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重要なことは経済的支援や罰則だけではない? 尾身会長が語った、新型コロナを乗り越えるため必要なこと

西村康稔・新型コロナ担当大臣は「実効性を上げるための一定の強制力を持つ措置について概ね了解をいただいた」と説明。分科会からはどのような提言があったのか。

新型コロナウイルス感染症対策専門家分科会は1月8日、第21回目となる会合を開き、政府が改正する方向で調整を進める特措法に関して議論を行った。

分科会の専門家からは新型コロナの実態に即した法律改正が必要であるということや、行政から事業者への支援は一定の枠組みの中でスピードを重視して行うことが大事ではないかといった声が上がっている。

西村康稔・新型コロナ担当大臣は必要最小限の措置、基本的人権の尊重を守ることは前提であるとした上で、「実効性を上げるための一定の強制力を持つ措置について概ね了解をいただいた」とした。

専門家「非常に異常な増え方」

今回の会見にはクラスター分析を主に担当する東北大学大学院の押谷仁教授も参加し、現在の感染状況に関する見解をコメントした。

報告日ベースの感染者数が急速に増えている状況をどのように捉えているのだろうか。

「年末のイベントとか、そういうもので増えたこともある。ひとつの要因としてはあるのだと思います。ただ、増え方を疫学的に見ると、非常に異常な増え方をしている」

「昨日今日と、東京では感染者が2000人を超えたと報道されています。けれども、ベースラインが1000人未満だったものが、10日以内に2000人のベースラインを超えるというのは普通に考えると、ちょっと考えにくい状況だと思います」

また、大阪の感染拡大状況も「不自然な増え方」であると語った。

データを見ると、東京・大阪ともに18歳から39歳の感染者が増えていることも共通する傾向だ。

「すぐに結論を出せる話ではない」と前置きしつつ、

(1)年末年始の休みの期間に検査されたものが報告されていることによる影響

(2)若い人がこれまでなかなか検査を受けてくれないという問題があったが、12月27日に比較的若い政治家が亡くなり、自宅療養や自宅で亡くなってる人が増えたという報道が広くなされたことによって検査を受けてくれる人が増えた可能性

2つの要因が考えられるのではないかと推測。今後の感染者数の動向を注視して、精査が必要であるとした。

また、12月以降に報道されている情報をまとめ、クラスター発生の傾向を分析したデータも示された。

最もクラスターが多く発生しているのは医療福祉施設だ。しかし、そこでの感染拡大が地域へと広がっていくということは「少ない」と説明。

医療福祉施設を除いた時、最も多いのは飲食関係のクラスターだ。

教育施設でのクラスターも報告されてるが、こちらも教育施設から周囲の地域へ感染が広がることは「非常に少ない」という。

そのため、改めて飲食関連のクラスターに対策を講じることが重要であるとした。

今後も引き続き、飲食店だけでなくホームパーティー、宅飲みなどを含めた場面に注意が必要だ。

「飲食店だけがターゲットになっている」の声に分科会は…

分科会の尾身茂会長からは特措法について議論された3つのポイントが明かされた。

1つ目は日本フードサービス協会など現在、緊急事態宣言によって大きな影響を受けている事業者との意見交換だ。

「特に飲食店だけがターゲットになっている」という声も聞こえてくるとした上で、分科会からは「お店が悪いのではない」と強調し、問題はあくまで飲食を介したクラスターが増えていることだと説明したという。

2つ目は補償や支援に関する考え方だ。

これまで緊急事態宣言に関する提言とりまとめに時間を割いてきたこともあり、分科会としての結論は出ていない。

しかし、法律の専門家からも「簡単に白黒つけられるものではなく、かなり深い議論が必要」との意見が出たという。

3つ目は時間短縮要請や罰則以外のポイントの提示だ。

特措法改正については罰則が設けられる形となるのか、これまでのように協力金という形が取られるのか、もしくはそれらが組み合わせられるのか。多くの人が関心を持っている。

国会での議論が間もなく始まることが予想される中、分科会は新型コロナに関与し、政府へ提言を行う立場から「別の問題意識を持っている」と尾身会長は言う。

「お金の問題だけではなくて、感染症対策に関わるものとして、こういう問題が解決できていたら、もっと対策が進んだだろう、この法律があればということがある」

「国会ではおそらく、お金の問題、補償や支援金の問題についての議論が多くなる。感染症対策を進める上で、こういう問題があった、これがあったために上手くいかなかったという視点は我々が言わないとトータルな議論にならないであろう」

このように語っている。

大事なのはお金の問題だけではない

具体的に、以下の問題が対策の現場では浮かび上がってきたという。

(1)感染症対策のためのデータ収集

(2)積極的疫学調査や健康観察などにおける国民の協力

(3)国と地方自治体、地方自治体間の役割・権限の整理

(4)コロナの実態にあった見直し

(5)措置に応じた実効性の確保

尾身会長は「情報は多くの場合、現場にあるんですけど、様々な理由で利用されてこなかった」とコメント。

こうした課題は「日本の感染症対策として乗り越えないといけない」とし、「お金の問題も重要ですが、それだけではないんだということを知ってもらいたい」と話した。

また、かねてから分科会が提言を続けているように、どのような場所で感染が広がっているのかといった実態に即した措置の強化が行えるような法律改正となるよう要望している。

「今の新型コロナの実態に合う、実態に即した法律を適用してもらいたい。法律ありきではなくて、どう整合性をとるかです」

対策は宣言解除後も続くと強調

西村大臣は、緊急事態宣言は感染者数の傾向や医療提供体制の状況などを総合的に判断した上で、「ステージ3」に相当するとなった場合に解除される予定との見通しを示した。

宣言解除以降も、「ステージ2」相当となるまで、対策は継続される。

制限の緩和については夏と同様、段階的な緩和を行う方針が示された。

西村大臣は「ステージは緊急事態宣言にならないためのチェック段階」と強調。

対策は「ステージ2に下げていくためにやることが大事」であるとし、ステージ3相当となって以降、どのような対策を続けるのかについては感染者数が減少するスピードや医療提供体制の状況によっても変わるとの見解を示した。