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批判あいつぐ外国人の長期収容。入管庁長官が会見で語った解決方針とは

入管庁の佐々木聖子長官が、難民申請や入管施設内の医療について日本外国特派員協会で開かれた会見で話しました。

出入国在留管理庁の佐々木聖子長官が9月9日、日本外国特派員協会で記者会見した。佐々木長官は、外国人の入管施設への長期収容が問題となっていることに対し、「送還の促進ということで解決していきたい」と述べた。

入管庁は2019年4月、法務省の内部部局だった入国管理局を前身に発足した。日本を訪れたり、住んだりする外国人が増えていることや、外国人労働者の受け入れ拡大が決まったことなどが、その背景にある。

一方で日本の入管行政は、難民認定率が0.2%と国際的に見て極端に低いうえに、強制収容される人が年々増えているうえ収容期間も長期化している。さらに、収容施設で適切な医療を受けられないといった点に対し、内外の批判が集まっている。

法務省の統計によると、2018年には施設への収容者1433人のうち、713人と約半数が半年以上の長期収容者になっている。

こうした状況に、収容者の間で抗議のハンガーストライキが広がっている。長崎県の大村入国管理センターでは2019年、ハンストで抗議していたナイジェリア人男性が死亡した。

佐々木長官はハンストなどを巡り、「施設での処遇の適切さについて、第三者によるチェックを強化していく必要があると思うか」という質問を受け、「視察委員会ということで施設の中も見て頂き、意見をいただいてる」と答える一方、ハンストでの抗議や男性の死亡に関しては、言及しなかった。

「難民申請に『制度の乱用』」

佐々木長官は難民申請について「最近の申請の中には、難民にあてはまらず不認定ですといっても、同じような内容で何度も申請し、制度の乱用というか、そういう申請をされている方もいる」と語り、帰国を避けるために申請を繰り返す、いわゆる「偽装申請」が多いという見方を示した。

収容の長期化について佐々木長官は「退去強制令書が出てからの収容が長期に及んでいるのではないかと意見をいただいている」と切り出した。

強制送還前の収容については「送還をするという法律上の手続きのために、確実にその方々の身柄を確保しておくという目的がある」と語り、強制送還の促進で解決する方針を示した。

2019年4月には、仮放免の不許可により3年以上など長期収容されている被収容者が原告となって、処分の取り消しを求め国を相手取って集団提訴した。原告側の児玉晃一弁護士は「強制送還の日程が決まっていない被収容者の長期収容は、国家による犯罪であり監禁」と主張している。

「常勤の医師の確保に難しさ」

入管の収容施設では長期収容のほかに、収容者が体調不良を訴えて医師の診察や外部の病院での診察を申し出ても、実際に診察に至るまでに時間がかかるなどの問題が起きている。

入管施設内で難民申請者ら収容者に対し、適切な医療が与えられていないという批判に対して佐々木長官は医師の確保などで改善を図っていく考えを示した。

「入管として適切な処遇をするために、色々なものを充実させないといけないという認識は持っています」「特に医療の状況について、今の状況が十二分であるという認識をもっているということではない」と改善の余地を認めた。

2019年3月には、長期収容されていたクルド人男性で難民申請者のチョラク・メメットさんが著しい体調不良を訴え、それを聞いた知人が救急車を入管に呼んだものの、搬送されずに救急車が戻っていったという問題が起きた。

佐々木長官は「個別の案件について、いきさつを紹介するのは差し控えたい」とする一方で、「収容施設の中で対応できないときは 外部の病院に訪問するようにアレンジをする。その強化もしていき、被収容者の受け入れをしていただける病院を増やしていきたい」と話した。

また、「なかなか常勤の医者を確保できない。医師の確保に難しさを感じている」と説明した。

収容された人と家族は

メメットさんは2018年1月に東京入管に収容され、約1年5カ月にわたり長期収容されていた。その間、終わりの見えない収容生活で、胸の痛みや息苦しさ、手足のしびれなどの体調不良を訴えていた。

メメットさんによると、施設内で体調不良を訴え医師の診察を求めていた際も、医師が不在だったために診断まで12時間以上待つことを余儀なくされていた。

メメットさんの妻・ヤスミンさんはBuzzFeed Newsに対して「収容所で体をちゃんと診てくれない」と訴えた。「今も夫は元気がない。胃痛があり、もとに戻るのにすごく時間がかかります」「収容期間はどうしてこんなに長いのか」と長期収容や医療の問題を指摘した。