投票は、憲法が保障する国民の権利です。しかし、海外で暮らす人のための「在外投票制度」に制度の不備や煩雑さが目立つ、と改善を求める声が強まっています。
《飛行機代6万円かけて在外公館投票にいった》《郵便投票が間に合わなかった》ーー。
海外在住者が投票権を行使できるよう、インターネットでの投票の導入を求める人々がオンライン署名を集め、1月31日、2万6千筆を林芳正外相に提出しました。
「皆さん、投票するために6万円、払えますか?これは大きな経済的負担だと思います」ーー。
ドイツに住む、署名発起人の一人のショイマン由美子さんは、オンラインで開かれた会見で、そう問いかけました。
海外から日本人が投票するには、在外選挙人名簿への登録し、大使館や総領事館などで行う「在外公館投票」や「郵便投票」などの方法があります。
「在外公館投票」を選んだとしても、自宅から大使館や領事館が遠い場合は、自腹を切って旅費や宿泊費を払って向かわなければならないのです。
昨年10月の衆議院議員選挙では、「在外公館が遠すぎて、往復3日間かけて投票に行った」というアフリカのザンビア在住者や、「交通費と宿泊費合わせて約2万円かけて在外公館投票に行った」というスペイン在住者の声が寄せられました。
郵便投票でも、限られた日数の中で間に合うように郵送するため、高額な国際郵便代を有権者が負担している現状があります。
コロナ禍の影響で国際郵便に時間がかかったり、大使館での投票が行われなかったりして、泣く泣く投票をあきらめた人も。
ネット投票を導入することで、それらの問題が解決されるとして、署名が立ち上げられました。
ショイマンさんは会見で、こう話しました。
「特に、在外公館から遠い地域に住んでいる方は、相当な覚悟で投票に行かないといけないということだと思います」
「すでに総務省も必要なシステムの構築を進めていて、ネット投票に関する実証実験も2年前に済んでいます。政府は検討段階から前進して、ぜひ具体的な導入に向けて、法整備とシステムの構築に進んでもらいたいです」
署名では、今年の夏に実施される予定の参議院議員選挙で、海外に住む日本人を対象にしたネット投票の実証実験を行うことなどを求めました。
外相「見直しの必要がある」「改善をしていきたい」
署名提出では林外相に、海外在住の日本人の経験や、ネット投票を求める声が伝えられました。
それに対し林外相は、以下のように答えました。
「時代が変化していますので、この制度についても見直しの必要があると考えています。皆様方のご要望をしっかりと踏まえて、改善をしていきたいと思っております」
「これだけ大変な(状況の)中で、海外から投票してくださった2万人の皆様には、心から御礼を申し上げたい。国内では投票率が下がっていると言われている中で、権利を公使して頂いたことに感謝申し上げないといけない」
林外相は、ネット投票をする際に使用されるマイナンバーカード(の付与)や二重投票、投票の秘密保持、セキュリティ対策をどうするかなどが、課題と争点になってくると指摘。
選挙制度自体の担当は総務省とした上で、「我々としてもしっかり、総務省やデジタル庁の後押しをしていければと思っています」と話しました。
署名提出には、デジタル庁から小林デジタル副大臣も出席しました。
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