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「1日1食しか食べていない」「虐待を受けている」 そんなSOSにあるNPOが食料支援、現金給付をはじめた

「比較的ヘビーな相談が増えてきた実感値があります。虐待されているという相談も増えつつありますね」

新型コロナウイルスの流行とそれに伴う様々な制限は大人だけでなく、子どもにも大きな影響を与えている。

学校の休校措置、アルバイトによる収入の減少…様々な事情で親元を頼ることのできない子どもたちの中には、生活困窮に陥る人もいる。

大阪府を中心に活動を行う認定NPO法人D×P(ディーピー)は6月1日、そんな若者に月額1万円の現金を給付する活動を始めた。就労や進学をサポートしてきたNPOが、なぜ今、現金の給付を行うのだろうか。

増えるヘビーな相談

「コロナの状況が始まってから、かなりLINE経由での相談が増えています。3月から4月15日にかけて登録者は6倍に(前年同月比)。現在も、106人(5月末時点での相談者の実数)の相談に答えている形です」

D×Pの代表、今井さんは、現状をそう語る

新型コロナの影響が大きくなった時期から、相談者の数が急増した。LINEで相談に対応している子ども・若者は大阪府在住の場合に止まらない。現在は全国40都道府県からの相談に応じる。

D×Pがオンラインで相談を受け、現地で活動するNPOと連携し、支援をするケースもあるという。

現在はスタッフも倍に増やし、急増した相談に対応する。相談対応を行う中で、見えてきたのはある変化だ。

「比較的ヘビーな相談が増えてきた実感値があります。虐待されているという相談も増えつつありますね」

新型コロナによって親がストレスを溜め込みやすいために、こうした相談が増えているのではないかと今井さんは語る。

外に出られないことのストレス、仕事を失ったストレスなどで家庭内での関係が変化するケースが少なくない。

「お子さんのいる家庭では、子育てをしながら働いて、でも仕事も減って生活の先行きが見えず、しかも学校の代わりのような機能も求められてしまっている。こうした状況ではストレスが溜まっていくことは不思議ではありません」

食料の支援、現金の給付も

そんな中、D×Pでは食料の支援にも注力し始めている。

「相談に対応してきたら、『アルバイトのシフトが半分以下になって、1日1食しか食べていない。耐えるしかない』といったケースもあり、それはまずいと。こういったケースでは、食料を送っています」

こうした生活困窮にある子ども・若者の特徴は一人暮らしだということ。児童養護施設出身者や親を頼れない状況に子ども・若者が、新型コロナによる影響のしわ寄せを受けてる状態だ。

そうした子ども・若者の場合、飲食業でアルバイトをしているケースが非常に多いため、今回の新型コロナでより大きなダメージを受けやすい実態がある。

こうした10代の場合、行政が提供する生活困窮者を支える制度を利用しにくい場合があり、支援につながりにくい子ども・若者がいることは見落とされがちだ。

行政による支援を利用できない子ども・若者を対象に、D×Pは6月1日から月1万円を3ヶ月、最大40名に支給することを決定した。

「正直、うちも財務的に余裕があるわけではない」と今井さんは漏らす。それでも、「経営はなんとかするしかない。それよりも現状に困っている10代の支援を優先しよう」と考え、必要な支援であると判断した。

「支援にたどり着くまでのハードル以上に、誰かに後押しされないと食べずに我慢してしまうことがあると感じます」

「これまで個別の10代に食糧支援などを行なっていましたが、LINE相談でつながった10代に直接食費や家賃の補助を行い社会へつなぐところまで伴走する必要性を感じ緊急サポートを立ち上げました」

家計をサポートし、就職や進学を支えるのが、その狙いだ。

一人ひとりのニーズに応える支援を

これまで就労の支援も行ってきたD×P。アンケート調査を行ったところ、支援する中でリモート勤務へのニーズが子ども・若者の間にも増えていることが見えてきた。

アンケートに答えた人の約半数が在宅ワークに興味を示した。こうした声を受け、D×Pでは必要があればパソコンの寄贈やスキルのトレーニングなどもカバーする。

「就職というゴールがやっぱり遠く感じられる人も多い。そう強いた中で、まずはうちのアンケートの集計作業を手伝ってもらったり、ステップバイステップでスキルを身に付けてもらっています」

ワードやエクセルの使い方、デザインやプログラミングなど希望者が学べる仕組み作りも進める予定だ。

どのようなサポートを必要としているのかは、一人ひとり違う。ニーズに応えるためにも、きめ細やかに個別の支援ができることを目指すと今井さんは話した。

築いた信頼関係が、いつかセーフティーネットに

これからもLINEを活用し、子ども・若者の声をキャッチしていく体制整備を進める。

「信頼関係を作って、その関係を絶やさずつないでいくことが重要なんです。例え、その時は特別な支援を必要としていなかったとしても、いつかサポートを必要とする状況に陥るかもしれません。必要とした時、必要な支援を届けるためにも、関係性を常日頃から作ることが重要だと考えています」

これまでも、関係性を地道に築き、1年半、2年と長期間関わり続けることで就労や進学につながった子どもや若者たちがいる。

支援を行う上で、重要なポイントはコロナ禍でも変わることはないという。