東京出入国在留管理局の職員や収容者が新型コロナウイルスに感染し、出入国在留管理庁に対し、感染防止の対策強化や収容者の仮放免を求める声が強まっている。
収容施設では、一つの部屋に複数人が収容されていることから、クラスター(集団)感染へと繋がることも懸念されている。
同管理局前では8月11日、収容者の支援者や友人らが抗議の声をあげた。

出入国在留管理庁の警備課担当者によると、これまでに感染が判明したのは、職員5人と収容者1人。職員は収容施設の担当ではなく、羽田空港勤務の職員や、在留資格の書類確認などを担当している職員という。
収容者で感染が判明したのは、東京出入国在留管理局に収容されている50代の男性で、発熱などの症状があり病院へ行ったところ、医師の判断でPCR検査を受け、陽性だった。
男性は、収容施設内の個室に隔離され、療養しているという。
「感染対策が万全にできないなら仮放免を」

この日の抗議を実施したのは、入管施設内に収容されている人々を支援している「収容者友人有志一同(SYI)」。
抗議をしていた織田朝日さんは「入管職員など感染してしまった人を責める気は全くない」とした上で、「収容者も再三(感染予防に)気をつけてと当局に言っていたけど、感染者が出た。収容施設で万全な感染対策ができないなら、収容者を解放すべき」と話した。
収容施設内では「密」な状況なために、新型コロナウイルスが日本で感染拡大し始めたころから、施設内でのクラスター化への不安が収容者にあった。
収容者との面会も頻繁にしている抗議参加者の一人は、情報や予防方法が限られた施設の中で、収容者は大きな不安を抱えていると話す。「発熱者がでた」「コロナ感染者がでた」と噂がまわり、パニックになったこともあったという。
女性は、収容者のコロナ感染に対する不安や懸念についてこう語る。
「コロナの感染対策については、法務省がガイドラインを出していました。ガイドラインに沿った対策をしているのだと思いますが、そもそも収容していなかったら施設内での感染リスクもありません。仮放免を出すべきです」
「収容者は(収容施設の)外で得られるような情報も得られない状況下で、自分が収容施設内で感染する恐怖だけでなく、外にいる家族が感染したら…という不安とも闘っています」
最近面会した中国人女性収容者には、労働ビザを得て働く配偶者がおり、「もし(配偶者が)コロナに罹ったら、もう二度と会えない」と不安を語っていたという。
専門家迎え対策マニュアル作成。入管の説明は

出入国在留管理庁では、感染症内科の医師など専門家もメンバーの「入管施設感染防止タスクフォース」を設置し、施設での対策を議論し、実施してきた。
多くの人が収容されている収容施設や、その他、在留資格更新などの申請者の入場に関しても、細かく対策やルールが決められていた。
これらは「入管施設等における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル」にまとめられ、法務省のウェブサイトでも公開されている。
収容施設に関しては、密集を軽減するために、「仮放免を積極的に活用」などの処置もとってきた。
現在はコロナの影響で航空機も大幅減便していたり、国境が閉鎖されたりしている国もあり、強制送還ができないという現状がある。よって、施設内の人数を減らし「密」の状態を改善するには、仮放免しか方法がないのだ。
しかし、仮放免許可を出す措置をとって人数を減らした現在でも、一部屋に複数の収容者が同じ部屋で生活しているため、懸念は残る。
出入国在留管理庁の警備課担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「引き続き、施設内で感染が拡大しないよう、努めていきたいと思います」と語っている。

担当者によると、東京出入国在留管理局の収容施設内で感染した収容者男性と同じブロックに収容されている人に関しては、すでにPCR検査で陰性が確認されている。保健所と相談した上で、感染予防の措置をとっている。
そのブロックの収容者は個室に収容したり、自由時間に利用する運動場やシャワー、食事に関しては一定期間、時間を分けて利用したりしている。また、接触が多い集団での運動は避けるようにしているという。
収容者には「マスクが1週間に1枚しか支給されていない」と話す人もいたが、その点に関しては担当者は「マスクは汚れたり切れたりしたら都度支給していますし、1日1枚は支給されていると思います」と説明した。
また、入管には、在留資格更新などで毎日多くの人が訪れる。
それらの来庁者に関しては、一回に入場できる人数を制限し、整理券を配布して時間を区切って入場するような措置を取っている。
