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デルタ株の流行で子どもの感染対策はどうなる?部活の中止や一斉休校は必要なの?感染対策の専門家に聞きました

学校という場における感染リスクを考えた場合、リスクを制御しやすい場面と制御しにくい場面があると専門家は指摘する。どのような点に気を付けるべきか。リスク低減のためにできることとは。

全国で爆発的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中、懸念されているのが子どもの感染者の増加だ。

横浜市や川崎市など一部の地域では公立の小中学校の夏休み延長も決まった。

子どもの感染リスク低減のためにできることは何か。学校で気を付けるべきポイントは?

感染対策の専門家で聖路加国際大学QIセンター感染管理室マネジャーの坂本史衣さんに話を聞いた。

子どもの感染者は増えている

Yuto Chiba / BuzzFeed

聖路加国際大学QIセンター感染管理室マネジャーの坂本史衣さん

デルタ株がまん延する中、これまでとは子どもを取り巻く感染状況も変化している。

塾でのクラスターや子どもの重症例も確認されている。

現状を坂本さんはどのように捉えているのだろうか。

「第5波では感染者数が急増しましたが、人々の接触は十分に減ってはいません。ワクチン接種は進んでいますが、それでも2回の接種を終えたのは全体の4割です。デルタ株は従来の株よりも感染力が高い。このような状況で全体の感染者数が増加すれば、子どもの感染者数も増えることになります」

「夏休みに入ってからは、保育園や小学校低学年が日中滞在する学童クラブ、中学校、高校の部活動など、多数が集まる場所での感染が増えているようです。ただ、これまでと同じく、家庭での感染も多い。子どもと一言で言っても、乳幼児から高校生まで幅広い。それぞれ過ごしている場所や過ごし方は異なります。その中で共通しているのは、近距離での接触が頻繁に起きる状況では感染するリスクが高いということです」

学校における制御しやすいリスク、制御しにくいリスク

Buddhika Weerasinghe / Getty Images

例えば学校という場における感染リスクを考えた場合、リスクを制御しやすい場面と制御しにくい場面があると坂本さんは言う。

具体的には授業中や食事中などの時間は感染リスクを比較的制御しやすく、部活動や放課後などは比較的制御しにくい。

「授業中も食事中も基本的には喋らず、前を向いて座り、発言する場合もマスクを着けて大声を上げない。そして、空調を効かせながら換気が図られている。このような状況では感染リスクは抑えられると思います。遠隔授業については様々な意見がありますが、学校で複数の感染者が発生するなど、授業の継続が難しい状況が生じた場合や将来のパンデミックに備え、少なくとも準備は必要だと考えます」

「一方で、部活動や放課後の行動ではマスクを着けない状態での無防備な接触が起こりやすい。スポーツなど身体的な接触がある競技をプレーし、時にはフィールドで集まり密になる。練習の前後はロッカーで談笑することもあるかもしれません。帰り道にどこかで食事をする場合もあるでしょう。こうした場面での感染リスクは高くなります」

坂本さんは自身の子育ての経験から、小学校高学年あるいは中学生以上になると子どもたちの行動を大人がコントロールすることは次第に難しくなり、感染リスクを制御することはより困難になると強調する。

ただ、感染者の大多数は大人だ。大人が感染予防を最大限やり、その上で子どもたちへ感染リスクの高まる行動は何かをしっかり伝えていく必要があると坂本さんは言う。

・機会ができ次第、ワクチンを接種する

・不織布のマスクを顔との隙間がなるべくできないように着ける

・食事の場や職員室 / 会議室/休憩室などでマスクを着けずに同居家族以外と接触することを避ける

・適度な頻度でアルコールや石鹸で手指衛生を行う

・人と人との間の距離はできる限り大きくする

・声を出す場合もできる限り静かな声で

・熱中症を防ぎながら、換気は今まで以上に積極的に行う

・風邪や胃腸炎のような症状が見られたらまずは人との接触を避ける


教員をはじめとする大人が学校内でもこうした感染対策にしっかりと取り組み、あわせて子どもたちにも感染対策への協力を呼びかけていく必要がある。

12歳以上の子どもはワクチン接種が可能だ。接種を後押しするためにも「正確な情報を届けていくことも重要になる」と坂本さんは語った。

部活動の実施、「白黒をはっきりつけて判断」は難しい

Trevor Williams / Getty Images

「感染対策について、何がリスク行動なのかが十分に伝わっていないのかもしれません。環境消毒に一生懸命取り組む一方で、マスクをずらして会話をしていたら意味がない。『感染対策を徹底』という言葉がよく使われますが、肝心な対策が抜けていることもあります。リスク行動の認識を間違えると、あまり意味のない対策を一生懸命続けてしまう可能性がある」

「同時に学校はどうしても人が集まらざるを得ない場所なので、リスクを回避する上で理想的な環境がなかなか生まれづらいのも事実です。完全にリスクを減らすことは難しくとも、どこまで減らすのか / 減らせるのかということとのせめぎ合いなのだと思います」

身体的な接触や発声を伴うスポーツや合唱などの部活動は、感染状況が悪化している状況では感染リスクが高くなることが指摘されている。

坂本さんは「現在の首都圏のような状況では部活動の場に感染者がいる可能性はとても高い」と言う。では、どうするべきか。

「白黒をはっきりつけて『あらゆる部活動はやめて』と言うのは簡単です。でも、何をやって、何をやらないのか。どこまでやれるのか。活動の内容を見ながらもう少し細かく判断していく必要があると思います」

「首都圏のような感染状況では、部活は実施しないという判断も当然あり得るでしょう。一方で、やり方次第ではリスクを下げることができるかもしれないので、低いリスクを許容するという判断もあるかもしれません」

「最終的にはメリットとデメリットを勘案し、地域の流行状況を踏まえながら、子どもたちや保護者たちの意向をくみながら、判断することになると思います。ですが、これらは大人がまずはできることを最大限やった上で検討すべきであることは繰り返し強調しておきたい」

保育園や幼稚園での感染対策は?

