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これまでの基準の2倍の新規感染者数でも宣言解除が可能に?尾身会長は「医療逼迫の状況を重視」と強調

「緊急事態宣言の解除を判断する際には、これまで以上に医療逼迫の状況を重視する。地域における感染者数の増減を考慮するのは当然ですが、それ以上に医療逼迫の状況が重要です」

政府の新型コロナ分科会は9月8日、緊急事態宣言解除の基準を見直し、医療提供体制の状況をより重視する指標を提言した。

今回の解除基準見直しの背景には、ワクチン接種が進むことによる変化がある。

専門家はワクチン接種による効果で、これまでの倍の新規感染者数を許容することが可能になるとの見立ても示しており、今後は強い対策の適用や解除を考える上では医療提供体制に関する指標の比重が増す見込みだ。

「医療逼迫の状況が重要」

「緊急事態宣言の解除を判断する際には、これまで以上に医療逼迫の状況を重視する。地域における感染者数の増減を考慮するのは当然ですが、それ以上に医療逼迫の状況が重要です」

分科会の尾身茂会長は会見で、このように新しい方針を示した。

尾身会長は解除の判断を行う上では一つひとつの指標をクリアしているかどうかではなく、「総合的な判断」が必要であると説明。

判断をする際には、国や基本的対処方針諮問委員会などによる一方的な決定ではなく、地域の実情をよく知る専門家や自治体の意見を尊重することが求められるとした。

分科会では解除後のリバウンドを懸念する意見も出た。

安易に解除をしてしまうと、「すぐにリバウンドが起きる」と尾身会長は指摘。「慎重な判断が必要」と強調した。

緊急事態宣言の解除後、すぐにまん延防止等重点措置に移行する可能性もある。こうした判断は地域ごとに状況を見た上で判断する必要があるとしている。

重視する指標、一般医療への負荷も

これまでは都道府県ごとのステージ判断のため、医療提供体制等の負荷と感染の状況を注視してきた。

指標には、入院率や重症者用病床の使用率、療養者数などと合わせてPCR検査の陽性率や新規陽性者数、感染経路不明の人の割合などが設定されていた。

今回、新たにまとめられた宣言解除の指標は以下の通りだ。

感染者数が2週間ほど続けて減少していることを前提に、新型コロナウイルス感染症医療の負荷、一般医療への負荷がどの程度であるのかを重視する。

【1】新型コロナウイルス感染症医療の負荷を見る指標

(1)病床使用率:50%未満

(2)重症病床使用率:50%未満

(3)入院率:改善傾向

(4)重症者数:継続して減少傾向

(5)中等症者数:継続して減少傾向

(6)自宅療養者および療養等調整中の合計:大都市圏では10万人あたり60人程度に向かって確実に減少 / その他の地域では特に療養等調整中の人の数が減少傾向または適正な規模に保たれている

【2】一般医療への負荷を見る指標

(1)救急搬送困難事案:大都市圏では減少傾向

なお、一般医療への負荷を見る上で救急搬送困難事案を注視する理由については、「大都市においては新規感染者数が増えると、救急搬送困難事案が増えるという正の相関関係がある」と説明。

まずは、この点を注視する必要があるとした。

「現在の倍の新規感染者数で、同じくらいの病床逼迫」

新規感染数は緊急事態宣言の解除を判断する上で前提条件となる。

尾身会長は会見で繰り返し、新規感染者数が減少していることは解除の「必要条件」となると強調した。

では、今後はどの程度の新規感染者数であっても宣言解除が可能となるのか。

「これまでの基準では10万人あたり25人 / 週という数値を設定し、新規感染者数がこれを上回ればステージ4(宣言発出の目安)としていました。しかし、現在は実際には感染した人のうち重症化するのは以前の半分から4分の1くらいまで減ってきている。そのため、10万人あたり25人という数値を適用する必要がないというのは我々のコンセンサスです」(尾身会長)

大東文化大学の中島一敏教授は「感染者数は増える時と下がる時は同一ではない。下がる時には、感染者の発生と医療への負荷の間にタイムラグがある」とコメント。

「ただ単に感染者の数を見るのではなく、どれだけ病床に負荷がかかっているのか、どれだけその負荷が続くのかを考えないといけません」とした上で、「地域によってバラつきはありますが、現在の倍の新規感染者数(10万人あたり50人 / 週)であっても、同じくらいの病床逼迫になると思われます」と語った。

今回新たに示された指標は、間もなく始まる予定の4回目の緊急事態宣言解除をめぐる議論においても使用される予定だ。

尾身会長は今回の指標は「過渡期的な考え方」であるとし、今後ワクチン接種率が安定したタイミングで、さらに変更する必要があるとしている。

「現在は過渡期なので、今までの考えを全部捨てたわけではなく、その一部分を使っている。しかし、それだけでは非常に激しく動く状況に対処できません。今後はステージの考え方、宣言発出の基準含めて検討する予定です」