海賊版サイト対策「ブロッキング意見まとまらず」を報告

    中村伊知哉氏、村井純氏の共同座長が「座長メモ」として報告した。

    専門家などがつくる検討会議で結論を出せなかった、漫画などの海賊版サイトへの対策を検討した会議。

    各省庁の担当者や有識者がこの問題を協議する、政府の知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会が10月30日、コンテンツ分野の第1回会合を開いた。

    総務省や文化庁、経産省、警察庁などの担当者や、カドカワ代表取締役の川上量生氏、弁護士の福井健策氏、漫画家の竹宮恵子氏らが集まった。

    「ブロッキング法制度整備はまとまらなかった」共同座長が検討会議を報告

    知財戦略本部は今年6月から、専門家や出版社幹部などを集めて海賊版サイトへの対策を検討する「海賊版対策検討会議」を始めた。

    検討会議は今月15日に最終の会合を開いたが、サイトブロッキングの法制化を巡る委員の意見はまとまらず、とりまとめできないまま散会という異例の事態で終わっていた。

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    この日、開かれた知財戦略本部のコンテンツ分野会合では、検討会議共同座長の中村伊知哉氏と村井純氏が、検討会議の状況を報告した。

    中村氏は「今後進展していく情報化社会の中で、知財とITが同居する領域をどう広げていくのかという問いだった」と述べた。

    その上で議論の結果を「座長メモ」としてまとめ、報告をした。以下の5点が、そのポイントだ。

    1. 海賊版サイトに対して緊急に対応できるようにするため、著作権教育・啓発、出版・通信業界における環境整備、海賊版サイトに対する広告出稿の自主的な抑制、フィルタリングの強化等を民間主導で行い、関係省庁が支援する。
    2. リーチサイト規制の法制化や、著作権を侵害する書籍ダウンロードの違法化を検討する。
    3. 漫画とアニメの海賊版サイトの課題を迅速に解決するため、本検討会議で議論された内容について、継続・発展的な議論ができる適切な環境を引き続き整備する
    4. 以上の措置を進め、その効果を検証すべきだ
    5. ブロッキングに関する法制度整備については、意見がまとまらなかった


    村井座長も「法制化するところまでの結論は至っていない」とした。

    川上氏などから反対派への批判も

    検討会議の最終回では、ブロッキング反対派の森亮二弁護士ら9人の委員が連名で、「ブロッキングの法制化を見送った上で、民間の協力においてブロッキングを除く対策を総合的に推進するべきだ」との意見書を提出していた。

    森弁護士は「中間報告としてまとめた時点で、サイトブロッキング法制化の動きが進む」とし、両論併記の報告書作成そのものにも反対した。

    この日の会合で川上量生委員(カドカワ代表取締役)は、反対派が提出した資料を「すべて間違っており、すべて逆のことが書かれていた」と話した。

    その上で「結果から議論をする人たちだった」「残念ながら事実に基づいた議論がされなかった」と反対派を批判した。

    瀬尾太一委員(日本写真著作権協会常務理事)も「まとまらなかったことは結論として受け止めるべき」とした上で、「報告書も出さないというのは、国の会議としてあり得ない」と述べた。

    反対派の意見も考えて議論を

    コンテンツ分野会合で今後も海賊版サイトについて議論されるかは未定で、海賊版対策の検討会議が再開される予定もない。

    村井座長は「(検討会議で)9名の委員が反対の意見書を出したが、(その、メンバーは)ここ(コンテンツ分野会合)には、1人もいない。意見書は資料にも入っていないが、意見として提出された内容である。気をつけて議論してほしい」と話した。