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「この髪が、私です」。自分らしく面接に臨めなかった元就活生が、あなたに伝えたいこと

パンテーンの広告プロジェクト「#PrideHair」では、テレビCMなどで、トランスジェンダーの元就活生の経験談をもとに、自分らしい「就活ヘア」について問いかけています。

「本当は自分らしく髪の毛を切りたかったですけど、いわゆる女性らしくした方がいいんじゃないかっていう風に…。自分がトランスジェンダーであることがバレないように」ーー。

トランスジェンダーで元就活生の2人が「就活ヘア」について語る、テレビCM、Webムービーが公開されている。

LGBTの元就活生の体験談を元に、「自分らしい、就活での髪型って?」と問いかける、P&Gのヘアケアブランド「パンテーン」の広告だ。

黒髪に、画一的な髪型が求められる、日本の就職活動。

就活のノウハウやマナーについての本やウェブサイトには、「女性用」「男性用」と分けられ、「面接官への印象がいい」髪型の例が示されている。

しかし、実際のところは、ジェンダーは多様で、男女の2択だけではない。10代、20代などで、自分のジェンダーについてまだ答えを見つけていない人もいる。

そのような中でこのプロジェクト「#PrideHair」では、「就活を、自分の個性を偽る場ではなく、自分を、自分らしく表現できる場に」として、自分らしい髪型での就活を応援している。

「女性と男性、どちらで就活をしようか、結論が出なかった」

実際に、テレビCM・Webムービーで、自身の就活経験談を語ったトランスジェンダー男性は、こう話している。

「男性として就職活動をしようか、女性として就職活動をしようかと考えた時に、どうしても結論がでなかったので、1年遅らせてからポニーテールにすっぴん、眼鏡で就職活動をしました」

「トランスジェンダーであることを公表すると、内定はもらえないんじゃないかと…」

生まれた時の性別である女性か、本当の自分である男性か…。悩んだ末に1年遅らせて始めた就活では、「トランスジェンダーであることがバレないように」と、履歴書の性別と就活中の見た目に相違がないよう、ポニーテールで臨んだ。

しかし最終的には、面接を受けていた会社にもトランスジェンダーであるということを伝え、会社からは「トランスジェンダーの社員は初めてなので、一緒に頑張っていきたいです。ぜひ入社してください」との内定の言葉をもらったという。

彼は「すごく嬉しかった」と話し、自分らしい髪型、服装で面接に臨む就活生に対し、「あなたは誰かのロールモデルになる」とエールを送っている。

動画では、トランスジェンダー女性は、こう就活を振り返っている。

「就職活動の直前にカミングアウトをしたので、両親には『それは就職活動で不利に働くからやめといた方がいいんじゃないか』と言われることもありました」

「そうだよね、不安だよねと言ってくれる人が、当時いなかった」

半数が「就活で髪型、服装に悩んだ」

同社が9月に、LGBTQ+のいずれかに該当し、過去に就職活動をしたことがある300人(20〜59歳)を対象に実施したインターネット調査では、約6割が「就活で服装に悩んだことがある」と答え、約5割が「髪型に悩んだことがある」と答えていた。

実際に、このキャンペーンには、トランスジェンダーの就活生だけでなく、様々なジェンダー、セクシュアリティの就活生から、声が寄せられた。

就活でまず初めに戸惑ったのは、履歴書等の性別欄。「男」と「女」しかないので、毎回仕方なく「女」に〇をつけました。でもそのとたん自分が消えていく感じがする。ハローワークの面接セミナーでは手の置き方まで、女性らしくするように注意される。些細なことばかりですが、悔しい思いをしていました。【ノンバイナリー・30代・小説家】

就活は「女性=スカート、ヒール」というイメージが非常に強く、スカートには抵抗があってパンツスーツにしたものの、普段履かないヒールを履きました。髪もいつもはショートヘアのことが多く、その方が自分らしいと感じますが、就活の際は伸ばし黒に染めました。(中略)今まだセクシュアリティについては会社の人に伝えてはいませんが、服装や髪型を自分らしくしていて、少しずつではありますが私自身も前へ進んでいる気がしています。【レズビアン・31歳・建設系会社勤務】

広告を通して、就活生に伝えたいこと。

同社はこれまで、学校での髪型についての校則や、就活・内定式での髪型について、問題提起をする広告キャンペーンを展開してきた。

2019年9月の、「#令和の就活ヘアをもっと自由に」では、「内定者が自分らしい髪で内定式に出席すること」に賛同する企業を特設サイトで募り、139社が賛同していた。

一貫して、学校や職場、就職活動などの場での、髪型のルールの必要性について疑問を投げかけ、「自分らしい髪型」とは何かを問いかけている。

今回の、LGBTの就活生に関するキャンペーンでは、どのような思いで作られたのか。

広告を作る上でLGBTの就活生の声を聞いた、P&Gの大倉佳晃・ヘアケア シニアブランドディレクターはBuzzFeed Newsに対し、こう語る。

「改めて、企業が求める"あるべき姿"に自分を当てはめ、自分らしさを表現しにくい状況にある就活生が多くいることを感じました。また、LGBTQ+に対する理解はまだまだ進んでおらず、多くの課題があることも認識しました」

「さらに、LGBTQ+の元就活生との対話を通じて『自分らしい髪型』であることが、前向きな一歩を後押しできるという可能性についても、改めて実感しました」

また、動画広告を通して、このようなメッセージを伝えたいと語った。

「多くの人にとっては、髪は自分を表現する大事な一部。すべての就活生が自分をアピールしたいと願う就活という場面で、自分らしさを表現できるよう、また自分らしい髪で前向きな一歩を踏み出すきっかけになれたらと願っています」

【動画】#PrideHair この髪が私です。「ふたりの元就活生が、いま、伝えたいこと。」

YouTubeでこの動画を見る

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同社では、採用に関わる役員・人事部門・面接官に対してLGBTQ+など、多様性への理解を深める研修を実施しているという。

また、「面接を行う社員のバイアスを少しでも排除するため」、2014年からエントリーシートの写真欄を削除。2019年には性別欄に、男女の選択肢の他に「その他」という項目を設けた。

2021年には生年月日情報も削除することで、年齢によるバイアスも排除する。


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