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「最後は生活保護」と言ったのに、壁はそのまま? 菅首相が明言を避けたこと

「最後は生活保護だとまで言うのであれば、それを阻んでいる、ためらわせているものについて、こういう時に見直すべきなんじゃないですか」。野党が質問するも、首相や厚労相は「扶養照会」見直しを明言することはなかった。

新型コロナウイルス感染拡大の影響が長引き、政府の支援が届かず生活に困窮する人もいる中、菅義偉首相が国会で「最終的には生活保護がある」と発言したことに批判が相次いでいる。

1月28日の参議院予算委では、野党から生活保護を利用しづらくさせている制度上の「壁」の改善を求める声もあがったが、首相や厚労相が見直しを明言することはなかった。

争点となったのは「扶養照会」

前日27日の参議院予算委員会。コロナの影響を受ける人々に政府の支援が届いていないのではないか、という立憲民主党の石橋通宏議員の質問に対し、菅首相は「最終的には生活保護がある」と答弁した。

野党からは「生活保護に陥らせないためにするのが首相の仕事」(蓮舫議員)などと批判の声が上がり、ネット上でも「生活保護はあくまでも最後の命綱、そこに至る前に困窮している国民に手をさしのべるのが政治の役割」などの声が高まった。

首相はその後、「最後はセーフティーネットもあり、信頼する社会をつくっていきたいという話をした」と釈明している。

翌28日の参院予算委でも、共産党の小池晃議員がこう問いかけた。

「総理は昨日、最後は生活保護があると言われました。しかし、最後のセーフティーネットの役割を果たしていないんじゃないですか?」

「最後は生活保護だとまで言うのであれば、それを阻んでいる、ためらわせているものについて、こういう時に見直すべきなんじゃないですか」

「たとえば、本人がこの人には連絡しないでくれと言っている親族には、扶養照会をしない。そういう運用にすべきではありませんか?」

質問に対し、菅首相は以下のように答弁した。

「私が『生活保護がある』と言ったことについて、いろいろな反響があるようですけれども、いずれにせよ、私たちは重層的なセーフティーネットで、なんとか国民の皆さんの命と暮らしを守るということで政府として取り組んできています」

「ですから、例えば雇用を守るときに雇用調整助成金、生活に困窮した方については小口に特例貸付だとか、あるいは住居確保給付金だとか、いろんなことで重層的にお守りをしていくというのが政府の役割だと思っています」

3分の1が、扶養照会を理由に生活保護を躊躇

小池議員の質問の背景にあるのは、生活困窮者の支援を行う一般社団法人つくろい東京ファンドが行った生活保護に関する実態調査の結果だ。

生活保護を利用しないと答えた3人に1人が、「扶養照会」を理由に、申請をためらっていることが明らかとなった。

扶養照会とは、生活保護を希望する人が窓口に申請にきた際、行政が支援する前に親族が支援することができないかを確認するための確認作業だ。

自治体が戸籍を調べ、親族を探し、連絡を取るといった手段が取られている。

この扶養照会が、生活保護申請のハードルを上げている側面もある。

なお、DVなど家族へ連絡が行くことによって実害が生じる場合には、扶養照会がなくとも生活保護申請はできる。

田村憲久厚生労働大臣は、扶養照会について予算委員会でこう繰り返した。

「扶養が保護に優先するというのは、生活保護の基本原理でございます。でありますから、扶養というものを一応、義務ではありませんが優先はする」

「義務ではありません、優先するということであります」

2017年度の調査では、新たに3.8万人が生活保護を申請し、扶養照会を経て約600件で親族から何らかの金銭的支援を受けたという。

「最後は生活保護だとまで言うのであれば…」

昨年12月、厚労省が「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずご相談ください」とウェブサイトに明記したことが話題になった。

小池議員はこうした発信を評価しつつ、「申請してくださいというのであれば、申請をためらわせるようなことはやめるべきだと、見直すべきだと思うんです」と重ねて質問。

扶養照会が法律によって定められた義務でないのであれば、やめるべきと訴えた。

田村厚労相は「家族関係が壊れているような場合」は扶養照会が必要ないと説明。それ以外のケースでは、扶養照会を見直すことは考えていないとの姿勢を示した。

小池議員は「家族関係が壊れているんじゃないんです、知られたくないんですよ」と語り、扶養照会が生活保護申請のハードルであることを強調した。

生活保護申請のハードルを取り除くことについて、菅首相は「その執行については担当大臣が執行する」「私から申し上げることは控えたい」と語り、具体的な考えを示すことはなかった。


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