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コロナが日本人の休みの取り方を見直すきっかけに? 新型コロナ分科会、尾身茂会長が問題提起

尾身茂会長は新型コロナウイルスの感染拡大で「新しい生活様式」に移行することが求められている現在の状況を1つの契機として、これまでとは違う「新しい会食のあり方」を考える必要性を強調。そのため、提言の1つ目の柱には「新しい会食のあり方を考える機会」というメッセージが盛り込まれている。

新型コロナウイルス対策専門家分科会は9月4日、第8回目の会合を開き、現在の感染者数の増加状況、政府が今後始めることを予定している「Go To Eat」キャンペーン、ワクチン接種について議論を行った。

今回、会見で時間を割いて説明されたのは「Go To Eat」キャンペーンを実施する上で分科会が政府へ提言した4つの柱だ。

尾身茂会長は新型コロナウイルスの感染拡大で「新しい生活様式」に移行することが求められている現在の状況を1つの契機として、これまでとは違う「新しい会食のあり方」を考える必要性を強調した。

分科会が政府に提言した4つのポイント

政府が実施を予定している「Go To Eat」キャンペーンには2つの事業が存在する。

1つ目が都道府県単位の事業体がその都道府県内で使用することのできるプレミアム付食事券を販売するもの。

2つ目がオンライン予約サイト経由で登録飲食店を予約し、来店した場合にポイントを付与するというものだ。ここで付与されたポイントは次回以降、飲食店で利用することができる。

西村康稔・経済再生担当相は今回の分科会で話し合われたのが1つ目の都道府県単位で食事券を販売する事業であることを説明した。

なお、現在までにプレミアム付き食事券を発行することが予定されている都道府県は公募を経て、採択がなされた事業体が存在する33府県であることに注意が必要だ。

北海道や東京、神奈川、福岡、沖縄など13の都道県では、このプレミアム付き食事券の発行を実施するのかどうか未定の状態となっている。

その上で、尾身会長は以下の4点を分科会のコンセンサスとして政府へ提言したと発表した。

(1)新しい会食のあり方を考える機会

(2)会食のリスク認識と対策の徹底

(3)ステージ区分との関係

(4)ガイドラインを遵守している飲食店の広報

この機会に、休みの取り方など見直しを

尾身会長はこの機会に、「ウィズコロナ、ポストコロナの日本社会がどういう社会であってほしいか、感染症対策だけでなく、日本人のレジャーの楽しみ方、食事の仕方、文化についても考えた方が良いのではないか」と問題提起する。

そのため、提言の1つ目の柱に「新しい会食のあり方を考える機会」というメッセージを盛り込んだ。

そこで提言されているのは利用日、利用時間帯、スペースの分散を行うといった対応だ。

尾身会長は5月の連休やお盆など、日本人が同じタイミングで一斉に休みを取るために公共交通機関やホテル、飲食店などが混雑することに触れた上で、こうした休みを分散するという取り組みを行うことを含めて検討を進めるべきとの認識を示した。

「ホテル、飲食店はその期間はお客さんがたくさんくるから、目一杯になって収入が上がるけど、そうでないローシーズンはぱたっと止まる。一時期、収益はガッと増えるということは、実感としてわかりますよね」

このように語った上で、コンスタントに利用者が6割、7割いる状態を目指すべきではないかとした。

尾身会長はこの点について、「日本人の休みの取り方、すぐに変わることは簡単ではないとされてきましたが、そういうことを考える機会にすべきでしょう」とコメント。

西村大臣は「休みの分散は長年の課題である」とした上で、「コロナでより重要な課題となってきている」と指摘、テレワークを経験したことなどを踏まえて休みのあり方についての議論を深めていくことを目指すとの方針を示した。

分科会では経済の専門家から混雑状況に応じて値段を変える「ダイナミックプライシング」を導入し、人が集まる場所、時間帯は価格を高くすることなども検討されているという。

そのような手法を取り入れることで、空いている場所、時間帯に行くことへのインセンティブが発生することになると尾身会長は説明し、このような施策が「新しい会食のあり方」を浸透させることにつながるとした。

合わせて、十分な感染予防策を徹底すると共に、感染が発生した際には店舗の利用者を追跡できる体制を確保した上で実施すべきとの分科会の結論も会見では伝えられている。

「Go To Eat」実施は感染拡大していない地域で

今回の「Go To Eat」キャンペーンの実施判断は各都道府県ごとに行われ、その実施判断は感染状況に紐付けられる。

尾身会長は、「各都道府県においてステージ1もしくは2、感染が下火である、コントロールされていると判断される地域で実施される」ことが基本だとした上で、「ステージ3、4と判断される地域では開始するべきかどうか含めて、開始された後に感染が拡大した場合どうするのかなど慎重に対応していただきたい」と語った。

あくまで、「Go To Eat」キャンペーンは感染者数が少ない状態で実施されることを想定されている。

西村大臣は「開始した後であっても、感染拡大してくれば、その時にしっかりと対応すべきである」との姿勢を示した。

仮に、一度「Go To Eat」キャンペーンがスタートした後に、感染が拡大した場合にはどのような対応を取ることが検討されているのだろうか。

西村大臣は感染が拡大傾向にあると判断された段階で、新規の食事券の発行を止めることはできるとする一方、既に発行された食事券を使えないようにすることについて「現場の混乱をもたらさないか、検討が必要」としている。

尾身会長も「1回中断して、ちょっと待っていただくということが、おそらく難しい、混乱を起こす」と指摘。

その上で、「感染が拡大したから使えなくなる、この期間は使えず、延期する。実際に国としては支障、困難に直面すると思います」と語り、「医療界だけでなく、社会経済の人からも多少、政府として努力しないと難しい」という意見が上がっていたと明かした。

しかし、「これからの時代、こういうことが必要なので、ぜひ検討したいという強い気持ちがあったので、これ(開始後の感染拡大に伴う対応についての提言)を入れるというコンセンサスを得た」(尾身会長)。

こうした提言を受けて、農林水産省で具体的な実施時期、実施内容などについての検討が進められていく見通しだ。

10月には「Go To Eat」キャンペーンが本格的に開始される見込みだ。

対象外となる方向で調整が進められている業態も

今回の「Go To Eat」キャンペーンでは、飲食店であっても対象外となる店が存在する。それは以下の7つだ。

・デリバリー専門店
・持ち帰り専門店
・移動販売店舗(キッチンカー)
・カラオケボックス
・キャバクラ、ショーパブ、ガールズバー
・ホストクラブ
・スナック、料亭(接待を伴うもの)

西村大臣は「対象をリスク評価して考えるべきである、クラスターが発生した店についてしっかり考えるべきだというご意見もいただきました」と明かし、上記の店については対象外とすることで検討が進められているとしている。

その上で、「まさにGo To Eatを通じて、厳しい状況にある飲食店、食材提供している方々を応援していく。事業が進められることによって、こうした事業が継続していけるように期待をしたいという風に思います」と語った。