結局、なんで戦争してるの? ロシアによる「ウクライナ侵攻」に関する13の質問【2022年回顧】

    ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって3週間あまり。読者のみなさんからBuzzFeed NewsのInstagramに寄せられた13の質問にお答えします。【2022年回顧】

    2022年にBuzzFeed Newsで反響の大きかった記事をご紹介しています(初出:3月18日=記事は当時の状況に基づいています)。


    ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった。


    なぜ戦争は始まったのか。両国の協議はどうなっているのか。日本や世界への影響は?

    読者のみなさんからBuzzFeed NewsのInstagramに寄せられた13の質問にお答えします。

    1. なんだかんだ言って、何で戦争してるのかわかってない…。どうしてロシアとウクライナは戦争をしているの?

    ウクライナとロシアは1991年まで、ソビエト連邦という同じ国でした。

    ウクライナ独立派がロシア・ソビエト軍との戦いに敗れて併合された経緯もあり、旧ソ連が崩壊した冷戦後の1991年に独立。

    2014年には親ロシアだった政権が市民のデモで倒れ、アメリカや西欧に近づくことに路線を切り替えたのです。

    一方でロシアのプーチン政権は「ウクライナはロシアの弟分。欧米に接近するのは裏切りだ」と思っていました。実力で方針を変えさせようと軍隊を送ったのです。

    2. どのくらいの規模で戦いが起こってるのか知りたいです!(ウクライナの首都の)キエフだけで起こっているのですか?

    ロシア軍は、ウクライナ東方と北方から侵入し、幾手にも分かれながら主要都市ハリコフや港湾のあるマリウポリなどを包囲。

    キエフの包囲も強めながら、欧米の支援ルートとなっている西部にも迫っています。

    ウクライナの国土のかなり広い範囲が、戦火に包まれているといっていいでしょう。日本の防衛省が、15日現在の状況を図にまとめています。

    3. ウクライナ政府の国民への対応(避難勧告や支援などの状況)

    ウクライナ政府は総動員令を発令し、兵士や支援要員として防衛に従事させるため、18〜60歳の男性の出国を禁じました。

    このため国外に避難しているのは、女性と子ども、高齢者が中心です。

    多くの人々が出国禁止となった父や夫、息子、兄弟をウクライナに残して、家族は引き裂かれています。父子家庭のため、たった1人で出国した子どももいます。

    事態が長期化すれば、心理面でも経済面でも、避難した人々に深刻な影響が出そうです。

    4. ロシアはウクライナを侵略しつつ、避難経路を作っているのが、矛盾していてよくわかりません。

    ロシアが「人道回廊」として設定した避難経路の行き先の多くは、ロシア。「敵地」に逃げるウクライナ人がいるのか。人道を装うポーズというほうが正しいでしょう。

    一方、ロシア軍が外国人留学生などの避難を許した地域もあります。ウクライナには中国やインドなどロシアと関係の良い国の出身者も多いため、こうした人々の避難には配慮する一方、ウクライナ人を保護する意思は乏しいのが実態と言えます。

    ロシアは同じことを、軍事介入したシリア内戦で行いました。市民は「敵地」に降伏するか爆撃されるかという、究極の選択を迫られました。

    より詳しい記事はこちらから↓

    ウクライナの「人道回廊」とは何か? 市民被害を防ぐのか。なぜ機能しないのか。ロシア・プーチンの思惑は。


    5. 国連が止められないの?このままロシアが暴走できれば、もっと戦争が起きてしまうの?

    国連安全保障理事会では、米・露・中・英・仏の5カ国が常任理事国。このうち1カ国でも反対すれば決議は否決されるという特権を持っています。

    ロシアが絡む戦争ではロシアが拒否権を発動するため、国連は実効力を発揮できないのです。今回もロシアが即時撤退を求める決議案を拒否し、葬りました。

    逆に2003年にアメリカが始めたイラク戦争では、国連と国際社会はアメリカを止められませんでした。日本政府は戦争を支持してしまいました。

    6. 核戦争に発展する可能性は?

