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Updated on 2020年5月29日. Posted on 2020年5月25日

どうすれば「コロナと生きる」が可能に? 政府の決定だけでなくボトムアップの取り組みが必要

緊急事態からコロナと暮らす日常へ。BuzzFeed Japanは政府の新型コロナウイルス専門家会議のメンバーで川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんと評論家の荻上チキさんに話を聞いた。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い4月7日に発出された緊急事態宣言。5月14日には39県で、5月21日には大阪府・京都府・兵庫県でも解除され、残り5都道府県の今後に注目が集まっている。

BuzzFeed Japan

緊急事態からコロナと暮らす日常へ、生活のフェーズも移行しつつある。そのような中で、私たちの生活はどのように変化するのか。

BuzzFeed Japanは政府の新型コロナウイルス専門家会議のメンバーで川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんと評論家の荻上チキさんをゲストに招き、生配信番組で話を伺った。

緊急事態宣言、どう評価する?

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非常事態宣言の効果はどれほどあったのか。岡部さんは「効果は少なくともあった」と評価する。

「ほとんどの人が迷惑を被ったり、もうかなわないというのはあったけれども、病気が少しおとなしくなって、重症者が少なくなって、医療機関が少し回るようになってきた。もし重症者が出ても医療機関では引き取ることができる。そういった意味では、最初の目的の新しい病気が出たときに死亡者をできるだけ少なくして重症者を減らす、その効果はあったと評価しています」

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一方、荻上さんは政府からどのようにアナウンスがされるのかも重要な中で、どの政策によって「緊張度を高めることができたのか、人々の行動がどう変わったかの寄与度は、現段階で評価をすることはできない」と主張する。

その上で、今回の緊急事態宣言下では都道府県単位で宣言の発出/解除等が行われたことで他県から訪れた人の排除を起きたことを例に出し、「あくまで便宜的であった都道府県単位の行政区割りが一人歩きした」ことを踏まえて、「第二波に備えるためにも、細やかなアナウンスが必要だ」と語った。

今後のためにも、行動変容の物差しを

そうした中で論点として上がったのが、人との接触を8割減らすというメッセージにまつわる誤解だ。緊急事態宣言が発出された当初、「8割削減」という言葉がしきりに強調された。

専門家の発信、メディアの伝え方の双方に問題がある中で、人の流れが8割削減されることが必要という誤った認識が広まった形だ。

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だからこそ、荻上さんは「今後の議論のために何をもって行動変容したのかという物差しを持っていた方がいい」と問題提起する。

「人との接触を8割減らそうという話が出た後、政府答弁でもメディア報道でも、駅の利用率や通信状況のデータなどを参照していた。8割と言い始めたときに、どのデータでモニタリングするのかという共有がされていませんでした。トータル接触機会の8割削減は、人の流れの8割削減という訳ではない。どういったデータをもとに行動変容したと見るかは、今のうちにすり合わせをしておいた方が良いのではないでしょうか」

こうした意見に岡部さんは「ある数字を出してしまうと、数値目標をきっちり守ろうとする」性質があるとした上で、重要なことはトータルでどの程度を目指していくのかという点であり、その数字を達成することが必須ではないことを説明した。

「結果を見てみると、8割達成できていなくともいい線をいった。こうした中で、『でも8割達成していないじゃないか』という意見も出ますし、『7割までしか行かなかったので…』という言い訳がましい声も出てくる。8割というのは人と人との接触のチャンスをここまで減らすという話であって、その一つの指標として駅ならば人が出入りするから接触が減っているんじゃないかということです」

人口10万人あたり新規感染者0.5人は「目安」

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残り8都道府県の緊急事態宣言解除に向けても、いくつかの数値目標が設定された。

直近1週間で、人口10万人あたり新規感染者数が0.5人という基準は他国と比較しても非常に厳しいものだ。しかし、この数字も最終的には1つの指標であり、総合的な判断をした上で宣言解除する際の「目安」となっている。

「総合的にという意味で、10万人あたり0.5人という数字は達成値ではなくて『目安』です。このように説明をすると、いい加減じゃないかと言われてしまいますが、むしろ私は計り知れない、数値では出せない部分をちゃんとみることが大事だと思うんです」

このように岡部さんはコメントする。

たとえ人口10万人あたりの新規感染者数が0.5人となっていても、検査体制や医療体制に不安があれば病人となった人は安心することはできない。一方で人口10万人あたりの新規感染者数が1人であっても、安心して入院できる医療体制があれば解除も検討することはできると考えられる。

こうした中で、東京都は「東京アラート」を、大阪府は「大阪モデル」を掲げ独自基準を提示している。

荻上さんは、自治体ごとに差はあれど、新規感染確認者数、実効再生産数、医療のキャパシティなど、「重視している項目は概ね共通している」とし、「自治体ごとに医療キャパシティは変わってくるので、それぞれが解除基準と定めることはいいと思う」と語った。

同時にこうした独自基準に関する評価が「命名政治」や「どの自治体が優れているのかという政治の道具」となってしまうことに懸念を示し、「基準は今後も変わりうるし、相互に真似しあうのも必要になる。東京アラート、大阪モデルという言葉が一人歩きして、その後の議論をしばらないことが大事」と強調した。

コロナは今後どうなっていく?

