子ども向けユーチューブにあふれる自殺や虐待をテーマにしたアニメ

    YouTubeはBuzzFeed Newsに宛てた声明の中で、「絶えずシステムを改善していますが、まだやるべきことはあると認識しています」と述べている。

    フロリダ州ゲインズビルの小児科医で、母親でもあるフリー・ヘス博士は最近、「YouTube Kids」アプリで、自殺や学校での銃撃事件、女性への暴力を題材にしたコンテンツをいくつも発見し、YouTubeに報告した。

    その後、ヘスが報告した約10本の動画は削除されたが、ヘスはBuzzFeed Newsの取材に対し、このような動画がまだ数多く存在すると述べ、子供たちが見てしまうのではないかと不安を口にした。

    「短時間で簡単に約10本(の動画)が見つかりましたが、私はそこでやめました。それ以上なかったからではなく、早くブログに投稿したかったからです」。ヘスは動画のスクリーンショットを撮り、2月22日、自身のブログ「PediMom.com」で共有した。

    ヘスが発見した動画の一つに、「Minecraft」のグラフィックからインスピレーションを得た「Monster School: SLENDERMAN HORROR GAME」というアニメーションがある。登場人物が学校で、机に隠れている生徒たちを撃つという内容だ。銃撃後、犯人は笑い声を上げる。

    このアニメシリーズを公開しているのは、「TellBite」というアカウント。このアカウントのYouTubeチャンネルは16万7000人以上の登録者を獲得しており、動画はいずれも数千単位で再生されている。

    (注:このアカウントを含むいくつかのアカウントはもともと、投稿可能な年齢を13歳以上に制限しているYouTubeでつくられたものだ。YouTube KidsアプリはYouTubeのコンテンツを提供しているが、「子供たちが安全、簡単にオンライン動画の世界を探索できるよう」子供向けの動画をキュレートしている)

    「Toasty Qween」が制作し、YouTubeに投稿した別の動画では、若い女性のキャラクターがナイフで自殺を図り、父親が止めに入る。この場面の前に、父親が死んだことが明かされている。

    女性の台詞として、「これで私の痛みが終わる」という吹き出しが表示される。BGMは、スウェディッシュ・ハウス・マフィアの「Don’t You Worry Child」だ。

    YouTubeで公開されているオリジナルの動画はすでに、再生回数が100万回を超えている。

    YouTube Kidsではほかにも、自殺願望や、自殺の実行を題材にしたアニメ動画が公開されている。例えば、「Doki! Doki! Rainclouds New End!!!」という動画では、主人公が自殺のナレーションを行い、「なぜ世間は私を死なせてくれないのか?」と問いかける。

    この動画では、別の人物が自殺の「直前」に現れ、主人公を説得する。

    この人物の登場に対する反応は、「なぜ彼は、首をつらせてくれなかったのだろう?」だ。

    これらの動画は、もともと子供向けにはつくられていないのかもしれない。それでも、有害で危険な人間模様を描き出していることに変わりはなく、ヘスはこのようなアニメ動画をほかにもいくつか見つけたと話している。

    実際、ヘスはBuzzFeed Newsとやり取りしている間に、「Rika Xox」というユーザーが投稿したアニメ動画「Smoke in Mirrors」を発見した。登場人物が「椅子に座っている少女を刺す」という内容だ。ヘスは、その場面のスクリーンショットを提供してくれた。

    最初に発見した約10本の動画と同様、ヘスはすぐYouTubeに報告した。現在、対応と削除を待っているところだ。

    YouTubeはBuzzFeed Newsに宛てた声明の中で、「フィードバックを真剣に受け止め、YouTube Kidsではファミリー向けの動画だけを提供」できるよう取り組んでいると述べた。

    「私たちは問題あるコンテンツへの注意喚起に感謝しており、誰でも報告できる仕組みをつくっています。報告された動画は、24時間対応、年中無休で人による確認を行い、アプリにふさわしくない動画はすべて削除しています」と広報担当者は述べている。

    さらに、「まだやるべきことはあります」と認めた上で、「絶えずシステムを改善しています」と述べた。

    YouTubeは2月、ビデオゲーム「Splatoon(スプラトゥーン)」風の子供向け人気アニメ動画を削除したと明かした。荒らし行為によって別の動画が挿入されているのが発見されたためだ。それは、子供たちに自傷行為を促す元YouTubeパーソナリティーの動画だった。

    この動画が削除される前、ヘスをはじめとする親たちが何度も報告を行っていた。ヘスはそうした経験から、YouTubeは問題を真剣に受け止めておらず、対応が不十分だと考えている。子供たちがアクセスする前にコンテンツを検閲する必要があるにもかかわらずだ。

    「私は彼らに対し、子供たちに降りかかる危険を認識し、親たちの懸念を真剣に受け止めてほしいと思っています」

    いじめや自殺など子どもたちの悩みを、相談できる窓口がある。

    日本では、24時間子供SOSダイヤル(電話:0120-0-78310)、チャイルドライン(電話:0120-99-7777)がある。

    米国にはNational Suicide Prevention Lifeline (1-800-273-8255)がある。その他の支援に関する情報は befrienders.org.


    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:米井香織、編集:BuzzFeed Japan