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「依存症は『恥』ではなく『病気』です」 4年前、覚せい剤使用で逮捕された高知東生さんが俳優復帰

5月14日〜20日のギャンブル等依存症問題啓発週間に合わせて配信されるTwitterドラマ。ギャンブル依存症の当事者を俳優の高知東生さんが演じる。

5月14日〜20日はギャンブル等依存症問題啓発週間。このタイミングに合わせて、ギャンブル依存症に関するTwitterドラマ「ミセス・ロスト 〜インタベンショニスト・アヤメ」が配信される。

主演は青木さやかさん。2016年に覚せい剤の使用などで逮捕された俳優の高知東生さんも俳優業に復帰し、ギャンブル依存症の当事者を演じる。

ギャンブル依存症者をもつ家族に…

ギャンブル依存症Twitter連続ドラマ配信いたします。 高知東生さんがギャンブラー役で俳優復帰しています! 〈ギャンブル等依存症問題啓発週間企画〉 『ミセス・ロスト〜インタベンショニスト・アヤメ』 5月14日(木)21時スタート毎週火曜/木曜配信 【出演】#青木さやか #鈴木まりや #高知東生

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子さんは「現在のコロナ禍でもパチンコ店に押しかける人々の報道が繰り返されていますが、アフターコロナでは依存症の増加が懸念されています」と語る。

「人との接触が禁じられ相談期間も機能していない現在、ギャンブル依存症者をもつご家族はどのような対応をしたらいいのか?」をコメディタッチのドラマでわかりやすく伝えることが今回のTwitterドラマ配信の狙いだ。

依存症に対する誤解や偏見がまだ強い中で、相談に訪れることのハードルは依然として高い。そのために、早期介入や早期治療が困難となっている。

そうした中で、重要となるのは依存症当事者と家族間の調整役となる介入者となる「インタベンショニスト」だ。

今回のドラマでは青木さやかさんがこの「インタベンショニスト」を演じる。

「誰でもやり直すことができる」と伝えるために

高知東生さんを今回、ギャンブル依存症の当事者の役としてキャスティングした背景にはどのような思いがあるのだろうか。

「ギャンブル依存症問題は、犯罪につながりやすく実際の相談業務でも、横領・窃盗・万引きといった罪を犯したギャンブラーのご家族からの相談はあとを絶ちません。しかし依存症者も罪を償ったあとは、社会復帰を果たしていく必要があります」

「当会では依存症のプログラムを受け回復を果たした高知東生氏を、依存症問題に悩む当事者や家族の『回復のアイコン』となって欲しいと考え、執行猶予期間中にあえて出演依頼を致しました」

このように今回のキャスティングに至った経緯を田中さんは伝える。

「依存症者とその家族には『一発アウト』など厳しい発言もあり、ともすれば孤立しがちですが、支援の手や、失敗しても再起を応援してくれる人に恵まれれば、誰もやり直すことができるのだというメッセージを伝えたく、キャスティング致しました」

色んな方から応援と後押しを頂いて、俳優の仕事をまたやることができました。監督から花束を受け取った時は嬉しくて思わず泣きました。事件を起こした俺と仕事をすることはリスクがあるにも関わらず、共演してくれた青木さやかさん、鈴木まりやさん、そしてスタッフの皆様方に心から感謝しています。

高知東生さんは「事件を起こした自分と仕事をすることは、共演者の方はじめスタッフの皆様にもリスクのあったことと思います」と語った上で、「自分が復帰することで、依存症に悩む仲間たちの希望になれたらこんなに嬉しいことはありません」とコメントした。

Twitterドラマでの俳優業への復帰を発表した翌12日、高知さんはTwitterで俳優復帰の報告に一俳優仲間やスタッフからのエールや一般の方からの応援コメントが寄せられたことを報告。「事件後、孤独で人が怖くて、閉じこもっていた俺にとって、こうして人の繋がりが実感できたことが本当に嬉しい」と語っている。

「依存症は『恥』ではなく『病気』です」

ギャンブル依存症問題を考える会の田中さんは改めて、依存症問題は当事者や家族など身の回りの人だけで解決していくことは難しいことを強調する。

「家族は依存症の問題を『自分の恥』と考え、 隠そうとしてしまいます。 そのためなんとか自分たちだけで問題を解決しようとして、時には『父親からも問題を隠し、尻拭いを続ける母親』といった究極に閉じられた人間関係に陥る場合もあります。依存症は『恥』ではなく『病気』です。病気というのは普通家族だけで解決しようとはしません。依存症も家族だけで解決することは難しいのです」

このように依存症当事者やその家族が相談や治療へとつながることを後押しするため、社会の側にも「依存症を人格や性格の問題と捉え、『ダメ人間』『頭が悪い』『甘い』とバッシングをする」のではなく、「依存症について『聞いてみよう』『調べてみよう』と理解しようとする」姿勢を田中さんは求める。

「依存症者の人格否定は、病気の知識のない人による風評被害です」

不安を払拭するため、ギャンブルにのめり込む場合も

現在の状況は東日本大震災の直後の東北における状況と似ている点があると田中さんは指摘する。

①先行きが不透明で不安があること
②仕事ができず時間があること
③給付金が入ること

これらがその特徴だ。

「東日本大震災の際には、賠償金の何千万円というお金をギャンブルに使ってしまい、その上借金をした人もいました。今回の給付金は桁が違いますが、ギャンブル依存症者は予定外の収入があると『これでお金を増やそう』と考えてしまいます」

「通常ならあり得ない認知の歪みなのですが、それが病気による脳の機能不全なのです」

自身もギャンブル依存症の当事者としての経験を持つ田中さんは「私も、ギャンブル依存症の真っ只中にいたときは『ギャンブルはお金を作る手段』だという考えにとらわれていました」と明かす。

「不安を払しょくするためには、お金がいる。そのためにはギャンブルで稼ぐしかない。こういう構図が頭の中で出来上がり、その考えが強迫観念となって離れなくなるのです。そうなると自分の意志の力では行動を制御することができなくなるのです」