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プラズマクラスターでコロナ減少「過度な期待は禁物」シャープ自ら注意喚起した背景

シャープ株式会社は「世界初、プラズマクラスター技術で、空気中に浮遊する『新型コロナウイルス』の減少効果を実証」と発表。しかし、この実験では生活空間での効果の有効性は証明されていない。


シャープが、同社の空気清浄機などに用いている「プラズマクラスター技術」で、空気中に浮遊する「新型コロナウイルス」の減少効果を実証したと発表したことが、注目を集めている。

しかし、この実験は実生活とはかけ離れた小さな空間での実験結果であることから、「宣伝には慎重さが求められる」との指摘もあがっている。

そんな中、同社の公式Twitterは「希望は感じていただきたいけど、過度の期待は禁物だ」と呼びかけた。

シャープの実験は小さな空間で実施

同社の9月7日の発表によると、実験は長崎大学感染症共同研究拠点の安田二朗教授、南保明日香教授及び島根大学医学部の吉山裕規教授と共同で実施。

空気中に浮遊する新型コロナウイルスにプラズマクラスターイオンを「約30秒照射することにより、感染価(*感染性を持つウイルス粒子の数)が90%以上減少することを世界で初めて実証しました」と報告している。

長崎大学の安田教授はこの結果について、以下のようにリリースにコメントを寄せている。

「今回、プラズマクラスター技術が空気中に浮遊した状態の新型コロナウイルスを不活化することが実証されたことは、一般家庭だけでなく医療機関などの実空間で抗ウイルス効果を発揮する可能性があると期待されます」

しかし今回の実証試験は、検証用に作成した装置を使い、あくまで小さな空間で行われたものによるものだ。生活空間での効果の有効性は証明されていない。毎日新聞によると、今後は規模を拡大した実験も視野に入れているという。

そのため、「宣伝には慎重さが求められる」(毎日新聞、9月7日)などとの指摘もあったほか、ネット上でも「自宅の空間とかけ離れた実験環境」などとして、批判も上がっていた。

「過度の期待は禁物だ」

ここで言うのも変な話ですが「希望は感じていただきたいけど、過度の期待は禁物だ」と私は思います。どうか冷静な目で、むしろプラズマクラスターを監視してください。

Twitter

こうした中、同社の公式Twitterアカウントが自ら「注意喚起」を実施した。

消費者に対して、あくまで実験用の設備で検証された効果であることを強調。「過度な期待は禁物」とまで述べたのだ。

「今回の実証のポイントは、付着したウイルスではなく、空気中に浮遊する新型コロナウイルスに対しての効果を調べたことです。ですが繰り返しますけど、あくまでプラズマクラスター技術の検証であり、製品・市販品や実空間での試験ではありません。その効果は今後の検証です」

「ここで言うのも変な話ですが『希望は感じていただきたいけど、過度の期待は禁物だ』と私は思います。どうか冷静な目で、むしろプラズマクラスターを監視してください」

過去には「優良誤認」の措置命令も

同社のプラズマクラスター技術の効果に関する記載をめぐっては、消費者庁が2012年、景品表示法の優良誤認に該当する違反行為であるとして措置命令を行っている。

この際、同社はカタログやホームページ上に「プラズマクラスターだからできることがあります。掃除機の中も、お部屋の中も、清潔・快適」「ダニのふん・死がいの浮遊アレル物質のタンパク質を分解・除去」などと表示していた。

しかし、消費者庁はこれに対し、「対象商品は、その排気口付近から放出されるイオンによって、対象商品を使用した室内の空気中に浮遊するダニ由来のアレルギーの原因となる物質を、アレルギーの原因とならない物質に分解又は除去する性能を有するものではなかった」と結論付けている

シャープは措置命令を受け、お詫びをし、表示を修正。ただし、「措置命令を受けるに至った原因は、弊社掃除機に係る広告表現です」として、「プラズマクラスターの性能自体の問題ではありません」などと強調していた。

消費者庁、新型コロナで改善要請も

消費者庁は新型コロナウイルスに関連して、予防効果をうたう商品の表示について緊急監視を実施し、99事業者による125商品の表示について緊急の改善要請を行っている。

対象となったのは「コロナウイルスはマイナスオンで死滅」としていたマイナスイオン発生器や、「身に付けるだけで空間のウイルス除去・除菌」としていた空間除菌剤、「感染予防サプリメント」としていた健康食品などだった。

ワクチンや治療法のない中で、新型コロナウイルスの感染予防に効果的とうたう商品は少なくない。

シャープの「プラズマクラスター技術」がこうした要請の対象となっているわけではないが、その効果が本当に実生活に即した環境で実証されたものなのか、注意深く確認しなければいけないだろう。

新型コロナウイルスは3密や大声を出す空間を避け、消毒やマスクなど基本的な感染予防策で防ぐことができる感染症だ。まずは基本的感染予防策を徹底する必要がある。