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「積極的疫学調査を縮小したから感染者が減少」は本当?尾身会長が会見で語ったこと

緊急事態宣言を解除する地域が出てくる中で、分科会は再びの感染拡大を防ぐために恒例行事における人々の行動、すべての世代での感染防止の徹底、早期の探知と介入が重要であるとの方針を示している。

新型コロナウイルス感染症対策専門家分科会は2月9日、第24回目となる会合を開き、提言をまとめた。

今後、栃木県に続き緊急事態宣言を解除する地域が出てくる中で、リバウンド(再びの感染拡大)を防ぐために3つの方針を示した。

「初音さんの力を借りて」

会見の冒頭、分科会の尾身茂会長は政府が感染対策を呼びかけるために「初音ミク」とコラボし、作成した新しいポスターを紹介した。

尾身会長も「一般の人の心に届くよう、既存のテレビとか新聞ではない今時のSNSとか、若い初音さんの力を借りてやってくださいということ」と趣旨を説明した。

歓送迎会、お花見も見送りを

今回、尾身会長は「解除後の地域を中心としたリバウンドをどうやって防ぐか」が最も重要なポイントであるとしている。

緊急事態宣言解除後に、再びの感染拡大を防ぐため、

(1)恒例行事における人々の行動
(2)すべての世代での感染防止の徹底
(3)早期の探知と介入

という3つのポイントを呼びかけた。

なお、宣言解除後の会食のあり方、旅のあり方などは今後議論を進め、提言をしていくという。

1つ目のポイントが、恒例行事における人々の行動だ。

年末年始は忘年会が感染拡大を後押しした側面がある。また、成人式後の会食で感染が広がったケースも確認されている。

こうした点を踏まえ、3月末に例年開催される謝恩会や歓送迎会、卒業旅行、お花見に伴う宴会などは「(感染拡大の)状況を脱出しているわけではないので、控えていただきたい」と訴えた。

事前確率高い場所で「積極的検査」を

2つ目のポイントが、すべての世代での感染防止の徹底だ。

年末年始にかけては若者世代への呼びかけが多く行われた。しかし、現在は中高年の昼カラオケでの感染などが確認されているとし、すべての世代で感染防止対策を徹底するよう求めている。

3つ目のポイントが、感染の早期探知と早期介入だ。

分科会は昨年7月に、検査に関する考え方を提示しているが、この内容を一部改訂し、宣言解除後の都府県など感染リスクの高い地域では無症状者への検査を広範かつ頻回に行うことが必要であるとの方針を示した。

このように広い範囲で、頻繁に検査をすることで感染拡大の予兆を掴むことを目指すという。

この「積極的検査」は「攻めの検査」であるとし、尾身会長はその地域の中でこれまで感染拡大の元となった場所などに焦点を絞って実施する検査は「事前確率(検査をして陽性となる確率)が高い検査」であると考えられるという。

地域によっては外国人の医療へのアクセスの悪さなどを背景に、昨年には一部の外国人コミュニティで感染が広がった。また、大学のサークル活動でも感染が広がったケースがある。

こうしたポイントで、広範かつ頻回に検査をすることで再びの感染拡大を防ぐことが狙いだ。

分科会はこの「積極的検査」と合わせて保健所による積極的疫学調査を再び強化すると共に、早期の感染源探知につながる疫学情報分析も強化する必要があると提言している。

積極的疫学調査縮小の影響は?

ネット上では、神奈川県や東京都で積極的疫学調査が縮小されたことが日々報告されている感染者数の減少につながっているとの意見も見受けられる。

こうした意見に尾身会長は検査数が増え、陽性率が減っていること、リンクが追えない感染者も減っていることを踏まえ、「実際に報告されている感染者数が減っていることは間違いない」と語った。

なお、積極的疫学調査の縮小は「急激に感染者が減る前からやっている」という。

再びの感染拡大を防ぐ上では、積極的疫学調査も重要だ。

尾身会長は入院調整の業務を臨床医に任せるなど役割分担を進め、保健所の負担を軽くし、感染がわかった1例1例の調査に取り組むことのできる体制を整備する必要があるとしている。

ステージ3は「最終目的ではない」

尾身会長は「ステージ3」の基準に到達することは「最終目的ではない」と強調。

「ステージ3=解除ではなく、なるべく低く、長く維持できる、リバウンドを抑えることのできる解除の仕方」を目指すとしている。

「謝恩会なんかやりたいですよね、卒業旅行、よくわかります」と理解を示しつつ、そうした恒例行事の場での感染が再びの緊急事態宣言発出につながったと説明。

ワクチンの接種が進み、集団免疫を獲得するまでは急所を押さえた感染対策など工夫をしながら、取り組むことが必要であると呼びかけた。