東京都中野区が、公式LINEやTwitterで「生活保護の申請は国民の権利です」と呼び掛けています。
ポスターもつくり、区からのお知らせの掲示板や図書館、区役所などに貼り出しています。
その背景は。中野区に聞きました。
ポスターには、「新型コロナで収入が減った」「持病が悪化して働けない」「給料が低くて生活できない」など、様々なシチュエーションが。
その下に、ふりがなつきで「生活保護を必要とする可能性は、どなたにもあります。ためらわずにご相談ください」と綴り、相談先の場所や電話番号を大きく示しました。
中野区健康福祉部の生活援護課長、中村誠さんはBuzzFeed Newsに対し、「生活保護の相談をためらう人にメッセージを届けるため、ポスターをつくった」と話します。
中野区が3月14日、ポスターをツイートして相談を呼びかけると、Twitter上では「中野区、すばらしい」「全国の自治体に広がってほしい」との反応がありました。
「必要とする人に利用されてこそ意味がある」
中村さんは、ポスターをつくった理由について、こう語ります。
「新型コロナウイルス感染拡大の影響で収入が減少し、生活に困窮する方が多くでています。生活保護は、生活の立て直しをするためにあり、社会の中で必要とする人に利用されてこそ意味があります」
「困っている人が増えている中、家賃補助や給付金などを受けてなんとか生活している人もいらっしゃいますが、生活保護受給の基準以下で生活している方も相当数いらっしゃいます」
ポスターは300枚ほど印刷し、区役所や図書館、保育所、体育館など、幅広い世代に利用される区内の公共施設や路上の掲示板などで貼り出しています。
中野区のLINEでも、ポスターと相談方法の詳細を送信しました。
「生活保護だけは…」という声。「もっと申請が来ていいはずなのに」
区がポスターをつくって活発に呼びかけるのには、生活保護に対するイメージを変え、相談のハードルを下げたいという思いがあります。
「家賃補助などの相談にいらっしゃる方などに、これでは生活が成り立たないので…と生活保護をおすすめすることもありますが、『生活保護だけは受けたくない』とおっしゃることもあります」
「生活保護はマイナスなイメージもあり、相談をすることすらためらっている方もいらっしゃると思います。しかし、ためらわず、まずは相談してほしいと思います」
「区でも、政府が出す雇用状況や経済の統計を見て、申請数を予測しています。コロナ禍のこの状況では、もっと申請が来ていいはずなのに、予測しているような数が来ていません。本当に必要とする方に利用されていない現状があります」
国の呼びかけを追ってポスター作成
2020年春ごろから始まったコロナ禍では、仕事を失ったり、収入が激減したりする人が多くでました。
一方で、そのような厳しい状況下でも、世間やオンライン上での生活保護受給者へのバッシングなどは少なくなく、著名人が不適切な発言をすることも。
厚生労働省はそれを受けて、Twitterで「生活保護の申請は国民の権利です」と投稿し、4万以上のいいねがつきました。
中野区のポスターの文言も、国の発信を元につくられました。
「それでも…」とためらう人へ。「迷っても、まずは相談を」
最後に、中村さんは「それでも…」とためらってしまう人に、こう呼びかけました。
「ポスターにも書きましたが、生活保護を必要とする可能性は誰にでもあります」
「十分な食事をとれずに体調を崩されたり、家賃を滞納したりと、無理をして状況が悪化してからでは、生活を立て直すのもより大変になります」
「相談の上で、もし生活保護受給の基準に達しなかったとしても、さまざまな補助制度をご紹介できると思います。迷っても、まずは相談をしてくださればと思います」