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海賊版サイト対策まとまらず 「漫画村」運営者特定もブロッキングの意見残る

「意見まとまらず」異例の事態で終わった検討会。

「意見まとまらず」異例の事態で散会

Takumi Harimaya / BuzzFeed

「漫画村」など海賊版サイトへの対策を検討する政府の知的財産戦略本部は10月15日、「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」第9回会合を開催した。

議論は紛糾し、終了予定時間を約1時間30分を超えたが、サイトブロッキングの法制化を巡り意見がわかれ、この日の会合で出すはずだった「中間まとめ」を、まとめられないまま散会する異例の事態となった。

議論のきっかけは半年前に戻る

知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議の合同会議であいさつする安倍晋三首相(4月13日撮影)
時事通信

知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議の合同会議であいさつする安倍晋三首相(4月13日撮影)

今回の検討会に至った経緯を振り返る。

政府は4月13日の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議(本部長・安倍晋三首相)で、海賊版サイトに対する緊急対策を決定した。

民間事業者(プロバイダー)が自主的な取り組みとしてサイトへのアクセスを遮断する「サイトブロッキング」ができるよう、制度を検討していく。

ブロッキングに対しては法的な根拠がないとの批判も上がったが、政府は法制度の整備ができるまで、刑法の「緊急避難」を適応すれば、憲法違反には当たらないと主張していた。

6月22日、有識者を交えた政府の知的財産戦略本部「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」の第1回が開催。さまざまな業界の関係者を招き、議論を重ねてきた。

事務局から提示された中間まとめ案について議論

村井純共同座長から「意見がまとまらないので、『中間まとめ』ではなく『中間まとまらない』とする報告書を作成するのがよいのでは」と提案があり、残った記者のメモ
Takumi Harimaya / BuzzFeed

村井純共同座長から「意見がまとまらないので、『中間まとめ』ではなく『中間まとまらない』とする報告書を作成するのがよいのでは」と提案があり、残った記者のメモ

ブロッキングを巡る賛成派と反対派の対立は以前から続いており、第8回検討会議で意見がまとまらず、今回の“延長戦”に入っていた

ブロッキング反対派の森亮二弁護士ら9人の委員は連名で、「ブロッキングの法制化は見送った上で、民間の協力においてブロッキングを除く対策を総合的に推進するべきである」との意見書を提出。

森弁護士は「中間報告としてまとめた時点で、サイトブロッキング法制化の動きが進む」とし、両論併記の報告書作成にも反対した。

意見はまとまらず、予定していた中間取りまとめを断念。次回会合の予定もなし、今後の協議の見通しが立たないまま終わる異例の事態になった。

6月22日の第1回検討会から10月まで議論された結果、出た結論は「まとまらない」だった。

最後、共同座長の中村伊知哉氏は「次回の会議の予定はないため、実質無期限の延期となるが、形としては議論の場は続くことになります。今日の議論をどのように踏まえるかはこちらで引き取る」と話した。

内閣府同事務局の住田孝之事務局長は、「最初から最後まで異例ずくめの会議でした」とした上で、「目的は海賊版サイトが儲からない仕組みを作ること。政府としては引き続きさまざまな方策を、さまざまな方々との協力の基で進めていきます。これは変わらないことだと思っています」とした。

「ブロッキングを立法する根拠となる立法事実は存在しない」山口弁護士が意見書

名指しされた海賊版サイトのひとつ「漫画村」(4月に閉鎖)
漫画村

名指しされた海賊版サイトのひとつ「漫画村」(4月に閉鎖)

BuzzFeed Newsは10月10日、山口貴士弁護士が漫画海賊版サイト「漫画村」の運営者を特定したと報じた

今回の会議に山口弁護士は意見書を出した。

意見書で山口弁護士は、米国内のCDN(コンテンツ配信ネットワーク)サービスを利用している海賊版サイトについては、ディスカバリー制度を利用することにより、運営者の特定は可能であるとした。

その上で、立法を経ないブロッキングを正当化する緊急避難の補充性の要件は満たされず、ブロッキングを立法する根拠となる立法事実は存在しないと主張した。

また、今回のスキームは汎用性の高い方法であり、ほかの海賊版サイトがクラウドフレア以外の米国内のCDNを利用していても同様に適用できるとした。

前回からの中間まとめ(案)には、以下のように書かれている。

検討会議においては、海賊版サイトにサービスを提供する国外のCDN事業者に対して我が国のプロパイダ責任制御法に基づく発信者情報開示請求を行うことにより海賊版サイトの運営者の特定につながる可能性もあるとの指摘もあった。

有識者を含むインターネット上の権利侵害に対する被害救済に取り組み複数の弁護士から、米国の裁判所を用いたDMCAや匿名訴訟を試みるべきとの意見書も提出されており、こうした方法により海賊版サイトの運営管理者の特定につながる可能性もある

運営者特定もブロッキング意見残る

会場の中央合同庁舎4号館。検討会が終わったとき、外はすっかり暗くなっていた
Takumi Harimaya / BuzzFeed

会場の中央合同庁舎4号館。検討会が終わったとき、外はすっかり暗くなっていた

検討会では、サイト運営者を特定しても「ほかの実効的な手段が存在するということにはならない」とする意見も出た。

弁護士の林いづみ委員も意見書を提出。漫画村運営者が特定されたことについて次のように述べた。

これらが実際のサイト運営者の特定等につながるとすれば歓迎すべきことである。ただし、そのことゆえに、一般論として、他の実効的な手段が存在する(ブロッキング法制化の立法事実がない)、ということになるわけではない点に留意する必要がある。

山口弁護士に異論を投げかけたかたちだ。また、こうも書いている。

そもそもブロッキング法制化は他の様々な海賊版対策で効果が上がらない場合に、それらの既存の海賊版対策を補うものとして検討が始まったものであり、他の海賊版対策での幾つかの事例を解決に近づけることができることが分かったことを以てブロッキング法制化の必要性がなくなったとするのは、論理的に飛躍している。

また、コンテンツ海外流通促進機構の後藤健郎代表理事からは「CDNの有料サービスを使っていたから特定できた事例。無料サービスや、そもそもCDNを使っていなければ今回の例は適用できない。漫画村の例で、ブロッキングの立法事実がないというのはおかしな議論」と指摘した。

BuzzFeed Newsは、今後も「漫画村」など海賊版サイト運営者の情報に関して報道していく。

情報提供、問い合わせなどはTwitter(@takumiharimaya)またはメール(takumi.harimaya@buzzfeed.com)などでご連絡ください。

Takumi Harimayaに連絡する メールアドレス:takumi.harimaya@buzzfeed.com.

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