2月1日に死去した政治家で作家の石原慎太郎氏。
奈良県立図書情報館は、石原氏の追悼として、著書などの書籍の展示をしています。
作家としての「功」の部分だけでなく、石原氏の政治家としての発言が浮き彫りにした社会課題などを考える書籍も一緒に展示し、Twitterで話題になりました。
担当者に、展示の意図を取材しました。
追悼展示では、作家としての石原氏の著書の隣に、水俣病、LGBTQ、障害者、人種、女性などがテーマの書籍が20冊以上、展示されています。
書籍の隣に置かれたポップには、こう綴られています。
《芥川賞受賞作家であると同時に政治家でもあった故 石原慎太郎氏は、様々な発言が問題となりました。このコーナーでは、このような問題を考える資料を展示しています》
石原氏は、障害者や女性、外国人などに対する発言が、繰り返し問題視されてきました。
展示の企画担当者は、さまざまな社会問題についての書籍を一緒に展示した理由を「(石原氏の)発言で浮き彫りになった論点を考えるため」と説明します。
「知ること、考えることのきっかけになる場として」
石原氏の問題発言が報じられるたびに、当事者をはじめ深く傷ついた人々がいたことも事実です。
書籍で改めて、あらゆる人たちが置かれる立場や社会課題を考える意味について、担当者はこう説明します。
「今回、私たちは、過去の発言を難じるという観点ではなく、公人としての発言が、善くも悪くも話題になっていたことについての論点を、改めて考えるための本をあわせて展示することで、作家そして政治家としての石原氏をふりかえる展示としたものです」
「石原氏は作家でありまた政治家でもありました。その意味で、作家としての作品だけでは振り返りには不十分であると考えました」
「生前の発言や活動は、亡くなったからといって消えるものではありませんし、社会的影響も大きかったと考えます」
「その意味で図書館は、知ること、考えることのきっかけになる場として、このような展示のあり方もあるのではないかと考え、このようなかたちにしたいと思いました」
この展示は、図書展示を企画する司書チームのメンバーが、上司と相談しながら企画。
これまでにも、作家の追悼図書展示の際には、ゆかりの人たちの書籍や故人の関連図書を、著書と一緒に展示したことがありました。
追悼展示のほか、国交樹立記念など様々な節目などに、展示を企画しているといいます。
図書館のTwitterでこの展示についてツイートすると、4千を超える「いいね」がつくなど、大きな反響が。
投稿には「素晴らしい企画」「図書館としての矜持を感じる展示」などの声が寄せられました。
これらの大きな反響に対して、担当者はこう述べます。
「驚きましたが、多くの方にポジティブな反応をしていただいたこと、当館の存在を広く知っていただけたことはありがたく思います。ただ、それほど話題になるような特別なことをしたつもりはなかったので、正直なところ戸惑いも大きかったです」
「今回のことをきっかけに、私たちが暮らす社会について考えたり、本を手に取ってみようと思う人が少しでも増えたらとても嬉しいです」
石原氏の追悼図書展示は、奈良県立図書情報館にて2月20日まで。
サムネイル:奈良県立図書情報館・時事通信