Recep-bg / Getty Images

中高生と同じく、感染リスクを制御しにくいのは保育園や幼稚園に通う子どもたちだ。

2歳以上であればマスクの着用を推奨されているが、現実問題として常に着用することを徹底することは難しい。

「まずは保育士など勤務するエッセンシャルワーカーたちの中でワクチンを接種できていない人がいれば、優先的に接種できるような救済措置が必要かもしれません。接種対象となっていない年齢の子供を守るには、周囲の大人の接種率を上げることが重要だからです」

それに加え、園内だけでなく日常生活の中でも、まずは大人が上に挙げたようなリスク行動をできる限り避ける努力を続けてほしいと坂本さんは語る。

「小さい子どもができることは限られています。マスクのない状態での密接が起きやすい。何かを触った手で、そのまま顔を触りやすい。感染しても無症状や軽症が多く、症状からは見つけにくい。保育園や幼稚園では感染性胃腸炎やRSウイルスなどの他の感染症対策の一貫として、環境表面の消毒は年間を通して行われていると思いますが、新型コロナ予防のために血眼になってやる必要はありません」

「自分たちは何を優先するのか。何ができるのか。各家庭で話し合って決める必要があります。もしかすると、流行地域では子どもを保育園や幼稚園へ通わせることはできないと判断する家庭もあるかもしれませんし、園で感染者が出ていないので通わせると判断する家庭もあるでしょう。働くために通うことを選択する家庭もあると思います」

「幸い、日本では子どもの感染者に重症例が多数発生しているような状況ではありません。ですが、先進国で子どものコロナ患者が亡くなる確率は子どもの感染者1万人につき1人というデータも出ています。こうしたデータを目にしたとき、多くの親は『その1人が自分の子どもだったらどうしよう』と考えてしまうのではないでしょうか。こうした小児に特有の感覚は、どこまで対策をするのかという判断に大きく影響するものだと感じます」

夏休みの延長、見えない解除の基準

Xavierarnau / Getty Images

横浜市など夏休みの延長を決める自治体も出てきている。

坂本さんは、こうした夏休みの延長や休校の判断は「難しい」と話す。なぜか?

「感染対策は、やってみて結果がよければ不要だった、やらずに結果が悪ければ必要だったといった後知恵による評価を受けやすい。結果を事前に高い精度で予測できるデータをもって決めたいところですが、実際には地域の流行状況や子どもが重症化するリスク、医療提供体制などを参考にしながら、子どもへの利益と不利益のバランスで判断するしかない」

「長年、感染症の世界でキャリアを積んできた人の間でもこの夏休みの延長 / 休校の必要性については意見が割れています。教育機会の損失などによる不利益が感染予防の利益を上回ると考える人もいれば、休校にすべきと考えている人もいる。難しい判断を迫られていると思います」

夏休みの延長や休校措置を決めた場合、いつかはそうした措置を解除することになる。

だが、現在、感染状況が悪化を続ける中ではどこの段階で何を根拠にそうした措置を解除することになるのかが見えづらい。

「夏休みの延長や休校措置を始めた場合、どこでその措置を終わらせるのか、判断も非常に難しいものになると思います。どこまで感染状況が落ち着けば良いのか、ピークを越えれば問題ないのか、最適解が果たしてあるのか疑問です」

今は「呼吸不全」の状態でも入院できない

時事通信

デルタ株のまん延で今まで以上に感染対策を徹底することが求められている。

「ロシアンルーレットを思い浮かべてもらうと、今の状況がわかりやすいかもしれません。今までは拳銃に1つしか弾が入っていなかった。でも、今はデルタ株のまん延で3つ弾が入っているような状況。リスク行動をとった場合に感染する可能性は以前よりも格段に高くなっています」

坂本さんは気を付けるべきポイントはこれまでと変わらないとした上で、「一つひとつの対策を今まで以上に厳密にやっていく必要がある」とした。

「新型コロナで呼吸ができなくて息苦しい状態は、どういう状況か。洗面器に張った水に顔を押さえつけられながら息をしようともがくのは苦しいですよね? あの状態を思い浮かべてもらうと、イメージしやすいかもしれません」

「本来であれば、そのずいぶん手前の息苦しさを感じる状態で入院するのが普通です。でも、今はそれができません。血中酸素飽和度が90%を切ると通常は入院になります。でも、今は80%を切っても自宅で待機せざるを得ないケースが多発しています」

「残念ながら、非常に苦しくても簡単に入院できない、すぐには助けてもらえないということが今起きているのだと少しでも多くの人に知っていただきたいです。そんなことは絶対に自分の身には起きないとは誰も言えない状況です」

Contact Yuto Chiba at yuto.chiba@buzzfeed.com.

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