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PCR検査、唾液でも可能に。無症状者には使えない理由とは?

唾液によるPCR検査が可能となることで、医療機関や検査機関で検体採取にかかっていた負担や患者自身の負担を軽減することに期待が集まる。

厚生労働省は6月2日、症状発症から9日以内の人については唾液を用いたPCR検査を可能にすると発表した。

これにより、これまで医療機関や検査機関で検体採取にかかっていた負担や患者自身の負担を軽減することが期待されている。

唾液による検査が可能に。何が変わる?

これまで、PCR検査を行う際の検体は鼻咽頭(鼻の奥)ぬぐい液を用いていた。

新型コロナウイルス感染が疑われる場合の検体採取は、帰国者・接触者外来や地域外来・検査センター、病院や診療所などで実施されている。しかし、今回、唾液による検査が可能になることで、患者自身で検体採取が可能になった。

また、鼻咽頭ぬぐい液の採取を行う際には、検体採取を行うスタッフが新型コロナウイルスに感染しないために感染防御のキット(PPE)をフルに着用する必要があったが、唾液の採取の場合は感染防御も最低限で済む。

厚労省は患者自身が採取した唾液を入れた入れ物を受け取る場合の感染防御策は、マスクと手袋の着用のみで問題ないとしている。

検体採取の手間が減り、感染防御策も最低限で問題なくなることで、よりPCR検査のための検体採取が容易になる。

なお、検体を採取する際には、直前に飲食はしないこと、歯磨きやマウスウォッシュをしないことに留意する必要がある。

対象は発症から9日目までの有症状者

今回の発表は、国際医療福祉大学成田病院の加藤康幸医師が代表を務めた唾液を用いたPCR検査に関する厚生労働科学研究の結果に基づくもの。

研究結果に基づき、発症から9日以内の症例では、これまで検体採取に用いられていた鼻咽頭ぬぐい液による検査結果と高い一致率が認められたと判断した。

10日目以降の検査精度の低下については、「検体処理中の誤差が増えたことは考えられない」と厚労省の担当者は語り、「PCR法で測ることができる唾液から出てくるウイルス量が減っていると考えて、大きく間違いはない」と説明している。

唾液を用いるPCR検査は、新型コロナの症状が確認されると医師が認めた場合に適用される。今後も、無症状者がPCR検査を行う場合は鼻咽頭ぬぐい液を用いる必要がある。

厚労省の担当者はその理由を、「有症状の方の検体でエビデンスを出した。残念ながら、無症状者の方への有効性は検証ができていないため」と説明している。

その上で、唾液によるPCR検査が無症状者であっても使用可能かどうかについては、引き続き検討していきたいとした。

目詰まり解消のために、点検を

厚労省は6月中旬までを目処に、各都道府県に相談→検体採取→検査という一連のPCR検査のプロセスが適切か点検するよう求めている。

各都道府県は今後、以下のような観点で検査需要を推計し、その需要に応えられる体制整備を進める予定だ。

(1)これまでの1日の最大検査数
(2)全国のピークを人口に当てはめた場合の検査を必要とする人の推計

担当者は相談・検体採取・検査、それぞれのプロセスの問題が「複雑に絡み合い、目詰まりとなっていたのでは」とこれまでのPCR検査の体制を振り返り、目詰まり解消のための取り組みを各都道府県と国が連携して行っていく方針を示した。

国は各都道府県の対策促進のために、財政的支援をはじめ必要な支援を実施し、試薬等の必要な物資を確保・供給するとしている。