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2021年も職場で注意すべき感染対策のポイントは?専門家に聞きました

「具合が悪い時には休むということを常識にすることが大切です」

2021年も引き続き、新型コロナウイルスと付き合い続けなければいけない。

1都3県での緊急事態宣言の発令が予定されているが、今回は4月の頃とは違い、飲食などに的を絞った「限定的」なものとなることが見込まれている。

正月休みが明け、仕事へ戻る人も多い中、職場での感染を防ぐためにどのような点に注意すべきなのだろうか。聖路加国際大学QIセンター感染管理室マネジャー・坂本史衣さんに話を聞いた。

「具合が悪い時には休むということを常識に」

前提として、リモートワークをできる限り導入するよう政府や専門家分科会はメッセージを発信している。リモートワークでも支障のない部分は、積極的に導入を進めていくことが今年も求められている。

だが、そうしたリモートワークでは対応できない場合、何よりも重要なことは「具合が悪い時には休むことだ」と坂本さんは言う。

「具合が悪い時には休むということを常識にすることが大切です。これは新型コロナウイルスに限りません。この感染症が収束したとしても、常識として定着するとよいと思います」

職場の中でのあらゆる行為が危険なわけではない。

どのような行為が感染リスクを高めるのかは、すでに明らかとなっている。

「仕事中リスクがあるのは、マスクを外し、近い距離で話をする場面です」

「仕事終わりの飲み会がわかりやすい例としてよく挙げられていますが、それに似たシチュエーションは休憩時間などにも起きやすいということに注意する必要があります」

感染リスク高まる場面に共通点

ある事業所では、洗面所で歯磨きをしていたことでクラスターが発生したという報道も存在した。

だが、歯磨きそのものが問題なのではなく、マスクを外して歯磨きをする場において、近い距離での会話が発生したため感染が広がったのではないかと坂本さんは指摘する。

似たような場面では、営業職の人が複数人で車で移動中、食事をとる際にマスクなしで会話をしたことで感染したと考えられるケースも存在するという。

「休憩室やロッカールーム、給湯室、喫煙室それから昼食をとる場所。マスクを外して何かをする場所はだいたい決まっていると思います。仕事中はそうした場での会話にリスクがありますので、それを避けることで感染リスクが下がります」

「それ以外の場面では、マスクをつけて、普通に生活していればそれほどリスクが高いとは言えません」

換気にも注意が必要だが、高層ビルなどでは窓を開けることができない。その場合は二酸化炭素濃度をモニタリングすることも有効だ。

坂本さんが働く聖路加国際病院では暖房をつけていても、窓を2cm〜3cm常に開け、サーキュレーターで空気が外へと流れるような工夫もされているという。

「換気以外では、出勤した時、帰宅した時、あとは食事の前やトイレの後などに石鹸を使った手洗いをすれば大丈夫だと思います」

コントロールできない要素も、感染を責める空気はなくそう

間もなく日本国内で新型コロナ感染者が初めて確認されてから1年が経つ。しかし、いまだに感染者を責めるケースや、感染したことを謝罪するケースが見受けられる。

だが、こうした感染を責める空気はなくしていくべきではないか。

「具合の悪い人が正直に申し出た時、検査が陽性になったと正直に言ったとき、それを責めたらどうなるのか。やっぱり、誰にも言わなくなってしまいますよね」

「こうしたことを言いづらくなると、二次感染をはじめ様々な影響が生じます。そういったことが起きないためにも責めたり、謝罪を求める空気はなくしたほうがいい」

「新型コロナの場合、重症化するのは男性の方が女性よりも多い。これは生物学的な違いであり、選べません。感染そのものではなく過剰な免疫反応で重症化する人もいますが、それも選べない。持病を持つ人ほど重症化しやすいですが、どの基礎疾患を、いつ持つかも選べません。こうしたコントロールできない要素もあるのも事実です。だから、誰かを裁くことなんてできませんよね」

新型コロナに限らず、誰もがいつ、どのような病気になるかはわからない。体調を崩すこと自体を責めるような空気も変えていく必要があると坂本さんは合わせて言及する。

「病気にはある程度は予防可能なものもあります。ですが、100%自分の努力だけで防げるものではありません。人間誰しも病気になることはある。そして、命を終えるまでにほとんどの人が病院を利用します。そのタイミングが、いつ来るのかの違いでしかありません」

また、誰かと外に飲みに行きたい、何かを食べに行きたいという欲求も自然なことであると理解を示す。

「誰しも何かしら欲求を持っていて、それをどのくらい抑えられるかも人によって違っている」

「人と飲みに行かないでも平気な人、人と会わずにいても平気な人もいるでしょう。でも、その人たちにだって抑えがたい別の欲求はあるわけです。みんなどこか不完全な部分を持っているのだから、他の誰かが不完全であると責め、批判することはブーメランとして跳ね返ってきます。それはやらない方が良いのではないでしょうか」

ワクチンは「大きな希望」

2021年もしばらく、新型コロナと付き合い続ける日々が続く。だが、「明るいニュースもある」と坂本さんは語る。

それが、ワクチン接種のニュースだ。

「イギリスやアメリカなどでワクチンの接種が始まっています。今までのところ、専門家の意見や製造元が公開しているデータを見る限り、接種を躊躇すべき明確な理由はなさそうです」

「臨床試験から分かったワクチンの効果は高く、その成分に対するアレルギー反応を起こしたことがある人は接種を控えるよう勧告がありますが、大多数の人にとって重篤な、あるいは長期的な健康被害を心配すべき要素は現段階ではみあたりません」

「海外での様子を注視する必要はありますが、希望のようなものが見えてきているのも事実だと思います。もしも、このままワクチン接種を開始した国々で感染者数や重症者数が減って行けば、大きな希望になると思います」

ワクチン接種が始まっても、個人レベルでの対策は続けていく必要があるのかもしれない。だが、重症者や死亡者が減るのであれば、1つの大きな成果だと坂本さんは強調する。

重症者や死亡者が減れば医療機関への負荷は減り、結果として救える命が救えない事態を避けることにつながる。

こうしたワクチンをめぐる動向を見ながら、「やれることをやり続ける」ことが重要だ。

「過剰な対策をやっている人は、もうやめて良いと思います。買ってきたものを家に持って帰ってきた時に拭く必要はありません。手を洗いすぎで肌が荒れてしまった人も、適度な手洗いで問題ありません。感染防止の鍵は家の外での行動です」

「さきほど例を挙げたような、家の外で感染するリスクが高い場面を避けることができているのであれば、家の中では少し気持ちを落ち着かせ、リラックスして生活しても良いのではないでしょうか」