身会長は「慎重に検討していただきたい」と、改めて訴えた。
そして、首都圏など現在も感染が拡大している地域では、忘年会や新年会は見送るよう求めた。帰省についても延期を含めて慎重に検討するよう要請した。
国と感染拡大が続く自治体へ
政府や感染拡大が続く自治体に対して尾身会長は、こう呼びかけた。
「飲食を中心として感染が拡大している。徹底的に抑えることが必要です。幅広い事業者を休業させる緊急事態宣言を出すような状況ではないと思いますが、このままでは医療が逼迫することは明らかです」
営業時間の短縮要請などの実効性をより高めるために、医療機関だけでなく飲食店の事業者に対しても経済的支援が必要であると強調し、「国として支援していただければ」と語った。