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感染リスクが高い、避けるべき場面とは?感染拡大した場合はどうする? 新型コロナ分科会、尾身会長が語ったこと

10月1日に東京が「Go To トラベル」事業に追加されることが予定されている中で、どのように感染拡大を抑えるべきか新型コロナ分科会が提言した。「Go To トラベル」を行う上で鍵となる3つのポイント、

新型コロナウイルス対策専門家分科会は9月25日、第10回目の会合を開き、10月1日に東京が「Go To トラベル」事業に追加されることが予定されている中で、どのように感染拡大を抑えるべきか提言した。

分科会の責任として、お盆を前に声明を出したように国民に対して感染リスクが存在するのはどのような状況か伝えることが必要であると判断したと尾身茂・分科会会長は言及。

「サイエンティフィック(科学的)に、100%エビデンスがあるかわからないところもあるけれども、こういう判断を我々はしているということは政府はなかなか(発表)できないこともある。それを言うのが我々の役目だと思う」

このように述べ、避けるべき行動がどのようなものであるか、これまで発生したクラスターの分析結果から7つの分類を発表した。

「Go To トラベル」を行う上で、鍵となる3つのポイント

感染状況については全国的に下降傾向にある中で、「下止まり」している状況にあると尾身会長は説明。

そのような中、地域を超えて感染が広がる可能性は以下の3つの要素によって決まるとした。

(1)人口あたりの感染者数
(2)感染リスクを高める行動
(3)旅行者の総数

この3要素を踏まえた時、「Go To トラベル」事業をどのように捉えるべきなのだろうか。

鍵を握るのは対象地域の感染状況だ。感染をある程度抑えられる場合、感染リスクを高める行動を避けることで旅行できると分科会は結論づけている。

そのため、「当該地域の感染を制御可能なレベルに維持していくことが極めて重要」と尾身会長は繰り返し強調した。

深夜の飲食、集団生活…感染リスク高まる場面とは

では、感染リスクを高める行動はどのような場面で発生しているのか。これまで、専門家は「3密」環境や大声を出すことのリスクを指摘し、マスクの着用や手洗いなど基本的な感染防止策を行うよう呼びかけてきた。

今回の分科会では、それらに加えて、感染リスクを高める7つの場面が示された。

(1)飲酒を伴う懇親会
(2)大人数や深夜におよぶ飲食
(3)大人数やマスクなしでの会話
(4)仕事後や休憩時間
(5)集団生活
(6)激しい呼吸を伴う運動
(7)屋外での活動の前後

これまで注意が呼びかけられてきた、飲み会だけでなく、深夜におよぶ飲食に関しても感染が多くなる傾向にあるとした。

また、「オフィスの事務的な仕事そのもので感染するリスクは低い」との認識を示した上で、仕事後や休憩時間に感染が広がるケースがあることについても言及した。

同様に学校においても授業そのものよりも寮やクラブ活動などで「閉鎖空間に長時間一緒にいる場合に感染リスクが高まる」という。

バーベキューなど屋外の活動もコロナ禍では増えつつあるが、その前後の移動時間などにも注意が必要であると呼びかけている。

分科会が行った3つの提言

分科会は25日、政府に対して3つの提言を行った。

1つ目が社会経済活動と感染防止の両立のための必須条件だ。

尾身会長は「政府におかれては7つの感染しやすい場面について、国民に対して十分な注意喚起を行っていただきたい」とコメント。

特に「Go To トラベル」キャンペーンについては、「せっかく税金を使ってやるんですから、新しい生活様式を定着してもらうための契機にしていただければ」と語った。

2つ目が「小規模分散型旅行」の更なる推進だ。

時期や場所を分散させることで、旅行先で人が密集することを避ける狙いがあるこの「小規模分散型旅行」。分科会はこれまでも、繁忙期には価格を高く設定し、閑散期には価格を低く設定するダイナミックプライシングなどを活用することで旅行を分散させることを提言してきた。

尾身会長は9月19日から22日の4連休に観光地が混雑したことに言及し、「この小規模分散型旅行は必ずしもまだ実現していない」と苦言を呈した。

分科会は政府に対し、「Go To トラベル」キャンペーンにこの小規模分散型旅行を促進する取り組みを織り込むことを提案したものの、「事務的に難しい」「既にやっている」との答えが返ってきたと明かした。

「確かに努力をされていると私たちも認識していますけれども、もう一歩、強力なインセンティブ、あまり混んでいない時に行きたいと思うようなインセンティブじゃないと、今のままでは休暇になるとわっと人がいって、それが終わると人がいなくなる」

