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「きちんと治療をしていれば生きていた」姉を失った妹たちが語った思い

入管施設への収容期間中に死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんの遺族は、死因の解明や監視カメラの映像の開示を求めています。

「入管の収容施設できちんとした治療をしていれば、姉はもっと生きていたと思います」「本当につらいし、悲しいです」ーー。

3月に名古屋の入管施設に収容期間中、死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(33)の妹2人は、そう語った。

ウィシュマさんは入管施設に収容中、体調を崩し、適切な治療が受けられないまま死亡した可能性が高く、遺族や支援者は政府に対し、監視カメラの映像の開示や死因の調査、説明を求めている。

ウィシュマさんの葬儀が5月16日、名古屋市内で執り行われ、それに合わせてウィシュマさんの家族や友人が来日した。

妹のワヨミさんとポールニマさんは19日、参議院議員会館(東京都千代田区)で開かれた議員懇談会で、国会議員らに、ウィシュマさんの死因についての徹底的な調査や監視カメラ映像の開示を望んでいると話した。

ウィシュマさんは2017年に留学生として来日。日本語学校に通っていたが、学費が払えなくなり退学。在留資格がなくなり、不法滞在状態になっていた。

その間、日本で出会ったスリランカ人男性にDVを受けており、暴力から逃れるために出頭。2020年8月から入管施設に収容されていた。収容中に体調を崩し、嘔吐を繰り返すなどして点滴や治療を求めていたが、点滴が与えられることはなく、2021年3月6日に死亡した。

「自分の目で確かめたい」「問題がないなら隠さずビデオを見せて」

ウィシュマさんの死に関しては、出入国在留管理庁(入管)が調査を進めており、現在、最終報告書を作成している。

中間報告書では、「現時点で未判明(刑事手続における死因解明手続中)」とあり、死亡前日から脱力した様子があり、翌日には呼びかけに応答せず、動けなくなっていたとの記載がある。

その後、ウィシュマさんは救急搬送され、病院で死亡した。

死亡から2カ月以上経ち、葬儀が終わった今でも、遺族はウィシュマさんの死亡前の様子や、適切な治療が受けられていたかなどを知ることができていない。遺族は、収容されていた部屋に設置されていた監視カメラの映像の開示を求めている。

妹のワヨミさんは「入管は、何も問題がなければ、私たちに隠さないでビデオを出すべきだと思います」と強く訴えた。

支援者によると、ウィシュマさんは、点滴などの治療を求めていたが、中間報告書にはその旨なども記載されておらず、不可解な点が多く残っている。

ワヨミさんは「本当に中間報告を信用できません。なので監視カメラの映像がほしいです。自分の前で見て確かめたい」と話した。

ポールニマさんも「入管施設の中のビデオを出せないということは、何か隠しているのだと思います。入管は、姉にすごくひどいことをしたのだと思います」と述べた。

Twitterでは多くの人々が、ハッシュタグ「#ウィシュマさんのビデオを開示してください」で、ビデオの開示を求めている。

何も答えが得られなかった大臣との面会

ワヨミさんとポールニマさんらは5月18日夜、上川陽子法務大臣と面会し、ウィシュマさんの死についての説明と監視カメラの映像の開示を求めた。

しかし面会では、死亡に関する説明や質問への回答などはなかったという。

監視カメラの映像公開には応じず、死因の詳細などについても最終報告書を待つよう伝えられただけだった。

ワヨミさんは「私たちの望んだような答えはありませんでした」「本当に残念でした」とし、こう話した。

「私たちは法務大臣に謝ってほしかったんですが、謝ってもらえませんでした。まだ調査中だから謝れないという答えでした」

弁護士によると、入管は監視カメラの映像を開示できない理由として、「保安上の観点で、ビデオを開示すれば監視カメラの位置が分かってしまい、収容者に壊されたりする可能性があるため」などと説明しているという。

弁護士は、遺族と議員のみへの開示も求めているが、それにも入管側は応じていない。

ウィシュマさんの死については、菅首相も5月19日の参院本会議で「お亡くなりになった方とご家族にお悔やみを申し上げる」と述べた

「きちんとした治療をしていれば、姉は生きていた」

遺族は、入管施設内での医療体制の欠陥について指摘し、ウィシュマさんにも適切な治療が与えられるべきだったと話す。

「きちんとした治療をしていれば、姉はもっと生きていたと思います。支援者からは、姉は嘔吐していたと聞いています。しかし中間報告書を読むと、その症状に合わない治療をしていたことがわかりました。最後にお葬式で見た時、すごく痩せていました」(ワヨミさん)

入管によると、2018年8月の収容開始時に84.9キログラムあった体重は、死亡約2週間前の2月23日には、65.5キログラムにまで落ちていた。

面会をしていた支援者によると、ウィシュマさんは嘔吐が止まらず、面会にもバケツを持って現れていたという。

入管法改正案への抗議集会では多くの人が、ウィシュマさんが持っていた青いバケツを持参し、抗議していた。

「二度とこんなことが起こらないようにしてください」

ウィシュマさんの妹は、「姉について皆さんに知ってほしいし、伝えてほしい」と話し、再発防止を訴えかける。

入管の収容施設内では、痛みなどを訴えても「嘘をついている」などと言われ、詐病を疑い、医師に診療させないケースなどが相次いで報告されている。

ほぼ毎年、収容施設内で死亡者が出ていることもあり、施設内での医療体制の強化が急がれる。

収容施設内の医療に関して、出入国在留管理庁の佐々木聖子長官は2019年9月の会見で、「なかなか常勤の医師を確保できない。医師の確保に難しさを感じている」「医療について、今の状況が十二分であるという認識をもっているということではない」と改善の余地があることを認めている。

ワヨミさんは、入管や日本政府に対し、こう訴えかけた。

「私たち小さい時から日本という国が大好きでした。ですから姉は日本に留学しました。姉がこんな酷いことになるとは夢にも思わなかったので、本当につらいし悲しいです」

「二度とこんなことが起こらないようにしてください」


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