パフォーマーを引退する日が来ても…EXILE流「何歳になってもカッコよくいる」秘訣

    EXILEならびにEXILE THE SECONDでVocal & Performerを務めるEXILE SHOKICHI。グループの中では、作詞・作曲まで担うシンガー・ソングライターの顔も持つ。EXILE THE SECONDは2022年9月に黒木啓司氏が引退し、新たな一歩を踏み出したばかりだ。これまで数多くの先輩を見送ってきたSHOKICHIにEXILE流の寄る年波との付き合い方を聞いた。

    「歳を重ねるのは……怖くないと言ったら嘘になります」。会議室に低い声が響く。EXILE SHOKICHIだ。

    所属するEXILE、EXILE THE SECONDは、昨年9月にメンバーの黒木啓司氏が引退し、5人となった。EXILE自体、これまでもメンバーの引退と加入を繰り返し、今に至る。鍛え上げられた肉体を躍動させ人を魅了する彼らでも、歳を重ねることからは逃げられない。

    だからこそ「怖い」のだというが、SHOKICHIは「かっこよく歳は取れる」と断言する。「周りを見ていたらそう思えるようになった」。EXILE流の寄る年波との付き合い方とは――。

    メンバーの引退は「大きな出来事」だった

    2022年、EXILEとEXILE THE SECOND(以降SECOND)という2つのグループで同じステージに立ってきた黒木氏がパフォーマー並びに芸能界を引退したことは、SHOKICHIにとっても大きな出来事だった。コロナ禍で思うようにライブ活動が行えない中、ようやく回復の兆しが見えたタイミングでもある。

    「啓司さんの引退について知ったのは、SECONDの会議の時だったような気がします。寂しさも驚きもありましたが、啓司さんが踏み出す新しい道を応援しようと全員で一致しました」

    戸惑いの声は上がらなかったのだろうか? SHOKICHIは「なかった」と即答する。

    「たった1回の人生、納得する道を進んだ方がいい。新しい夢に向かって背中を押してあげたい。僕だけじゃなく、みんなそうだと思って啓司さんを見送りました」

    メンバーの門出を祝う案として出たのがライブツアー『Twilight Cinema』だ。黒木の旅立ちと、新しいSECONDの幕開けを祝うことをコンセプトに据えた。夜明け前の準備の時。こういう意味合いを込めた。

    EXILEの中で、作詞作曲も手がけるクリエイターでもあるSHOKICHIは、ツアーに合わせて同タイトルの楽曲も制作することにした。新曲制作を思いついたのは2022年の末。ツアーのスケジュールは3カ月先で決まっていた。

    「大きな経験をしたら、それをエンタテインメントにして、聴いてくれる人へ何かのきっかけを作るのが僕らの仕事。とはいえ、すぐ作らないと間に合わないタイミングですよね。急ピッチで仕上げました」

    「仲間との別れ、恋人との別れ、若さとの別れ。人生にはいろいろな別れがあって当然失うものもある。でも別れは、次の出会いの準備だと捉えることもできる。別れを前向きに受け止められないか……という気持ちで歌詞を書かせていただきました」

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    一貫する「EXILEのイズム」

    今でこそ、EXILEやEXILE THE SECONDの中心メンバーとして活躍しているSHOKICHIだが、加入当時は焦りしかなかった。一流のパフォーマーがひしめくグループで存在意義を見出すのは難しい。過去のインタビューでは「俺じゃなく違う人が入ってもたぶんEXILEは何も変わらない」と語るほど悩んだ。

    高校生の時からバンド活動をしていたため作曲経験はあったものの、デビュー後は創作活動からは遠ざかった。「このままじゃダメだ」と自分を鼓舞し、多忙なスケジュールをこなしながら本格的に作曲について独学で学んだという。自分ができることをやる。なんとか見つけたのが楽曲制作だったのだ。

    機材を揃え、仲間を集めてなんとか完成させた音源をHIROとATSUSHIに渡し「自分に音楽を作らせてください」とプレゼン。企画書を握りしめて進むべき道を掴んだ。

    「あの時は、このままだと自分の現状は変わらないと思っていたので、何かしら1歩踏み出すしかないと思ってました。却下されても『また次回提案しよう』と思っていたぐらい。ネバーギブアップ精神はありました」

    「もともとはアンダーグラウンドなサウンドばかり聴いていた10代を過ごしてきたので、そこからいろいろな音楽を吸収しました。毎日時間見つけて……仕事から帰った後も音楽漬けでした。ピアノも大人になってから独学で弾けるようになりました」

