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「飲食店だけに対策をやるのか、答えはNoです」 新型コロナ分科会、尾身会長が緊急事態宣言について要望したこと

尾身会長は飲食の場を介した感染対策に注力することは重要としつつ、それ以外の外出自粛などを要請することで「人々の接触、5つの場面をなるべく抑えることが重要」とコメントしている。

新型コロナウイルス感染症対策専門家分科会は1月5日、第20回目となる会合を開き、近日中にも発令が予定されている緊急事態宣言について提言した。

1月4日、菅首相は会見で対策強化は「限定的、集中的に行うことが効果的」と発言している。

しかし、分科会の尾身茂会長は飲食の場を介した感染対策に注力することは重要としつつ、それ以外の外出自粛などを要請することで「人々の接触、5つの場面をなるべく抑えることが重要」とコメント。

必要なのは飲食店に対する対策だけではないことを強調した。

緊急事態宣言に期待すること

緊急事態宣言を1都3県に発令することで、専門家はどのような効果を規定しているのだろうか。

尾身会長は(1)首都圏の感染状況を下降方向へと転じさせ医療機関と保健所への過剰な負担を軽減すること、(2)緊急事態宣言期間において感染状況をステージ3まで下げること、(3)知事が法的根拠を持って強い要請を出すことができること、(4)早期に感染を収束させることで社会経済を早期に回復させることを挙げた。

また、緊急事態宣言解除後の制限緩和について、「全部解除すると必ずリバウンドがある」と指摘。「段階的に行い、必要な対策は続けてステージ2相当まで下げることが極めて重要」との方針を示した。

重要なのは感染リスク高い場面を避けるための「環境づくり」

では、緊急事態宣言を発令した際、どのような対策を強化すべきと分科会は考えているのか。

「4月の緊急事態宣言をそのまま繰り返すのではなく、これまで学んできたことをもとに感染リスクが高い「3密」「大声」「5つの場面」を中心に感染機会を可及的速やかに低減することが重要」

尾身会長はこのように語った。具体的には以下の2つの対策を国や自治体に対し、要望している。

(1)飲食の場を中心とした感染リスクが高い場面を回避する対策

(2)(1)の実効性を高めるための環境づくり

飲食の場を中心とした感染リスクの高い場面への対策に注目が集まりがちだが、その効果を高めるためには環境づくりが不可欠であると尾身会長は強調する。

・不要不急の外出自粛
・県内・県外の移動の自粛
・行政機関や大企業を中心としたテレワークの推進
・イベント開催要件の見直し
・大学や職場における飲み会の中止
・飲食のテイクアウトの推奨
・大学などでのクラブ活動での感染防止徹底


環境づくりのための対策として挙げられている。

「飲食店での感染対策をやることは重要ですが、ここだけをやるのでは沈静化することはできないと思います」

「飲食店での感染対策は重要ですが、それだけではない。そのチャンスを減らすための条件づくり、環境づくりが不要不急の外出を避けることであり、テレワーク推進であり、大学の飲み会やクラブ活動、3密の回避です」

「理想は1つのことで全てが解決すること、これを望みますよね。でも、そういう状況ではない。ある程度、我々がこれまで学んだ効果があることを合わせ技にして、集中してやる。今回は8割の接触削減といったことは提言していません」

なお、小池都知事が要望している終電の繰り上げについては、都知事が要望する以前から分科会メンバーの間で議題として上がっていたとコメント。

その上で、そもそもの外出自粛で人出が減るはずであること、終電時間を繰り上げた場合に人が集中する可能性があることを理由に現段階で提言には盛り込まれていないという。

国に求める4つの取り組み

また、「国にやっておいていただけると良い」と尾身会長が語るのが、以下の取り組みだ。

・事業者への支援や罰則、宿泊療養等の根拠規定など、感染対策の実効性を高めるための特措法や感染症法の早期改正

・国民が無理なく感染防止策の実施を持続できる社会の構築

・国内のウイルスの迅速な分析や情報提供及び変異株が出現した国に対する水際対策の強化

・ワクチン接種の体制整備及び情報提供

「自粛に疲れて辟易としている。それと同時に要請しても経済的サポートが十分でないという声も一部にある。そもそも罰則がないことなど様々な条件が重なって要請ベースではなかなか上手くいかないことも学んできた。特措法や感染症法の早期改正含めてやる必要があるのではないでしょうか」

「国と自治体の一体感あるメッセージともっしっかりした経済的支援。特措法もなるべく早くやってもらいたいと思います。インセンティブやペナルティが今ははっきりとしていない。国民が選んだリーダーたちが、さらに強い要請をするのであれば、自らも難しいことに取り組み、汗をかく。その上で我々も汗をかくから、皆さんもやってくださいというメッセージが必要だと思います」

「飲食店だけに対策をやるのか、答えはNoです」

緊急事態宣言が効果を発揮するまでに要する時間については、「1、2週間の単位では無理だと思います」「1ヶ月未満でそこ(解除するに十分なライン)までいくのは至難の業だと思います」と言及。

「宣言を出したからと言って、無条件に感染そのものが下火になる保証はない」と話した。

今後は分科会や厚労省のアドバイザリーボードでモニタリングし、必要な対策が他にもあれば「微調整」していくとしている。

京都大学大学院教授で理論疫学の専門家・西浦博さんは「飲食店の制限だけでは1ヶ月で感染者は減らない」とのシミュレーションを示している

記者からそのシミュレーションへの見解を求められ、尾身会長はその提言の肝には賛成すると語った。

「西浦先生が言わんとしていることの本質は早く対策を打った方が良いということ、それからなるべく強い対策を打つ方が早く収束するということ。この2点が彼の提言の肝だと思います。それについては私も大賛成です」

「つまり、強い対策を集中してやる。ここ(今回の提言)には移動とかも入ってるんです。つまり、感染者とそれ以外の接触を少なくする」

「飲食店だけに対策をやるのか、答えはNoです」