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新型コロナワクチン、順番が来たらどんな流れで接種するの? 全国初の訓練でわかったこと

実際の接種を想定し、医師や看護師や事務職員を配置し、エキストラを集めて行われた訓練は全国初。訓練で見えたワクチンの集団接種に向けた課題とは。

川崎市で1月27日、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に向けた会場運営訓練が開催された。

実際の接種を想定し、医師や看護師や事務職員を配置し、エキストラを集めて行われた訓練は全国初。

国が定めた優先順位に基づき、医療従事者、高齢者、持病のある人の順に接種を進める上で全国の自治体が参考とする「標準モデル」を提示するためのものだ。

ワクチン接種することになった場合、接種会場でどのようなステップを踏むことになるのだろうか。

ワクチン接種の6つのステップ

ワクチン接種には大きく分けて6つある。

(1)受付
(2)予診表の記入と体温測定
(3)医師による問診
(4)ワクチン接種
(5)接種済み証明書の発行
(6)経過観察

川崎市の今回の訓練会場には、医師3名、看護師5名、事務職員16名が参加。

医師は問診スペースに、看護師は接種スペースと救護室、経過観察エリアに配置された。

問診スペース、接種スペースはそれぞれプライバシーへの配慮からパーテーションが設置されていた。

なお、新型コロナ対策として、会場の窓は全て開けられていた。後方など一部の場所にストーブが設置されていたものの現場は肌寒かった。

また、待機スペースの席は互いに1m以上離れて設置されていた。

受付→予診表記入→問診

まず初めに、ワクチン接種者は入り口で手指消毒と本人確認をし、ワクチンの説明サイトの案内を受ける。

予診表を受け取った後は、所定のスペースで座りながら予診表の記入を進める。ここでは体温測定も行われた。

今回使用された予診表はあくまで仮のものだが、予防接種の効果や副反応などについて理解をしているか、現在何か病気を患っているか、体の具合が悪いところはないか、ワクチン接種について質問がないかといった項目が並んでいる。

その後、待機スペースへ移動し、順番が来たら、医師が待つ問診スペースへ。

「お名前とご年齢を教えてください」
「体調はいつもとお変わりはありませんか?」

問診スペースでは医師が一人ひとりに体調不良や不安がないかを聞き取っていく。

エキストラで参加した接種者役の女性は医師に「以前、予防接種をした際に目まいがした」「湿疹はないが、接種後にかゆみを感じたことがある」と打ち明ける一幕も。

医師は女性に対し、接種後は経過観察スペースでゆっくり休んだ上で体調に変化などがあればスタッフへ申し出るように伝えていた。

接種後は15分〜30分ほど経過観察

問診を終えると、接種室の前に並び、順番が来れば一人ひとり接種室の中へ入っていく。

「どちらの腕に打ちますか?」
「ちょっとチクっとします」
「しびれはないですか?」

接種をする人に配慮をしながら、接種はスムーズに進められた。

その後、ワクチン接種済みであることを証明する書類を受け取り、経過観察スペースで15分から30分程度待機し、一連の流れは終了だ。

救護室にはベッドや救急対応が可能な道具が設置されていた。

新型コロナのワクチン接種後、ファイザーのワクチンでは189万回中21件、モデルナでは約400万回中10件のアナフィラキシーショック(重いアレルギー反応)が報告されている。

アレルギー反応の多くは接種後15分程度の間に生じることが多いとされているため、救護室にはアナフィラキシーショックに対応するためのエピペンも用意されていた。

川崎市の職員によると、救護室ではあくまで救急対応を行い、体調不良などになった人はその後、病院へと搬送することを想定しているという。

1時間で接種できるのは30人ほど

今回のワクチン接種の訓練を主催した川崎市によると、受付から経過観察スペースに到達するまでに、最短で13分、最長で26分要した。

待機列の長さなどによって、1人あたりの時間が変化したため、このような差が生まれたという。

今回の測定データに基づくと、1時間で接種できる人数は30人ほどを見込んでいる。

1日何時間ほど接種会場が稼働するかどうかは未定であり、地域ごとにも稼働時間が異なることが予想されるが、1日8時間稼働した場合には1つの会場で240人ほどが接種できる計算だ。

なお、ワクチンの薬事承認が下りていないため、今回の訓練では実際の接種会場で必要となるワクチンの移動や管理、接種前の希釈などの手順は省かれている。

それ以外の工程は、実際に用いる機材を使った上で全て行われた。

焦らず、落ち着いて接種できる環境整備を

会場となった川崎市立看護短期大学の学長で川崎市健康福祉局の医務監を務める坂本昇さんは「あくまでどこでも出来るということをコンセプトにした」と説明した。

「この程度の体育館であれば、どこの市町村でも持っているでしょう。最小の予算で、この程度のものでも接種会場の設営は出来るんだということを多くの市町村に知っていただくことが目的です」

その上で、問診エリアでの対応に予想以上に時間がかかった点を、実施した上で見えた課題として指摘した。

「『これってアレルギーが怖いんですよね?』とか、『私はこうなんですけど…』と、現実の会場ではものすごい質問が出てきて、そこで止まってしまうのではないか。そういったものをどうやって回避していくかということが、一つの大きな課題として出たのかなと感じます」

川崎市健康安全研究所所長で政府の新型コロナ分科会のメンバーでもある岡部信彦さんはワクチン接種後の副反応などについて相談できる窓口を国に設置する必要性があるとコメントし、今後提言していくと語った。

全国各地でワクチン接種が始まると、地域によって接種状況に差が生まれることも予想される。

岡部さんはそのような状況が実際の接種現場の雰囲気に影響を及ぼすことを危惧し、以下のように語った。

「どうしても数字が出てくると、どこそこは何%もやったとか、あっちはまだ何%いかないとか、あるいはここは何時間で出来たけど、こっちはどのぐらいかかったと、競争になるかもしれないですね」

「でもワクチンというのは焦らないで、落ち着いて静かな雰囲気で接種できるというのが一番安全性が高まる。ぜひその点もご協力いただきたいと思いますし、多くの方に知っていただきたいと思います」

厚生労働省は今回の訓練会場の設営の様子や訓練風景を撮影した動画を全国の自治体に共有し、ワクチンの集団接種への準備を進めていくとしている。


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