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「Go To トラベル」めぐる政府方針は「感染対策の常識」に矛盾? 新型コロナ分科会、尾身会長が語ったこと

札幌市、東京23区、名古屋市、大阪市では感染が急速に拡大しているとし、さらなる対策強化を訴えた。

新型コロナウイルス感染症対策専門家分科会は11月25日、第17回目となる会合を開き、先日の提言以降に取られた対策の評価と、さらなる対策の強化を訴えた。

西村康稔・新型コロナ担当大臣も「3週間が勝負。今の感染拡大を抑えられるか大事な3週間」と強調している。

介入遅れれば経済へのダメージが広がる

新型コロナ分科会は20日の提言以降、政府や地方自治体で営業時間の短縮、Go To トラベル事業の一時停止などが速やかに行われていることに一定の評価を与えた。

一方で、現在も予断を許すことのできない状況が続いてるとの認識を示した。「このままの状態が続けば、通常の医療で助けられる命を助けられなくなる事態に陥りかねない」という非常に厳しい見解だ。

分科会の尾身茂会長は「11月20日の時点に比べ、いくつかの都道府県の地域では、医療提供体制および保健所への負担がさらに深刻化している」と語り、「既にステージ3相当の対策が必要になっている」とコメントした。

こうした状況を踏まえ、介入が遅れれば遅れるほど社会経済活動へのダメージが甚大となるとし、「迅速かつ集中的な対応が求められる」との指針を示している。

対策強化が必要なステージ3相当の地域とは?

感染拡大状況をモニタリングする際に用いる4段階の指標のうち3段階目にあたる「ステージ3」に相当する地域については、各都道府県知事が判断することとなっている。

そのため、分科会や政府はどの地域がステージ3に相当すると、具体的に明言することを避けてきた。

しかし、尾身会長は今回、あくまで個人的な意見であると前置きした上で、感染拡大地域として札幌市、東京23区、名古屋市、大阪市の名前を上げた。

このまま感染が拡大すれば、最終段階のステージ4となる。その場合にはより協力な対策を打つ必要がある。

だが、尾身会長は「絶対にステージ4になることを避ける。みんながその気になればできると思います」と語った。

強化された対策はどのタイミングで解除されるのか。

尾身会長は当面の目標は感染拡大地域を4段階中2段階目のステージ2の状態へ戻すこと、可能であればさらに下のステージ1まで戻すことが必要であると強調している。

「今回は(感染拡大の)ペースが早い」と述べ、ステージ3の途中で止めるのではなく、ステージ2までしっかりと落とすことを目標にすべきとした。

Go To トラベルめぐる矛盾に…

分科会は今回、Go To トラベルについても提言した。

感染が拡大している地域と、拡大していない地域があった時にその往来を止めることは「感染対策の常識」「感染対策上、一番有効」とし、感染拡大地域からの人出、感染拡大地域への人出、どちらも止める必要があるとコメントし、より強い対策を求めて踏み込んだ形だ。

大阪市、札幌市などを目的地とする旅行はGo To トラベルから一時除外された。だが、大阪市から出発する旅行、札幌市から出発する旅行は依然として対象となっている。

こうした感染対策の常識との矛盾がある中、感染拡大地域から出発する旅行についても対象から外すべきであるという考えは「分科会のコンセンサス」であるとした。

「感染対策として有効なものは何か明確に言うことが我々の責任ですから、そのことをここで申し上げました」

「社会経済あるいは感染症の専門家として、国や地方自治体、一般市民に感染拡大防止のために最も有効な方法を提言するのが我々の仕事です。最終的には政府の判断だと思っています」


第17回新型コロナ分科会の具体的な提言内容

【分科会が指摘した主な課題】

(1)感染が急速に拡大している地域では、英医業時間の短縮やその他の地域との間でより強い対策が必要な状態にある。しかし、Go To トラベル事業運用見直しにのみ注目が集まり、最も重要な対策が社会において共有されていない。

(2)北海道、首都圏、関西圏、中部圏の一部の地域では感染拡大のスピードが急激かつかなり速い。医療提供体制が既に厳しい状況になっている。地方部でも感染が拡大すると、短期間で深刻な影響をおよぼしかねない。

(3)分科会としてはステージ3相当の対策が必要となっている地域もあり、営業時間の短縮、人の往来や接触機会の低減が必要と考えている。しかし、そうした対策が取られていない地域がある。

【提言された5つの対策】

(1)都道府県は政府と連携し、ステージ3相当の対策が必要となる地域では、3週間集中して早期に強い措置を講じること

・酒類を提供する飲食店の時短営業要請。
・夜間の遊興 / 酒類を提供する飲食店の利用自粛の検討。
・感染拡大地域とその他の地域での往来をなるべく控える。
・Go To トラベル事業の一時停止。当該地域からの出発分についても検討。Go To イートやイベント開催制限についても検討。

(2)医療提供体制、保健所へのさらなる負担を防ぐための対策

・高齢者施設などの入院 / 入所者を対象に、特に優先して検査を実施。全国どこでも、施設で感染者が1例でも確認された場合には、迅速かつ広範に検査を行う。
・比較的症状が軽い高齢者は基礎疾患も考慮しながら、宿泊療養や自宅療養をお願いする。
・特に医療提供体制、保健所機能が厳しい状況にある地域に対する患者搬送および医療従事者の派遣などの支援ついて検討する。(自衛隊の活用も含めて)
・厳しい勤務体制で診療を続ける医療従事者に対する誹謗中傷がいまだに見受けられ、離職の増加も強く懸念される。誹謗中傷を防止する啓発を続けること。

(3)「感染リスクが高まる5つの場面」、マスク着用を含む「感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」についてわかりやすく発信し、社会に浸透するよう努力すること

(4)対策の実効性を高めるため、財政面含め医療・経済・雇用等への一層の支援を行うこと

(5)今後3週間の対策の効果を新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード、分科会で評価し、万が一効果が不十分な場合はさらなる対策を行うこと