新型コロナウイルスのワクチン接種を担当する河野太郎行政改革担当相は2月16日、記者会見を開き17日から100の医療機関でワクチンの先行接種を開始することを発表した。
先行接種の後に、医療従事者、高齢者、持病のある人への接種が予定されている中、どの程度見通しは立っているのか。また、接種勧奨のためにどのような情報発信をするのか。
河野行革相が語ったこと、語らなかったことをまとめた。
17日から先行接種がスタート
河野行革相は冒頭、厚生労働省の審議会でワクチン接種の期間はおおむね1年、接種対象を16歳以上、1回目接種の3週間後に2回目を接種するという方針でファイザー社の新型コロナワクチンが承認されたことを報告した。
これを受け、17日から全国100の医療機関でワクチンの先行接種がスタートする。先行接種の対象となるのは約4万人の医療従事者。そのうち2万人は、接種後7週間に渡って日誌を付け、経過観察を行うという。
なお、先行接種のために手配したワクチンが余った場合には、その後、先行接種以外の医療従事者への接種に順次移行するとしている。
17日には各都道府県から新型コロナ治療に従事する医療従事者の人数が報告される。その報告をもとに今週中にも、各都道府県へ配分される医療従事者向けのワクチン量が決定する。
先行接種における2回目の接種は3月10日以降にはじまり、高齢者の接種は「4月からの開始を見込んでいる」と発表した。
「いよいよコロナ対策の切り札と言われるワクチン接種が始まりますので、国民の皆様にはベネフィットとリスクをしっかり理解していただいた上で、多くの方に接種していただくことを期待したいと思っております」
接種スケジュールは「高次な連立方程式」
4月以降との見通しが発表された高齢者の接種スタートについて、河野行革相はより詳細な情報は「ワクチン供給量をしっかり確保した上でお知らせをしてまいりたい」とコメント。
「4月1日より前に、高齢者の接種が始まるということはございません」と述べるに止めた。
自治体には、高齢者への接種開始後11週間以内に、2回目の接種まで完了することを目標とするよう要請している。
この目標は変わらないとし、必要な体制を組むよう求めていく方針を示している。
ワクチン接種のスケジュールについて、河野行革相は見通しを示すことの難しさを以下のように説明している。
「結構、高次な連立方程式になっておりまして、ひとつはファイザーの供給数、それとEUの透明化のメカニズムできちんと(輸出の)承認が取れるかどうか、それから厚労省は(新型コロナ治療に従事する)医療従事者を370万人と推計しておりますが、これは各都道府県から数字が上がってきます。その数字がだいたい、どれぐらいになるのかということで(スケジュールが)固まってくると思います」
その上で、高齢者への接種スタートは予約した人がしっかりと接種できるように、「それなりに在庫を積み上げた状況でスタートしなければならない」と言及。
ワクチンの各都道府県内での分配やデータベースへの入力などが膨大な作業となることを踏まえ、「最初の立ち上げは、オペレーションのチェックをしながら、緩やかにしていかないといけない」との認識を示している。
「どれぐらいのスピードでどれぐらいの在庫をもって立ち上げるかというのは、なるべく早い段階で決めていきたい。協議をしていきたいというふうに思っております」
「たぶん必ず何か(問題)が起こる」
自治体の現場からは見通しが立たないために、準備が進められないといった声も上がる。
そのような反応については、次のように語った。
「自治体が一番必要としている供給スケジュール、高齢者への接種開始の日程がなかなかお伝えできないというところは私も難しいと思っていますし、ご迷惑をかけている部分は率直にお詫びをしなければいかんと思います」
「できる限り、自治体に迷惑のかからないような形でスタートを切れるように、今いろいろと作戦を考えているところです」
なお、河野行革相は「何事もなくやってほしいと思っていますが」と前置きしつつ、高齢者の接種が始まるタイミングでは「たぶん必ず何か(問題)が起こる」と語り、「何か起きた時にどうカバーするかというのを、しっかり考えていきたい」とした。
「最初から一律こうやってくださいというガイドラインを示してその通りにビシッとやるのがベストかも知れませんけれども、我々も自治体も同じことをやったことがないわけですから、今後も手探りでやっていかなければいけないのだと思います」
「きちっと折り目正しくやるよりは、いかに柔軟に物事に対応できるか。おそらくこれ(ワクチン接種)をやる中で、大雨もあるでしょうし、地震が起きないという保証もまったくない。色々なことが起きる中で、起きたときにそれにどう対応するかという、対応力が問われるのだと思います」
誤情報の拡散にはどう対応?
政府として目標とする接種率はあるのかとの質問には、「(厚労省の)田村大臣と相談しながら決めていきたい」と回答。
若い世代にも「接種していただくことが非常に大事」との見解を示し、ワクチンの効用、副反応や新型コロナに感染することでどのようなことが起きるのかを伝えることで、「若い世代の接種率を高めていきたい」と語った。
高齢者にはテレビや新聞で発信する必要があるとした一方、若い世代に対してはインターネットやSNS、その他の様々な媒体を利用して接種をすすめていく必要があるとしている。
情報発信については、官邸のホームページ上でワクチン接種に向けた案内を発信していると紹介。Twitterでの情報発信も「なるべく早くしていきたい」と話した。
「正直言って、まだまどろっこしい部分がありますが、広報チームにもギアを入れ替えてもらって、色々な情報をいち早く出せるように努めていきたいと思っています」
なお、誤情報の拡散などで接種控えが広がる懸念への対応については「正確な情報を出すことが一番大事」と強調。
その上で、「明らかに間違った情報が流布する場合には、政府として何らかの対応ができるよう考えていきたい」と説明した。
河野行革相は「多くのお医者さん、研究者の方が正確な情報を発信するための緩いネットワークのようなものを作っている」と語り、「そういうグループとも連携できたら」としている。
先行接種分は特殊な注射器を調達済み
ファイザーが開発した新型コロナウイルスのワクチンについては、1つの瓶で想定していた6回の接種が用意した注射器ではできないことが問題視されている。
しかし、河野行革相は先行接種4万人分については、1瓶から6回接種が可能な特殊な注射器をすでに手配済みであると説明。
今後の医療従事者、高齢者などへの接種も「6回取れるシリンジ(注射器)で始めたいと思っている」とコメントした。
しかし、あくまでそれは「意気込み」であると述べ、「万が一、高齢者の接種に(注射器の)調達が間に合わなかった時には5回で始めざるを得ない」としている。
「貴重なワクチンを廃棄するということがないように、とにかく針とシリンジの調達を一生懸命頑張りたいと思います」
高齢者以降の接種の進め方は未定
なお、通勤や通学をする世代へのワクチン接種の進め方については現在のところ未定だ。
「正直、高齢者への接種をどうスムーズにスタートさせるかというところに注力しておりましたので、先のことまで何か戦略性を持って考えていたわけではありません」
「現役世代だと例えば、通勤してます、大学へ通学しています。あるいは自分の家から離れた大学へ行って下宿してます。その様なケースがあるわけで、高齢者と全く同じやり方で接種を進められるかというと、様々考えていかなければならないと思っている。そこについては、今後どういうやり方がいいのか、少し考えていかなければならないと思います」