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減らない高齢者施設での感染拡大、どう対応すべき?尾身会長が語ったこと

会見中、尾身会長は「この1年は難しい1年だった」と振り返る一幕も。緊急事態宣言の継続が決まった10都府県で取り組むべき対策とは。

新型コロナウイルス感染症対策専門家分科会は2月3日、第23回目となる提言をまとめた。

10都府県で緊急事態宣言の継続が決まる中、どのような対策強化を行うべきかが盛り込まれている。

分科会の尾身茂会長は重症者・死亡者の最小化、病床や医療従事者の確保、感染減少スピードの加速の3点が特に重要であると強調した。

減らない高齢者施設でのクラスター、職員への検査を

尾身会長は冒頭、緊急事態宣言の解除や延長をめぐって政府が諮問委員会をどこかのタイミングで召集することがわかっていたため、諮問委員会が召集されたタイミングで分科会の専門家からの意見をまとめた提言を提出できるよう準備を進めてきたことを明かした。

諮問委員会はその名の通り、国から諮問された質問に答えることが役割だ。しかし、緊急事態宣言を延長する場合にはどんなことをすべきかを提示することが重要であるとの考えから非公式な集まりを何度も開催し、議論を続けてきたという。

分科会は政府に7つの項目について対策強化を求めている。これら7項目は大きく分けると3つのポイントに集約される。

1つ目のポイントが重症者・死亡者の最小化だ。

「私は今、日本で一番求められているのは重症化をなるべく防いで、死亡する人の数をなるべく減らすことだと思っています」

尾身会長はこのように語り、その重要性を強調する。

感染者が減少傾向になった後に、重症者増加のピークがくると言われている。そのため、感染者数が減少傾向に転じていたとしても予断を許さない状況が続く。

現在、飲食を介したクラスターの発生件数が減少したが、依然として高齢者施設や病院内でのクラスター発生件数が多い。全体の半数以上がこうした施設内感染であることがわかっている。

高齢者施設におけるクラスターは職員からウイルスが持ち込まれることによるものが多いと指摘し、高齢者施設の職員への定期的な検査を実施するよう提言している。

分科会は感染者が多数発生している地域やクラスターが発生している地域の高齢者施設では、職員や入所者を対象に定期的に検査をするよう昨年から提言し続けている。しかし、現場では対応が徹底されていない側面がある。

そのため今回改めて、対策強化を訴えた形だ。

また、こうした施設内で感染が判明した場合、すぐに専門家らで構成される支援チームを現場に派遣することや厚労省の中に高齢者施設における感染拡大対応を担当するチームを新設することも合わせて求めている。

医療機関と比較すると、高齢者施設は感染症対策に不慣れだ。そのため、「どうしても高齢者施設のスタッフだけで(感染を)コントロールすることは難しい」と尾身会長は指摘する。

今回の提言には、高齢者施設で感染が広がった際、地域の感染症の専門家や行政が連携して対応に当たることが必要であるというメッセージが込められている。

重症者、死亡者を減らすために高齢者施設への対応と同時に重要なのが、宿泊療養・自宅待機・自宅療養をしている人々への対応だ。

分科会はオンライン診療やSNSなどを活用し、健康状態のフォローアップを充実させることを提言。

新型コロナの場合、息苦しさの自覚がないまま血液中の酸素濃度が下がることがあるため、酸素飽和度(血液中の酸素濃度)を測るパルスオキシメーターの貸与も必要であるとしている。

膨大な入院調整業務、保健所だけでは対応不可能

2つ目のポイントが病床・医療従事者の確保だ。

回復期療養型の施設なども退院基準を満たした新型コロナ患者を受け入れるよう求めると同時に、役割分担を明確にしても状況が改善されない場合には臨時医療施設を設置することを検討するよう分科会は提言している。

また、入院調整業務が膨大になる中、すでに様々な負荷を抱えている保健所だけにその業務を担わせることは難しいとの認識を示し、臨床医(診療現場で患者を診ている医師)が行政職員となり入院調整業務の一部を担うよう求めた。

「臨床医は話を聞けば、これは入院が必要な状態かどうかすぐにわかる。そういった臨床医を都道府県に対策本部がありますから、適切な人を選んで任命してもらう」

同時に外部の災害医療チームに協力をあおぐなど、医療従事者確保に向けた取り組みも必要であるとした。

「根本的解決策は感染者を出さないこと」

3つ目のポイントが感染減少スピードの加速だ。

尾身会長は「根本的解決策は感染者を出さないこと」と説明し、感染者減少のペースを加速させることが重要であるとした。

年末年始にかけての感染者数の急増は忘年会など会食による影響が大きいと分析しており、緊急事態宣言下の時短営業でそうした会食の影響が小さくなる中、感染収束に向けたスピードを上げるべきとの方針を示している。

・昼夜を問わず不要不急の外出自粛、移動の自粛
・営業時間短縮要請を出している個別店舗への巡回
・デリバリーやテイクアウト強化のはたらきかけ
・テレワークの徹底
・高校、大学の部活動、謝恩会、卒業旅行の自粛
・自費検査の実態の見える化

分科会が提言したのはこのような取り組みだ。

「今回も忘年会とか成人式とか、こういうところで感染拡大したことがわかっている。休みが来ると、人が出ることもわかっているので、謝恩会や卒業旅行などは自粛、卒業式なども人数制限をするなど緊急事態宣言下ですから、やっていただきたい」

尾身会長はこのように話している。

「この1年は難しい1年だった」

尾身会長は会見で、この1年の歩みを振り返り以下のように語った。

「(新型コロナの国内での感染者確認から)1年ですよね。日本の多くの皆さん、日本に住む人全てと言っても良いかもしれません。犠牲や痛みを伴う1年だったと思います」

「ポリオ根絶、SARSに対する戦い、日本に帰国した後の新型インフルエンザ、デング熱、そういうことに直接関与させていただきましたけれども、私自身も振り返って、この1年は難しい1年だったと思います」

「多くの人にとって大変な痛みと苦しみを伴った1年だったと思うんです。1つの県が(緊急事態宣言を)解除して、出口が見えてきましたよね。医療の負担を何とかしないといけませんが、もうしばらく、みんなが心を1つにして、この難局を乗り越えられれば良いと思います」


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