そもそも、こうした感染症が流行した際にウイルスをなくすことというのは可能なのだろうか?

これまでにも自然消滅したSARS、中東にとどまっているMERS、翌年にはインフルエンザと同レベルになった新型インフルエンザなどの例があり、ケースバイケースだと岡部さんは説明する。

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「いくつか考え方があるけれども、生まれてまだ4ヶ月くらいしか経っていないこのウイルスや病気について全部を予測して、これが正しい方法ということは難しい」とした上で、「このウイルスがSARSのように消えてしまう可能性はなさそうなので、この病気とどう付き合うか、どう押さえ込むか。このウイルスと病気があることを知りつつも、やはり正常な生活をできるようにするのがこれからの工夫」と説明した。

また、荻上さんはコロナに関するリスク評価が変わっていく可能性にも言及した。治療法の有無だけでなく、報道のされ方などが変化することで、コロナとの暮らし方が変わってくる可能性はあるのだろうか。

岡部さんは、インフルエンザと比較をすると感染者数は少ないものの、急速に病状が悪化する人がいるとし、今後は重症者へどのように対応していくかが重要との認識を示した。同時に、病気への不安を解消するための方法も考えていく必要があるという。

「それができてくると、人々は病気があることはわかるけれど穏やかに暮らす事ができる。インフルエンザに対してもみんなハラハラドキドキしているわけではありませんし、結核で亡くなる人も依然少なくありません。一つひとつにガタガタと震えるのではなく、色々な注意をしながら、正常な生活へ戻っていくことが必要。それは専門家の医学的な領域の部分と、社会的な生活との両立をどうやっていくかという両面があると思います」

新しい生活様式にマッチできない人への視点も

今後も感染を防ぎながら生活を送るために、政府の専門家会議は「新しい生活様式」を提示した。こうした流れの中で接待を伴う飲食店などで独自のガイドラインを作る動きも生まれている。

荻上さんは「新たな日常」や「行動変容」といった様々な言葉が、これまでは専門家会議や政府からのトップダウンで生まれてきたと指摘。こうした言葉をあくまで一提案として踏まえた上で、ボトムアップで「それぞれが各自でできるリスク対策は何かを検討していく必要がある」と話した。

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「店は開くけど換気はする。消毒を徹底する。その頻度を上げるなど、リスクを下げることはできます。リスクをゼロにすることはできませんし、高いままかもしれませんが、それ以前と比べてどのように対応したのか。その対応の差分を評価していくことが必要ではないでしょうか。あの業界はこれしかやっていない、あそこは不十分だと非難をするのではなく、それでも以前と比べてリスクを減らしている、と評価をするということです」

そんな中で問題提起したのは、「ニューノーマル」という言葉が知らぬ間に世間一般の「普通」を規定してしまうことのリスクだ。

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「ニューノーマルという言葉遣いが少し気になっています。ノーマルの規定は、ノーマルでないものが規定されてしまう。密を避けましょうと言っても、誰かの介助が必要な人もいます。体質や心理的にマスクがつけられない人もいる。手話通訳でマスクを外したい場面もある。新しい生活様式という言葉も、誰かにとって必要な様式を<古い>と位置付けてしまうよね。でも、今提示されている新しい生活様式にマッチできない人もいるわけです」

「新しい生活様式なる言葉は、人を裁くものではなく、あくまで提案の一つにすぎない。それができない人に対するセカンドオプションや想像力が必要があると考えます。最初はコンフリクトが起き、ぶつかることもあるでしょう。そうした中で、コミュニケーションを重ねていくことで、コロナ対応をつくりあげていくことが必要なのではないでしょうか」

BuzzFeed News Live本編はこちらから

【⚡️配信中】緊急事態からコロナと暮らす日常へ 私たちの生活はどうなる <出演者> 政府専門家会議メンバー 岡部信彦さん(川崎市健康安全研究所 所長) 評論家 荻上チキさん(@torakare) BuzzFeed Japan Medical 岩永直子(@nonbeepanda) https://t.co/yIFG6x7lw9

Contact Yuto Chiba at yuto.chiba@buzzfeed.com.

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