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エアコンで新型コロナ感染は広がるのか? 専門家「問題は3密空間が作られること」

暑い日には熱中症対策のためにもエアコンを利用することが推奨されている。では、感染対策上、注意すべき点はあるのだろうか。

エアコンを利用することで、感染が拡大することは考えられるのか。

暑い日が続く中で、このような懸念の声も上がっている。

エアコンを利用すること熱中症対策を行う上でも重要だ。では、エアコンを利用する上で感染対策上、注意すべき点はあるのだろうか。

聖路加国際大学QIセンター感染管理室マネジャーで感染症対策の専門家・坂本史衣さんに話を聞いた。

発端となった中国の例を確認すると…

なぜ、エアコン利用による感染拡大の懸念が一部で広がったのか。

坂本さんは「1月に中国で確認されたレストランでの感染例が、エアコンの利用が感染を拡大する可能性があるという報道のきっかけになった」と指摘する。

そのレストランではある感染者から、同じレストラン内の隣接するテーブルで飲食をしていた他の2組の家族へと感染が拡大したことが確認されている。彼らの間に直接接触した形跡はなかった。

そこで浮上したのが微細な飛沫が空気中を漂ったことによる感染の可能性だ。レストランの入っている建物には窓がなかった。

「この例で指摘されてるのは感染者がその場にいて、その周囲には食べながら話をしている人がたくさんいた。さらに、換気は行き届いていなかったということです」

「現段階では新型コロナウイルスが麻疹や結核のように空気中を長く漂い、感染が広がるという確証はありません」

「現在考えられている新型コロナウイルスの『空気感染』とは、『マイクロ飛沫』や『エアロゾル』と呼ばれるウイルスを含む微粒子が3密環境で漂い、主に感染者の近くにいる人たちがそれを吸い込むことによって感染する経路です。レストランの事例では3密空間において、エアコンから吹き出す風に乗って、ウイルスを含む微粒子が運ばれ、隣接するテーブルの客に感染したと推測されています。換気の良い空間において同様の現象が見られたかどうかはわかりません」

このようなケースをもとに、世界の科学者239人は7月7日に新型コロナウイルスが空気感染する可能性を示す根拠をまとめた意見書を作成し、WHOに提出したことは日本でも大きく報道された。

だが、そこに目新しい情報はないと坂本さんは指摘する。意見書の中で呼びかけられているのは、3密への注意だ。

エアコン利用時、換気はどのくらい?

「家庭の中でエアコンを使うことで、感染者がいないような環境であってもコロナに感染しますか?と言われれば、『エアコンでは感染しない』と答えます」

「エアコンは3密空間においてウイルスを拡散させる要因になるかもしれない。でも、問題は3密空間が作られることであって、エアコンを主な原因と考えるべきではありません」

坂本さんはむしろ、「換気を良くしましょう、マスクを外して声を出す密集を避けましょう」と基本的感染対策を徹底することを呼びかける。

では、エアコン利用の際、どの程度換気をすべきなのだろうか。

「暑い日にはエアコンを利用した方が良いでしょう。適度な換気も必要ですが、不特定多数の人が集まることのない、家庭内等では1時間に1回の換気は必要ない。1日数回、窓を数分開ける程度で十分だと思います」

「換気の際、数分であれば、エアコンはつけたままで良いと私は思います。エアコンをつけたり、切ったりを繰り返す方が電気代がかかるとの指摘もありますし、そのままつけていても問題ないのではないでしょうか」

「家に帰ってきて、部屋が暑くなっている時もありますよね。そうした時、1度窓を開けて、空気を逃してから、エアコンをつけるのも経済的だといいます。暑い日には熱中症のリスクが高まるので、そうした工夫をしながら、エアコンは利用した方が良いです」

マスク着用、必要な時のみで問題なし

坂本さんは同時にマスクの着用についても、注意を促した。

「現在、外を歩いていると常にマスクをつけている人が少なくない。でも、外にいるからといって、常につけている必要はありません。周りに人がいない限りはつけなくて良い。メリハリが大事です」

「外に出て、家の前を掃除する程度であればマスクはいりません。状況に応じてマスクを外していただいた方が良いと思います」

外したマスクはどのように持っておくことが適切か。飲食店などに入り、無造作に机の上に置くといったことは推奨できないという。

「自分の唾液や飛沫が付着していることが考えられるので、無造作におくのはよくない。ジップロックやビニール袋などを持っておき、そこに入れておくのが良いでしょう」

「もちろん、今日洗濯するシャツのポケットに入れたとしても大きな問題はありません。神経質になりすぎる必要はない。ですが、他の方が不快な思いをしないよう、管理するのが良いと思います」