• covnavi badge
  • covid19jp badge
  • medicaljp badge

高齢者の75%がワクチン接種済み。でも… 自治体が抱く今後への懸念。集団免疫獲得へ、取り組みスタート

東京都小金井市は漫画家・かわぐちかいじさんとコラボして製作したポスターや、「こびナビ」が作成したガイドブック等を活用し、より多くの人々に接種を後押しすることを目指す。

東京都小金井市と同市医師会、薬剤師会、新型コロナウイルスに関する正確な情報伝達を目指す専門家グループ「こびナビ」が、これから本格化するワクチンの一般接種に向けて、啓発と情報発信で協力する。7月9日、4者が共同で記者会見して発表した。

小金井市や市医師会は、若年層になるほどワクチン接種の意欲が低下するという調査結果が出ていることを懸念。

若い世代に接種を呼びかけるため、同市在住の漫画家かわぐちかいじさんとコラボして製作したポスターや、「こびナビ」が作成したガイドブック、動画を活用し、より多くの人々に接種を後押しすることを目指すという。

高齢者の75%が2回の接種済み。でも…

小金井市では医療従事者の96%が1回目を、92%が2回目の接種を終えている。また、高齢者の93%が1回目を、75%が2回目の接種を終えた。

今後は65歳未満の一般接種が本格化する見通しだ。

「これからの鍵は、やはり自分の命を守ることと合わせて、社会全体のの感染拡大を防止する意味でも集団免疫獲得となります。あらゆる世代で、対象となる皆さんに正しい情報をもって判断していただくことが重要です」

会見した小金井市の西岡真一郎市長は強調した。

集団免疫獲得に向けて、同市医師会で感染症対策担当理事を務める三澤多真子さんは「若者の接種率をいかに上げていくかが課題です」と語った。

「医療従事者・高齢者のフェーズでは、いつどれだけワクチンが届くか、などのロジスティックスの課題や、いかにワクチンを打つ側が接種件数を増やせるか、が主な課題でした。しかし一般向けの接種が始まると、これまでと違う問題が出てくると我々は考えています。それは若者への接種が進まないことです」

「若者への接種率の低迷はすでに世界的に懸念されています。米国では30歳以下のワクチン接種が進まず、全体目標の7割に届かない大きな理由になっています」

「接種のリスクと比較するのはゼロリスクではなく、新型コロナウイルスに感染するリスク、またパンデミックが収まらずに社会生活の制限が続くことによる様々な弊害です」

同市はこうした問題に対処するため、医師会を通じてワクチンの仕組みや副反応などについて詳しく伝えるメッセージを合計8回発信してきた。しかし、接種意欲の低い人々には届いていないと感じていたという。

そこで、地元在住で人気漫画『空母いぶき』などで知られるかわぐちかいじさんにポスターの作画を依頼。啓発ポスターをつくった。

ポスターには「高性能ワクチンでコロナを迎撃せよ!!」という文字がつづられている。

同時に正しい情報発信にも注力する。

日米の医師らによって運営される正しい情報を発信するためのプロジェクト「こびナビ」と連携し、「こびナビ」が作成したハンドブック「いま知っておきたい新型コロナワクチン」を市内の医療機関や各施設に1万部配布する。

また、「こびナビ」の医師らが作成したワクチン接種後の待機時間に視聴可能な動画を視聴するためのQRコードを接種会場で配布する方針だ。

この動画は接種後の副反応や重い副反応はあるのかどうか、接種後に続けるべき感染対策等について伝える内容となっている。

アメリカでも接種の勢い低下

「現在、アメリカの1日の接種数は80〜100万回です。ピーク時には400万回を超えましたが、大きく低下しています。これは、ワクチンを多くの人がうち終わったからか?と思われるかもしれませんが、そうではありません。アメリカもワクチンのロールアウト(広く行き渡らせること)に非常に難渋しています」

アメリカ在住で米国立研究機関に勤務する峰宗太郎さんは、こう語る。

優先接種やリスクの高い人々へのワクチン接種が終わった段階では明るいムードが広がった。しかし、現在は接種意欲の低さや誤情報、偽情報による影響、反科学の流れ、党派性などによって接種のスピードが落ちていると指摘する。

「アメリカにおいても、無関心な人々へ接種を促していかなければ、集団免疫に達することは困難です。同様の問題は現在はハイペースで接種が進む日本でも生じることが予想されます」

「こびナビ」はクラウドファンディングで集めた約3000万円の資金を元手に活動している。今回のガイドブックも、その資金を捻出し、作成した。

ガイドブックは(1)新型コロナウイルスとワクチンの仕組み(2)こびナビによく寄せられる質問、の二部構成となってり、後半では、「不妊になる」「遺伝子が組み換わる」といった誤情報への専門家の見解や「妊娠中に接種しても大丈夫か?」といった不安に回答している。

このガイドブックは現在、3万部の印刷を予定しており、随時連携する自治体や団体へ配布予定だ。

3万部を超える要望が寄せられた場合には、追加で印刷することも検討しているという。