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実質5万円が今なら「無料」。25歳までのあなたに知ってほしいこと

HPVワクチンのキャッチアップ接種ってするべき?何のためにするの?今からでも効果はあるの?産婦人科医に聞きました。

子宮頸がんを予防することができるHPVワクチン。そのワクチン接種を逃した人のために無料で「キャッチアップ接種」が行われています。

でも、キャッチアップ接種って、今からでも意味あるの?危なくないの?

HPVワクチンや子宮頸がん予防の啓発に取り組む団体「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」の代表理事でもある、産婦人科医の稲葉可奈子先生に話を聞きました。

そもそも「HPVワクチン」「キャッチアップ接種」って?

性行為によって感染するヒトパピロマーウイルス(HPV)が原因で発生する、子宮頸がん。

20〜30代の若い女性も多く発症し、年間約3000人が命を落としています。

そんな子宮頸がんを予防できるのが「HPVワクチン」です。

公費での定期接種の対象年齢は小学校6年生〜高校1年生ですが、2013年頃から少女たちがワクチン接種後に体調不良になったという報道が相次ぎ、積極的な勧奨はストップした時期がありました。

安全性を確認するために8年以上にわたって、対象年齢の女子たちに周知されない時間が続きました。

接種率は非常に低くとどまり、生まれた年によっては1%以下となっています。

そうした状況を受け、厚生労働省は、対象年齢の期間にうち逃した世代(1997年4月2日~2006年4月1日生まれの女性)に向けた「キャッチアップ接種」を2022年4月にスタートしました。

自費でうった場合、3回で約5万円と高額なHPVワクチン。過去に計3回うっていない人は無料でうつことができます。

対象となるのは25歳までの、主に高校生〜大学生世代。今からうつ意味はどれくらいあるのでしょうか?副反応の心配は? 疑問や不安を聞きました。

なぜ「キャッチアップ」がはじまったの?

——なぜキャッチアップ接種が推奨されるようになったのですか。

キャッチアップ接種の対象の年代の方たちが、ちょうど定期接種期間の対象年齢の時に厚生労働省がHPVワクチンを積極的にはおすすめしていませんでした。

自治体から通知が来ずいつのまにか時期を逃していたり、副反応疑いの報道で不安になって躊躇したりして、接種の機会を逃してしまった人たちがたくさんいます。

その年代の方たちに「本来の無料接種の期間は過ぎてしまっているんだけれども、特例として無料でうてるようにします」というのがこのキャッチアップ接種ですね。

積極的勧奨を再開することが決まったのが去年の11月で、本格的に自治体からの通知が始まったのが今年の4月になります。

——HPVワクチンの接種がメディアで危ないと言われたことで、積極的勧奨がされなかったのだと思うのですが、なぜ再開されたのですか。

主に産婦人科のドクターなどの医療関係者のあいだでは、何年も前から世界中の研究でHPVワクチンの安全性、有効性が確認されていることが知られていました。

私たちは、何年も前から、国からもHPVワクチンの接種を勧めてほしいと要望し続けていたんですよ。

ですが、いろんな要因もあり、「HPVワクチンが危ないのではないか」とセンセーショナルな報道がされた2013年以降、HPVワクチンに関する情報はほとんど出なくなりました。

実際にはワクチンの安全性が確認されたというニュースはあったのですが、当時は国が積極的勧奨をしていなかったために、メディアの人たちもどこまで報じていいのかわからないというのが本音だったみたいです。

医療従事者や一部のメディアが、正しい情報や安全かつ有用であるエビデンスを根気強く発信してきた甲斐もあり、数年前までにあったHPVワクチンに対しての悪いイメージが和らいできました。

加えて、厚生労働省が積極的勧奨を再開したことによって、多くのメディアが大々的に報じるようになった印象です。

もうハタチだけど…今からでも大丈夫?

——キャッチアップ接種をする場合、本来の定期接種の対象年齢ではない年齢にワクチンをうつことになると思うのですが、小学校6年生から高校1年生までに接種した人とは効果に違いはあるんでしょうか。

HPVは、主に性交渉で感染するウイルスです。

そのため、初めての性交渉よりも前に接種するのが最も有効です。

また、抗体は年齢が若い方がつきやすいこともあり、キャッチアップ接種世代の方については、なるべく早めに接種した方がいいです。

公費で接種されているHPVワクチンは、2つ、または4つのHPVの型を予防することができるのですが、性交渉の経験があるからといって全ての型に感染している方はまずいません。

なので、性交渉の経験がある方でもワクチンを接種する意義は十分にあります。

——先生の体感として、実際にどのくらいの方がキャッチアップ接種に来てますか。まだまだ少ないなという印象ですか?

明らかに増えてはいますが、まだまだ少ないですね。

キャッチアップ世代の方で、産婦人科に子宮頸がん検診や生理痛などで受診される方は結構います。

ですが、こちらから「HPVワクチンって、もううちましたか?」と聞くと、キャッチアップ接種がはじまったこと、自分たちが対象であること自体を知らない方が結構いらっしゃいます。

不安や疑問はかかりつけの先生に相談して

——ワクチンの接種を受ける前に、気を付けたことがいいことや準備した方がいいことはありますか。

もし、心配なことや不安なことがあるのであれば、必ず接種前に先生にそのことを聞いて、疑問や不安を解消してからうっていただきたいですね。

——ワクチンについての正しい知識の付け方について教えてください。

例えば、私がやっている「みんパピ!」のホームページや、厚生労働省、日本産婦人科学会とか、そういう公的な機関の情報を集めるのが一番間違いないです。

健康系の情報は、ネットで調べると山ほど情報が出てきて、正しいことや間違っていることがたくさん出てくる中で、残念ながら信ぴょう性の低い情報の方が目につきやすいという傾向があります。

とはいえ、やっぱり文章を読むだけだと不安は払拭されにくいと思うので、近しい生身の専門家、かかりつけの先生などに直接聞くのが1番だと思います。

親から反対されたらどうしたらいいの?

——副反応報道のイメージが強く残っている親に「HPVワクチンは危ないからキャッチアップ接種をしないでほしい」と言われた場合、どうすればいいのでしょうか。

もし自分はうった方がいいのではないかと思っているんだけど、親御さんに反対されている場合は、まず保護者の方に、自分なりに得た正確な情報を伝えた方がいいと思います。

ただ、ちゃんと伝えても納得してくれるとは限らないですよね。

その場合は、自分の意志でワクチンを接種したらいいと思います。

予防接種は、16歳以上は親の同意なしにうつことができます。一番大事なのは自分の体。ワクチン接種が必要だと思うのであれば、自分の判断で接種するのも選択肢だと思います。

——その場合、保険証を使ったことでバレてしまうなどはありますか?

予防接種だけであれば、病院は保険証の確認をするだけなんです。万が一のことがあるので、一応「何かあった時のために持ってきてください」と言われます。

親の扶養に入っていたら、ワクチン接種したことがバレるのではないかと思われるかもしれませんが、実際に保険診療が行われることはなく、予防接種だけであれば親にバレることはないです。

——そうなんですね。さまざまな点で不安が和らぎました。ありがとうございました!

キャッチアップ接種に限らず、不安なことや聞きたいことがあったら専門家に相談することが大切です。

気軽に相談して、正しい知識を得てくださいね!