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「Go Toが感染拡大の主因というエビデンスない」。それでも専門家が見直しを求める理由

新型コロナウイルス感染症対策専門家分科会は16回目の会合で感染が拡大する地域での感染対策の強化を提言。3週間程度、集中して取り組むべき6つのポイントが提示された。

新型コロナウイルス感染症対策専門家分科会は11月20日、第16回目となる会合を開き、感染状況を踏まえ今後取るべき対策を議論をした。

今回の分科会では専門家から政府に対し、Go To キャンペーンの運用見直しを求める提言も出されている。

こうした提言を受けて、西村康稔・新型コロナ担当大臣は分科会後の会見で21日に開催される政府の新型コロナ対策本部で早急に対応を検討すると話した。

科学的助言と共に語られたのは…

今回の会見には分科会の尾身茂会長をはじめ8名の専門家が参加。それぞれの専門分野について記者から質問があると、尾身会長がほかの専門家に回答を促すシーンが多く見られた。

会見では、現在の感染拡大状況を踏まえて出された「私たちの考え ー分科会から政府への提言ー」に絞って説明された。

「現在の感染拡大の状況を打開し、医療崩壊を未然に防ぐためには、個人の努力に頼るだけではなく、今までと比べより強い対応および人々の心に届くメッセージを期待したい」

尾身会長は今回の提言に至った基本的な考え方を示した上で、「一部ではステージ3相当の強い対策が必要な状況に達した」とコメントし、「今まで通りの対応では早晩、医療提供体制が逼迫する可能性が高いと判断している」と強調した。

このままでは結果的に経済や雇用への影響が甚大になるとの予測から、科学的な助言と合わせて「我々の考えも同時に共有したいと思った」と語った。

3週間程度、集中して取り組むべき6つのポイント

緊急事態宣言解除後の対応については、

(1)メッセージの社会への浸透が不十分(2)見えにくいクラスターの増加(3)感染対策と社会経済活動の両立の難しさ

という3つの困難があると分科会は分析している。

こうした困難を踏まえた上で、分科会は「この機を逃さず、短期間(3週間程度)に集中し、これまでの知見に基づき、感染リスクが高い状況に焦点を絞ることが重要」と訴えた。

そのポイントが以下の6点だ。

(1)営業時間の短縮
(2)地域の移動に係る自粛要請
(3)Go Toキャンペーン事業の運用見直しの検討
(4)これまでの取り組みの徹底
(5)経済・雇用への配慮
(6)人々の行動変容の浸透

エビデンスないのに、なぜ見直し?

尾身会長は特に注目が集まる3点目のGo Toキャンペーンの運用見直しについて、一般的には人々の移動が感染拡大に影響すると考えられるとしながらも「感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは存在しない」と語る。

では、なぜ、見直しが必要であるとの提言に至ったのだろうか?

「主要な要因であるとのエビデンスは存在しませんが、ほかの提言との整合性のとれた施策を行うことで人々の納得、協力を得られて感染の早期沈静化が進み、結果的にはトータルの経済的ダメージも小さくなると考えています」

「ステージ3相当に達すれば、当該都道府県を対象から除外すると検討してきたし、何度もそれは言ってきました。いくつかの都道府県でステージ3相当となれば判断せざるを得ない」

このように述べ、感染がこのまま拡大し続ければ「普通の行動、努力だけでは(対策は)難しい」とコメント。

より強い対策によって人の動きを減らす必要があると語り、政府に対してGo To キャンペーン運用見直しの「英断を心からお願い申し上げる」と語った。

なお、感染者が下降傾向へと転じ、ステージ2相当であると判断されればGo To キャンペーンは「再び再開していただきたい」としている。

西村大臣は同日、こうした提言を踏まえてGo To トラベルに関しては観光庁が早急に対応を検討していくとコメント。また、Go To イートに関しては「早急にそれぞれの知事に検討を要請する」とした。

政府では21日に新型コロナ対策本部を開き、「今後の対策について方向性を出せるようにしたい」と語っている。

「通常の医療ができなくなっていく」

21日から3連休に入る中、尾身会長は「早いうちに取り組めば、早く効果が出る」と話し、対策の強化は「できるだけ早い方が良い」と繰り返し強調する。

分科会が1つの区切りとして提示した3週間を過ぎてもなお、感染が拡大傾向にあった場合どうすべきかなのだろうか?

尾身会長は「万が一、そうでなかった場合についてはいま語るべきではない」とし、「社会全体が一丸になってやれば、ある程度早いうちに収束方向になることは可能」と述べるに止まった。

こうした対策強化をこのタイミングで提言した背景には医療現場に広がる危機感がある。

このような危機感について、分科会の構成委員で東邦大学の舘田一博教授は以下のように語った。

「感染拡大のスピードがかなり早いと感じる。ベッドの占拠率はまだ30%と思われるかもしれないが、1週間、2週間程度でうまるのではないかという脅威を感じていると聞こえてきています」

「医療逼迫が近づいてきている。ベッド数のことだけではなくて、コロナの患者さんを診ることで通常の診療、手術、検査が圧迫されて通常の医療ができなくなっていく状況がある。今、強い対策を取らなければいけないという意識が共有されていると思います」