「暮れから正月になるこの期間をみんなで慎重に過ごしていただくことが、感染拡大の状況を大きく左右すると思います」
家族など人と会う機会が増える年末年始を目前に、政府分科会の尾身茂会長は12月23日午後、会見で新型コロナウイルスの感染対策について話しました。
大阪府や京都府でオミクロンの市中感染が確認されたことも踏まえ、感染対策の徹底を呼びかけています。
尾身会長は「今この時期が非常に重要」とし、年末年始に向けて、次の3つの対策の徹底を呼びかけました。
1 帰省や旅行は慎重に検討を。行く際には事前の生活に気をつけて、3密回避・基礎的な感染対策を徹底する
2 ワクチンを接種していない人や重症化リスクが高い人に会う前には、検査を受ける
3 忘年会・新年会は慎重に。初詣や成人式などのイベントでも可能な限り混雑を避ける
尾身会長は、冬は「ウイルスにとっては格好の季節」「これまでも日本では年末年始に感染が拡大してきた」として、こう話しました。
「オミクロンの感染も出てきましたが、デルタの方も微増傾向ということがわかっています」
「冬に向けて、人流や接触の機会がまたかなり増えています。今後、感染が拡大することは覚悟しておかないといけない」
「感染をある程度抑えることで、重症者をなるべく減らして、医療の逼迫を防ぐということが最も重要な目標です」
忘年会や新年会など複数人での飲食をする場合は、換気を徹底している「第三者認証店」を選び、できるだけ少人数で行うよう呼びかけました。
帰省はどうする?する場合は?
年末年始に帰省をするべきか否かに関しては「非常に悩ましく、専門家の間でも議論があった」とした上で、以下のように話しました。
「クリスマスがあり、(飲食などの接触での)リスクがあった中で帰省すると、感染が広まる可能性があります」
「既に切符を買って、帰省先のおばあちゃんとかも期待している方がいらっしゃるなら、やめる必要はない。切符を買った人に『やめてください』と言うべきでないと思います」
「一方で、まだ迷っている方もいます。もし迷っていらっしゃるなら、少し考えて、可能であれば今回は検討してください」
帰省をする場合も、ワクチン接種者でも「感染し、他人に感染させることがある」ということは念頭に置き、特に、高齢者など重症化リスクが高い家族に会う際は「感染対策を徹底してください」としました。
体質などでワクチンを接種できない人に対しては、無料検査の仕組みを活用して「帰省や旅行の前になるべく検査を受けることをおすすめします」と述べました。
「クリスマス以降、年末年始の行動次第で、年が明けてからの感染者数のカーブが変わってくると思います」
オミクロンの状況は?今後どうなる?
国内のオミクロンの状況については、「今のところ国内ではオミクロン株の面的広がりは考えにくいが、複数のスポットですでに感染が始まっていると考えられる」と説明。年末年始に「急速に感染拡大する可能性もある」と指摘しました。
スポットでの感染が広がると、「短期間で多数の患者発生が予想され、その中からは重症者も生じ得る」といいます。
医療体制が再びひっ迫するおそれもあるとして、手洗いやマスクの着用といった、基本的な対策の重要性を改めて強調しました。
そのためには、これまでも多くの人が継続して行ってきた、手洗いやマスク着用などの徹底と強化が大切です。
また、自分や周りの人を守るため、そしてオミクロンの感染拡大を防ぐためにも、あわせて、少しでも具合が悪い時は外出せず、医療機関を受診し、検査を受けることを呼びかけています。
ワクチンの追加接種も…
今月から医療関係者や高齢者施設の入所者らへの3回目のワクチン接種が始まりました。年明け以降、接種対象者は順次拡大していく予定です。
3回目のブースター接種について尾身会長は、「早期の接種が重要」だと話しました。
特に、1・2回目のワクチン接種の時期が早かった高齢者などは、「追加接種の体制が整い、自分の順番がきたら、なるべく早めに追加接種を受ける」よう強く勧めています。
尾身会長によると、英国の場合、追加接種によってデルタで9割程度、オミクロンでも8割程度の発症予防効果が得られたということです。
「ファイザー製、モデルナ製に関わらず、なるべく早い時期に接種を受けることをおすすめします」
「まだ(1・2回目を)接種されていない方は、オミクロン株が出てきたこの時期に、ぜひ接種を検討してほしいと思います」
報道陣から尾身会長自身の追加接種について問われると、「早く打てる機会があるワクチンを打ちたい」と答えました。
「分科会など関係なく、私個人の意見としては、(ファイザーかモデルナか)どちらを選びたいということはありません。一番大事なのは『どちらか』ではなく、『早く打てる機会』です」