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どうして開票が終わってないのに「当選確実」が出るの? 選挙報道の裏側とは

報道各社が伝える「当選確実」。どうやって判定しているのでしょうか。

選挙報道でつきものなのは、午後8時に有権者の投票が締め切られたと同時に報道各社が速報する「当選確実」です。10月31日に開票された総選挙でも、報道各社が午後8時、一斉に「当選確実」を報じました。

実際にはまだ開票されていないのに、どうやって判断しているのでしょうか。かつて新聞社に勤務し「当選確実」を打つために取材を続けてきた記者が解説します。

1)事前に基礎データを取材

選挙取材の基本の一つは、各候補者をどんな組織が支援しているか把握することです。

選挙戦になると、候補者の後援会だけでなく、地域の有力企業や労働組合、業界団体など、さまざまな組織が候補者や政党に推薦や支持を表明し、組織のメンバーに投票を呼びかけます。組織の力は、その陣営の「基礎力」とも言えます。

一方、特定の組織に頼らず、高い知名度などを活かして選挙を進める候補者もいます。

記者はこうした各候補者の特徴を事前に各方面から取材し、データとして蓄積しています。

2)ランダム番号への電話などで情勢調査

各報道機関は投票日前、有権者にどの候補者と政党に尋ねる「情勢調査」を行います。いくつかの調査方法がありますが、主流なのは、コンピューターでランダムに発生させた固定電話と携帯電話の電話番号にかける方式です。

3)現場での取材を続ける

記者は選挙期間中、各陣営の選挙活動の取材を続けています。街頭演説などを訪れて有権者の集まり具合や熱気を見つつ、支持組織や後援会、そして無党派層の動向をできる限り把握します。

4)開票所で有権者に「出口調査」

投票所の外に腕章などで身分を示した調査員を配置し、投票を終えた有権者に声をかけ、投票先を口頭で尋ねたり、差し出した質問票に書いてもらったりします。タブレットで入力してもらうこともあります。

5)開票日午後8時、当確を一斉にドン

投票日の夕方から夜にかけ、出口調査の数値がまとまり次第、各選挙区の当選判定の担当記者に届きます。

事前の取材で把握した状況や、情勢調査の数字などを比べながら、出口調査で後続の候補者に一定以上の差を付けて1位となった候補者を、「当選確実」と判定します。

もし間違えたら、一度打った「当選確実」を外す「当外し」と呼ばれる事態となり、視聴者や読者、そして各陣営に多大な迷惑をかけることになります。判定する記者は大きなプレッシャーを感じながら、慎重に情勢を判定します。

そして、有権者の動向に影響を与えないよう、午後8時までは当確を判定しても社外に公表することはありません。

6)当選判定作業は更に続く

午後8時の段階で「当確」を打てない選挙区では、開票所に派遣した記者から常時、最新の開票状況を入れてもらいながら、各候補の得票率や、まだ開票されていない、いわゆる「残票」の数などを勘案。「これで確実」となれば「当確」を打ちます。

開票所の記者は、双眼鏡などを手に開票の様子を見ています。