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ワクチン接種率が70%を超えた今、何が変わるの?年末の忘年会、帰省は? 尾身会長が会見で語ったこと。

ワクチン接種を終えた人が全体の70%を超えた今、どのような点がポイントとなるのか。レベルゼロからレベル4まで5段階で感染状況を注視することで、何が変わるのか。

新型コロナ分科会は11月8日、今後のコロナ対策の骨子となる考え方を提言した。

日々報告される新規感染者数の注視は続けつつ、医療提供体制の逼迫状況により重点を置きながら感染状況を評価する方針だ。

ワクチン接種を終えた人が全体の70%を超えた今、どのような点がポイントとなるのか。会見で語られたことをまとめた。

「ステージ」から「レベル」へ、何が変わるの?

「夏の厳しい経験を通じて国、自治体、市民が学んだことを活かして対策を実施すれば、夏のような危機的な状況を回避することは可能です」

「医療の逼迫が生じない水準に感染を抑えることで、日常生活の制限を段階的に緩和し、教育や日常生活、社会経済活動の回復を促進したい。これが主たる目的です」

新型コロナ分科会の尾身茂会長は、これまで適用してきた「ステージ」から「レベル」という考えへと移行する背景をこのように説明する。

「ステージ」はこれまで、主に都市部の新規感染者数と医療提供体制の逼迫状況をもとに設定され、感染状況をモニタリングする際の全国共通の目安とされてきた。

一方、今回新たに設けられる「レベル」は新規感染者数を注視しつつ、医療提供体制の逼迫状況により重点を置く考え方だ。

全国共通の指標はなく、今後は「レベル」の考え方にもとづき都道府県ごとに指標を設定する。

分科会では10万人あたり何人の感染者が確認された場合に、どのような対策を講じるべきという目安がなければ、対策が遅れてしまうのではないかという指摘も上がったという。

しかし、地域によって感染者数の増加と医療逼迫の関係は千差万別であるため共通の目安を作成しないことで合意したとした。

「今までは緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の適用に関して、タイミングを逸したこともありました。今回はとにかくコンスタントに状況を把握すると同時に(医療逼迫の状況を)予測する。こういったものを使って先手を打っていくことが重要となります」

「この『レベル』の考え方について、医療逼迫の状況のより重点を置くということだけが切り取られると誤解が生じます。新規感染者数も引き続き注視はする、このことはぜひお伝えいただきたいです」

5つの「レベル」

今回、新たに提言された「レベル」は、以下の5つのステップだ。

レベルゼロ:感染者ゼロレベル

日々報告される新規感染者数が「ゼロ」の状態を維持できている状況。

レベル1:維持すべきレベル

安定的に一般医療が確保され、新型コロナにも医療が対応できている状況。

レベル2:警戒を強化すべきレベル

新規の感染者数が増加傾向で、一般医療や新型コロナへの対応で医療の負荷が生じはじめている。しかし、段階的に病床を増やすことで医療が必要な人への適切な対応ができている状況。

レベル3:対策を強化すべきレベル

一般医療を相当程度制限しなければ、新型コロナへ医療が対応できず、医療が必要な人への適切な対応ができなくなると判断された状況。

レベル4:避けたいレベル

一般医療を大きく制限しても、新型コロナへ医療が対応できない状況。この段階になると、集中治療の再配分なども現場で検討する必要がある。

「我々はこのレベル1の状態を維持したい」

レベル1から2へと移行するのは、各都道府県は新規感染者数が明確に増加傾向へ転じたと判断するタイミングだ。

その際には、

(1)医療提供体制への負荷

(2)地方部においてはクラスターの発生が新規感染者数の急増につながること

(3)医療提供体制が脆弱な地域においてはレベル2への移行を早期に検討する必要があること

(4)新規感染者数はこれまでと同じ数字であっても、ワクチン接種率向上で医療への負荷は小さくなっていること

を考慮しながら判断する必要があるという。

厚労省クラスター対策班参与を務める古瀬祐気さんらが開発した「予測ツール」を活用し、「3週間後に必要とされる病床数」の推計値が確保されている病床数に到達した場合や病床使用率・重症病床使用率が50%を超えた場合などには、もう一段上のレベル3へと移行する。

最大確保病床数を超えた数の人々が入院を必要としているとなると、さらに上のレベル4への移行が必要だ。レベル4の「避けたいレベル」とは、今夏の第5波のような状況を指す。

尾身会長はこうしたレベル移行の考え方について、次のように語った。

「今はレベル1と言ってもいいでしょう。我々はこのレベル1の状態を維持したい。そのためには総合的な感染対策が必要です」

「そのような状況にならないことを祈りますが、レベル3に移行した場合は去年の教訓から、強い対策を短期間に、果敢に、集中的にやっていただきたい」

「医療提供体制の強化については、レベル3になったら急にやるのではなく、段階的にやっていただきたいです」

なお、現在検討が進んでいる「ワクチン・検査パッケージ」については、レベル3に達した段階で「自動的に継続すると矛盾したメッセージになる」と指摘。

「状況に応じて運用するのか、停止するのか」といったことの検討が必要であるとした。

法改正の検討・議論はやっぱり必要?

これまで日本では飲食店などへの営業自粛の呼びかけを繰り返してきた一方、個人の行動に制限を課すことは法的に困難とされてきた。

しかし、第5波の最中には、尾身会長は法改正の検討・議論を進める必要があると問題提起していた。

その思いは「今も変わっていない」という。

「今のCOVID-19を取り巻く状況を踏まえれば、都市封鎖ということは必要ないと思うので、むしろ法改正をするのであれば、一般市民に感染リスクが高い行動を回避してもらえるような法改正はあったほうが良いのではないかと思います」

「私は政治のプロではありませんが、政治の状況を見るとこの冬の国会でそれ(法改正の議論)をやるという状況ではない。早くとも年明けになるのではないかなと、一人の市民としては考えています」

忘年会、帰省はどうなる?

第5波がなぜ急激に収束したのか。その要因ははっきりとはわかっていない。

国立感染症研究所の脇田隆字所長は会見で、市民の協力やワクチン接種率の向上、人流の変化や気候、恒例行事などが要因としては考えられるとコメント。

国際医療福祉大学の和田耕治教授は、「定量的なところは今のところ明らかではない」とした上で、「なぜ現在の感染状況を維持できているのかを考えると、ワクチンと合わせて他国に比べ感染対策を引き続き継続していることが寄与してるのではないか」と分析している。

では、この冬の忘年会や帰省などについてはどのように考えるべきなのか? 尾身会長は次のように語った。

「ワクチンをうっているなら冬の忘年会はどうぞ、というよりは少しずつ解除を進めていく。これは感染状況にもよります。今年の年末はどのような状況になっているのか。ワクチンの効果を評価する必要もありますし、今後のワクチン接種率の伸びにもよる」

「ポイントは、これまで日本では恒例行事で感染が拡大してきたという事実があるということです。なるべくレベル1を継続するためには必要な感染対策を続行したほうが良い。基本的な感染対策は状況に関わらず、マストではないかと考えています」