    ウクライナのゼレンスキー大統領は、北大西洋条約機構(NATO)やアメリカの介入強化を求めていますが、NATOやアメリカはいまのところ、直接の介入を避けています。

    NATOは米軍中心の対ロシア軍事同盟で、米軍の核兵器がドイツやイタリアなどに配備されています。核兵器を持つロシア軍とNATO軍、米軍が直接闘えば、核戦争にエスカレートする可能性があるからです。

    各国は核戦争を絶対に避けることを原則に、外交や経済制裁、部分的な軍事支援などで、なんとか事態を収めようとしています。

    7. ロシア国内の人々への影響が知りたいです。ロシアに住む友人がいるのですが、心配です。

    ウクライナ軍は自国に攻め込んだロシア軍を食い止めるのに精一杯で、ロシア領まで反撃する余力はありません。よって、ロシア国内に戦乱が広がる可能性はほとんどありません。

    しかし、国際的な経済制裁でクレジットカードが使えなくなり、通貨ルーブルも暴落。Appleやマクドナルド、ユニクロなどもロシアでの営業を中止しており、人々の生活に影響が出ることは避けられません。

    8. ロシア人がプーチンに反対できない理由は、何が考えられるでしょうか?

    ロシアでは言論の自由が大幅に制限されています。テレビや新聞は政府がコントロールしていて、政府の意向に反した報道をすれば犯罪として扱われます。

    TwitterやFacebookなども遮断し、国外から不都合な情報が入ることも防いでいます。それでもモスクワなどで反戦デモが起きていますが、声を上げると即座に逮捕される状況です。

    プーチン大統領は約20年かけて、こうした強権体制を作り上げてきたのです。

    9. 話し合いはどうなったの?

    ロシアとウクライナの協議は続いています。ロシアはウクライナ軍の解体とゼレンスキー政権の退陣、すでに占領しているクリミア半島のロシア領有承認などを要求してきました。ロシア軍の撤退を求めるウクライナ側とは折り合っていません。

    しかし、協議を続けること自体が、ロシア軍が攻勢をさらに激しくすることを食い止めている面もあります。

    協議で時間を稼ぎ、その間にさまざまな努力で少しでも事態を好転させるのが、ウクライナ政府や関係各国の狙いでもあります。

    10. 世界中、様々な場所で戦争は起きています。なぜ今回ばかりが過熱報道されているのですか?

    シリアやイエメンなどで起きている内戦(国内の争い)と異なるのは、ロシアの行動が、他国への一方的な侵略だという点です。

    国際社会には「他国を武力で侵略してはならない」という大原則があります。ロシアはこれを無視しました。

    もし、ウクライナがこのまま占領されることになれば、ロシアの周辺国は安心してはいられなくなります。

    日本もロシアと国境を接する国の一つです。だからこそ、ロシアの暴挙をどう食い止めるかが世界的な課題になっているのです。

    11. ウクライナ侵攻が続くと、日本にどんな影響がありそうですか?

    経済面では、すでに石油や天然ガスなどの高騰で、じわじわと私たちの暮らしに影響が出始めています。ロシア上空の飛行を避けるため、欧州行きの航空便の飛行時間も長くなるかもしれません。

    そして、日本はウクライナと同様に、ロシアの隣国です。日本政府が「不法占拠」とする北方領土問題も抱えています。

    もしロシアがすんなりとウクライナを征服し、「強い者がやりたい放題」という世界に変われば、日本はどうなるでしょうか。

    プーチン政権に対し、あらゆる方法で「国際社会の原則に立ち返れ」と求め続ける必要があります。

    12. 日本政府のウクライナ侵攻に対する動きが知りたいです。

    日本政府はロシアの行動を強く批判し、プーチン政権に対する経済制裁を行っています。

    ウクライナ政府に計2億ドルの支援を表明し、ヘルメットや防弾チョッキ、非常食などの提供をする予定です。

    ウクライナから周辺国に逃れた人々を支援するため、国連機関や赤十字国際委員会などへの資金提供も始めています。また、ウクライナからの避難民受け入れも表明しました。

    13. ウクライナを助けたいです。私たち日本人は、今何をすればウクライナのためになりますか?

    ウクライナから逃れる人の数は300万人を超えました。

    国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や世界食糧計画(WFP)などさまざまな国連機関や、国際医療団体「国境なき医師団(MSF)」など国内外のNGOがそれぞれ、募金を募っています。

    募金に協力することは、苦しむ人々を直接、支援することにつながります。住居、医療、教育などみなさんが関心が深い分野の団体に少しでも募金することは、大きな意味があると思います。