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車椅子の彼女は、なぜ夜の歌舞伎町に救われたのか

物心がつく前からの車椅子生活。障がいがコンプレックスで、自分を抑えつけた。そんな彼女を救ったのは、夜の歌舞伎町。偏見がない人と出会ったことで、恋愛にも積極的に動き出した。

車椅子だからって、最初からできないって言われるのがすごい嫌でーー。タレントの内藤沙月さんは生まれつき、骨形成不全症を患い、物心がつく前から車椅子生活を送っている。

障がいがコンプレックスで、人間関係を絶ちたいとまで思い詰めた。そんな彼女を救ったのは、夜の歌舞伎町で触れた、まっすぐな優しさだった。

積極的に出会い、充実している毎日

「恋愛した方が毎日楽しいですね」

内藤さんはマッチングアプリを活用して、さまざまな人と出会う。

「何十人と会って、3桁近くぐらいの人とLINEを交換しました。5、6年ぐらい、定期的に会ってる人もいます。続く人は続くんですけどね」

「一人だけお付き合いして。そんな長く続かなかったんですけど」

人の集まる場所に、積極的に訪れる。その話からは、車椅子で生活をしていることを全く感じさせない。

「クラブもいくし、『相席屋』も行きます。『どっちの人がタイプ?』とか、『LINE交換した?』とか友達と言い合ったりして」

新宿で移動中に、見知らぬ男性から突然、声をかけられたこともあった。

「すごく元気そうな子に見えたからだって。なんで彼とLINEを交換しなかっただろうって、ちょっと後悔してる」

多くの人と出会い、恋愛もする「今」が自分らしいと語る一方で、自身のことを「本当にしゃべれない人」だったと明かす。障がいが理由で、周囲に対して心を閉ざしていた時期があった。

「自分らしさ」をなくした高校時代と歌舞伎町

難病情報センターによると、骨形成不全症は、骨がもろく弱い先天性の病気だ。2万人に1人の割合で発症する難病で、骨折や骨の変形をきたす。

小学5年生から高校卒業まで、特別支援学校に通った。しかし、特別支援学校に入学する以前からの、唯一の友達の紹介でしか、友達の輪が広がらなかった。

勉強でいい点数を取れても、「特別支援学校だから。もう頑張っても遅い」と親に相手にされないこともあった。「認めてくれないのは、特別支援学校に入っちゃったからなのかな」と自分を責めた。

「周囲の目線がすごく嫌で、人と関わりたくないって思ってました。高校生のときは、いろんな人をにらんで、笑ったことがないぐらい。周囲からも、怒ってる?とか体調悪いの?って普通に言われてました。怒ってなかったんですけど」

「高校3年生のとき、障がいが原因で親ともめていたことも積み重なって、自暴自棄になりました。夜中に荷物を全部まとめて、家出しました。もう、その家には帰っていません」

高校を卒業したあと、「医療事務に携わりたい」と、医療の専門学校に入学した。ここで出会った友達たちによって、内藤さんは本来の社交的な性格を取り戻した。

「人と関わりたいと思ったのは、偏見のない人もいるとわかってからです。専門学校の友達と一緒に遊んだ歌舞伎町の存在が大きいです」

友達と一緒に歌舞伎町に通った。そして、歌舞伎町のキャバクラで働いてもみた。

「夜の街って、みんな結構優しいんですよ。車椅子だから偏見持たれるかなって思ったんですけど。普段は、宇宙人を見たみたいな感じの目をされることもあるのに」

偏見のない、まっすぐな目線があることを知った。そこで内藤さんは、歌舞伎町でどれだけの人が無視せず応えてくれるか、100人に声をかけてみたという。

「男の子にも、女の子にも、ヤッホイみたいな感じで声をかけてみたんです。そしたら99人が応えてくれて。女の子とは握手もしました」

活発で明るい姿を見せる一方で、恋愛を始めるときの不安は、いまだに消えることはない。

「私は、病気で車椅子です。付き合ってて、外を歩いているとき、彼が変な目でみられないかとか、迷惑かなって思っていました」

「彼の両親が付き合うのに賛成してくれるかなっていう不安もありました。今もちょっとあります。でも恋愛したいから、そういうことを全て理解してくれる人に出会えたらいいなって」

この病気だから伝えたい、"関わり合い"

昨年からタレント事務所に所属し、今年からYouTubeや17Liveも始めた。「元気もらえてます」と渋谷で声をかけられて、「一人でも多くそういう人がいればいいなって思ってます」と語る。

「車椅子イコール暗くて引きこもりっていう人が多いイメージがあったけど、沙月と会って、こんな元気な人がいるんだとわかった」

こう言われ嬉しかったと話す。

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障がいに思い悩み、周囲の人と距離を置いていた。しかし、自分らしい明るさを取り戻した今だからこそ、できることを発信する。

「前は、この病気で生まれたことがすごく嫌でした。でも、一生治らないし、付き合っていかないといけません。だから、こういう病気になったから発信していこうって思えるようになりました」

「障がいを持った人と関わったことが一回もないと、どう接していいかわからないって言われることがあります。だから、障がいを持った人と、持ってない人が関わる機会がどんどん増えればいいなって。関わってからわかることもあるので」

恋愛も仕事も前向きに取り組み続ける内藤さん。次の挑戦は歌とダンスだ。彼女がセンターを務める、ダイバーシティ・エンターテインメント・ユニット「CoCo d.e.7!」(ココディーイーセブン)が11月30日に東京都内で初ステージを開催する。聴覚障がいや視覚障がいなど、それぞれ違った障がいを持ったメンバーでパフォーマンスをする。

内藤さんは、「車椅子だから」では決して諦めない。

「まずはやらせて。試してみないとわからないから」


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昨日も、きょうも、これからも。ずっと付き合う「からだ」のことだから、みんなで悩みを分け合えたら、毎日がもっと楽しくなるかもしれない。

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