「承認されたい。だから危ないセックスも受け入れた」
「"仲間"とクラブでアガるためのひと粒だったのに…」
薬物やメンタルヘルス、HIV、依存症…。
それらに悩み、治療などで回復したゲイ男性のリアルな経験談、そして相談先を紹介するウェブサイトがあります。
コロナ禍で直接相談することも難しくなっている中、「あなたが友人や大切な人から相談を受けたら、このサイトを教えてあげてほしい」。そんな思いで作られました。
10月にリニューアルされたウェブサイト、"STAY HEALTHY and be HAPPY"では、薬物、HIV、メンタルヘルス、依存症を経験した、20〜40代のゲイ男性へのインタビューが掲載されています。
出会い、セックス、友人との遊び、孤独など、日常の身近なできごとの中の小さなきっかけで、薬物やギャンブル、アルコールの依存になった5人の当事者の経験談です。
「あなたは一人じゃない」「相談して、治療をすれば抜け出すことができる」ーー。
そんなメッセージをこめて、経験談と相談先がまとめられています。
サイトは2019年、厚生労働省のエイズ対策研究事業の一環として作成され、今年10月に「もっと若者たちに情報を届けたい」と、イラストなども追加し、リニューアルされました。
運営をするのは、HIVと性・健康にまつわる活動に取り組む認定NPO法人「ぷれいす東京」です。
サイト内での相談先一覧では、HIVや様々の依存症など悩みを相談できる、医療機関、行政、NPO、自助グループなどの窓口が紹介されています。
今回のリニューアルで、5つの経験談のイラストを担当したのは、イラストレーターでグラフィックデザイナーのmoriuoさん(@momomoriuo)です。
moriuoさんは、ゲイのカップルを題材にイラストを描いています。
ぷれいす東京代表の生島嗣さんはBuzzFeed Newsに対し、このサイトは「大切な人や友人に相談された時、聞かれた時に、情報提供ができるように」、また、自分が悩んだ時も「『手がかり』を得られるようなリソース集にした」と話します。
生島さんは、あたたかくフレンドリーなタッチのmoriuoさんのイラストによって、依存症などは「『身近にも起こりうること』というメッセージを伝えたかった」と話します。
「依存症のインタビューをたくさん取り上げましたが、身近にあることということを想像できる人はそう多くないと思います」
「moriuoさんのイラストは、ゲイ、バイセクシュアルの人たちにとって『となりにいる人』というイメージだと思います。身近に起こっているけど、表面化しにくいことをイラストの力を借りて伝えています」
「相談する相手がいない」そんな人に届いてほしい
現在、新型コロナウイルスの感染が再び、全国各地で拡大しています。
人と会うことも通常よりは制限されたり、遠慮してしまったりする時期だからこそ、このようなウェブサイトが役立つことが期待されています。
「コロナは人と人のつながりを断絶してしまうこともあります。居場所がない人などは、より引きこもってしまう人が多いです。コロナ禍だからこそ、自分を支える人間関係や相談できる場所が大切になってきていると思います」(生島さん)
一方、調査では、ゲイ男性たちにとって、相談できる相手が限られていることも明らかになっています。
生島さんが携わる、ゲイ・バイセクシュアル男性などの体や心の健康に関する情報を提供するサイト「LASH(Love Life and Sexual Health)」では2016年、厚生労働省のエイズ対策研究としてHIVや薬物、健康などに関する調査を実施しました。
出会い系アプリを通じて6921人が回答したこの調査では、ゲイ・バイセクシュアル男性の健康や心に関する課題が見えてきました。
国民生活基礎調査で調べられた全国平均の10代後半の若者と比べ、ゲイ・バイセクシュアルの10代後半の男性は、「不安や悩みの相談相手」として、家族や上司、先生という選択肢を持つ人が大幅に少なかったのです。
「友人・知人に相談」するという回答は、全国平均と同じくらいありましたが、「相談したいが、誰にも相談できない」という人も24%いました。
背景としては、自身のセクシュアリティを周りにカミングアウトしていないなどの理由が考えられます。
今回リニューアルされた"STAY HEALTHY and be HAPPY"は、そのような人たちに届くようにと、相談先などが多く掲載されています。
調査で見えてきた、取り組むべき課題
LASH調査では、若い世代のゲイ・バイセクシュアル男性が抱える課題も浮き彫りになりました。
調査によると、HIV検査を1回も受けたことがない人は、16〜19歳で80.1%もいました。
20代でも、20〜24歳の56.8%、25〜29歳の51.5%がHIV検査を一回も受けたことがないと回答していました。
生島さんは、世代間でHIV・エイズへの知識に開きがあると感じています。今の20代には、HIV・エイズについてあまり知らない人たちも少なくないそうです。
そのような現状に警鐘を鳴らし、生島さんは「ゲイの男性にとって今でもHIVは重要な健康課題であること、そして治療法があり治ることを、10〜20代の人たちに伝え続けたい」と語ります。
12月1日の「世界エイズデー」に合わせて、今年はオンライントークなど様々なイベントが開かれています。
詳細は「TOKYO AIDS WEEK」のウェブサイトから。