    EXILE、EXILE THE SECONDをはじめ、さまざまなグループの楽曲を制作する。楽曲制作の中で大きな影響を受けたのは、EXILE ATSUSHIだ。「EXILEのイズムを1番多く習ったのがATSUSHIさんですね」。LDHグループの音楽には、ある考えが共通しているのだという。

    「あまり上手く表現できないのですが『やらせていただいている』という意識です。誰かがいてくれての自分。ごはん屋さんに行っても『お邪魔させてもらってます』、タクシーに乗っても『乗らさせてもらってます』。こういう感覚が表現の根底にあるのかな」

    トレーニングも仕事も、音楽の勉強もすべては「やらせていただいている」に結びつく。「だから頑張ろう」というポジティブな気持ちに変換できるのだ。

    カッコよく歳を重ねるには

    SHOKICHIはこれまでもEXILEのメンバーとして、先輩たちを見送ってきた。2013年に現LDHの会長を務めるリーダーのHIRO、2015年にはMATSU、ÜSA、MAKIDAIがパフォーマーを引退した。SHOKICHI自身もオーディションに合格してから15年が経ち、今ではステージに立ちながら若手グループの育成にも携わる。若さとの「別れ」を感じることはあるのだろうか。

    「SECONDも気がつけばEXILE TRIBEの中で最年長のグループになりました。自分自身、体力が落ちてきたと感じることはあります。2日酔いが長引くとか(笑)」

    「一方でいろいろなことを乗り越えていくうちに儚さとか哀愁が表現に加わってきたと思ってます。言ってしまえば武器になる。そのために歳の重ね方は意識していますね」

    「特に僕の場合は、知識量がある程度ミュージカリティーを担保してくるものだと思っているので、そこの努力は怠らないようにしています」

    SHOKICHIは存在意義を求めた20代の時と同じように今なお音楽のインプットはストイックに続けている。最近は、後輩たちの楽曲まで手掛けることが増えてきたため、さらなる守備範囲の広さが必要だからだ。

    「メロディーもコードのつなぎ方も時代とともに変化しますし、グループの人数によっても“良いメロディー”は全然違います。各々のメンバーの見せ場をしっかり作ってメリハリを出す工夫が必要だし、メロディーとラップとの繋ぎ方も重視しなくてはいけない」

    「国内外のいろいろなアーティストのライブにも行きますし、YouTubeでも研究しています。メロディーラインの構成と振り分けは、iPhoneのメモにびっしり書き込んでます」

    「ハウスもHIPHOPもEDMも……テクノもレゲエも J-PopもK-Popも好き。オタク気質な割に気が多いんだと思います。プライベートでは最近THA BLUE HERBさんのライブに1人で行きましたね(笑)」

    さまざまな若手が出てくる中で、これまでとは異なる焦燥感も生まれそうだ。かつては「追いつかなくては」と思っていた感情が「抜かれるかもしれない」に変わってしまうことはよくある。

    「そういう感情も大事だと思うんですよ。人生について深く考えるきっかけになるから。劣等感を覚えるのは、自分にとって足りないことがわかる瞬間でもある。だったらそこを努力していけばいいし、僕自身ずっとそうやってきた。今後変わることなく同じだと思います」

    「やっぱり夢に向かってる姿ってかっこいいじゃないですか。自分の周りにいた先輩方はみんな何歳になっても夢を持って次のステージに踏み出していったので」

    LDHの原典ともいえる『LDH our promise』にて、HIROは自身のキャリアについて「踊らなくなっても、何歳になったとしても、カッコよくあるにはどうしたらいいか」を考えてきたと語っている。

    いまも、ステージには立たないけれど、夢を全力で追いかけていて、迫力のある毎日です。いつだって選択肢はたくさんあるし、実現しきれないほど夢はたくさんあります。仮にパフォーマーを辞めても、“別のジャンルの新人”として新しい挑戦を始めて、イキイキできる場所がある。僕だけじゃなくて、みんながそう。それがLDHだと思っています。誰もが、夢の選択肢、つまり「燃えるポイント」をいつも、いくつも、持っておく。

    ATSUSHIやHIROだけではなく、SHOKICHIにとって影響を与えてきたメンバーは多い。

    「別れがある度に、人生は一回だけなんだと噛みしめることができる。じゃあ自分は何を夢見て、どうやって叶えていこうかと考えられる。何歳になっても自分の将来にワクワクすることって大事です」