「ともかく国が関与して、税金を使うんですから、ここまでコロナを契機にして日本の社会をより良くしようというのが今、おそらく国民的なコンセンサスです。少し難しいのは我々も十分に理解はできる。そこを頑張っていただきたいということを(政府に)申し上げました」

尾身会長は年末年始を数ヶ月後に控え、「時間はあまりない」との認識を示し、「なんとか進めてもらいたい」と小規模分散型旅行の実現に積極的な姿勢を示している。

また、事業者に対しても休暇を分散して取ることを推奨する取り組みを進めるよう呼びかけた。

3つ目が感染拡大に備えた取り組みだ。

感染が拡大すれば、社会経済活動を抑制せざるを得ない。そのため、「全国的にステージ2相当までに感染状況を抑えていくことが求められる」とした。

仮に、医療提供体制などが逼迫してきた場合には「イベントの中止やGo TO トラベル除外などを含め、躊躇なく行っていただきたい」と尾身会長は話した。

小規模分散型旅行、どうすれば実現する?

「小規模分散型旅行」を浸透させるため、どのような取り組みが必要なのか。

分科会の構成員で東京財団政策研究所研究主幹の小林慶一郎氏は「ダイナミックプライシングをもっと強力にやっていくことを提言した」と明かす。

「休日のような混んでいる時期はGo To割引率を小さくして、平日など空いている時に大きくする。極端に言えば、休日はGo To対象外にするとか、平日は対象にするとか、そういういろいろなやり方があると思います」

「空いている時にもっと安く行ける、混んでいる時は高くなる。このことをGo Toキャンペーンの事業の中でやれないだろうかと提言しました」

こうした提言に対し、政府側はホテルの料金や航空運賃などは既にダイナミックプライシングになっていると回答したという。

しかし、小林氏は「それでも旅行が平準化していない」と指摘し、「日本人の旅行を休日と平日で平準化するためにダイナミックプライシングでは足りないので、もっとやるべきだと言っている」と語る。

政府側がそうした強力な対応が難しいことの理由として(1)既に予約された宿泊等のキャンセル料が発生すること、(2)休日と平日での価格差が広がることで国民の平等性が失われる、という2点をあげているという。

しかし、小林氏は「感染症の拡大をさせないために旅行を平準化することが目的ですから、旅行のような行動の平準化、小規模分散型旅行を普及させることは公共的な利益。そのために税金を使うことはもっともな理鬱だと思います」と指定。

国民の平等性よりも大きな公益のためにはより強力なインセンティブづくりも必要だという私見を述べた。

分科会の提言が生かされず、感染拡大した場合には…

こうした政府への提言が「守られるという確約はあるのか」「守られなかった場合、何らかのアクションを起こすのか」。

記者からたずねられ、尾身会長は「確約はない」と断言。

その上で、専門家助言組織の役割は政府への提言が役割であると強調し、分科会の提言が反映されることなく、感染拡大の傾向が見られた場合には「そういう兆候が明らかになっていると政府に対して申し上げるのが分科会の責務である」とした。

小林氏も「約束はもちろんしていただけないわけですけれども、感染状況が変化した時には政府はこうすべきであると感染症の専門家や社会経済の専門家が中立的な立場で議論して、やるべきと思ったことは政府に言っていくということに尽きていく」と強調した。

「極めて重要な時期に入ってきている」

尾身会長は最後に、以下のように緊急事態宣言に頼ることなく感染状況を制御することの重要性を示した。

「人々の努力では抑えられなくて、もう少し強力な対応を、そういうことまで出さなければならない状況になれば、緊急事態宣言はありうると思います。けれども、ポイントはそこではなくて、そこに至らないような方法を今のハンマーアンドダンス(感染が拡大し制限を強化する状況と感染が収まり制限緩和をする状況を繰り返すこと)でどうやったらできるのか。日本人のみんなの知恵を、国も頑張る、自治体も頑張る、国民も頑張る、ジャーナリズムの人も応援してくれると。そういう形で、やるという方向に集中する」

「これからは極めて重要な時期に入ってきていると思うんです。これは、日本がロックダウンを一度しかしていない。二度やっている国もある中で。国民の意識中心に、そういうことで乗り越えられるかどうか。冬になれば、季節的には波が来ると思われている。そのな中で我々自身の努力が今、重要な時期に差し掛かっているという風に思います」