東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と女性蔑視の発言をし、批判が殺到している。
報道によると、森氏は2月3日にオンラインで開かれた日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で差別発言をした。
Twitterでは3日夜から、ハッシュタグ「#森喜朗氏は引退してください」と辞任を求める声が高まっている。
朝日新聞によると、森氏は以下のような問題発言をした。
「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」
「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」
「結局、あんまりいうと、新聞に書かれますけど、悪口言った、とかなりますけど、女性を必ずしも数を増やしていく場合は、発言の時間をある程度、規制をしていかないとなかなか終わらないで困るといっておられた。だれが言ったとは言わないが。そんなこともあります」
JOCは理事25人のうち女性が5人しかおらず、スポーツ庁が定める競技団体の運営指針「ガバナンスコード」にならって、女性理事を増やそうとしている。
それに対して、森氏は個人的な意見として前出のように述べ、大きな批判を受けた。
ガバナンスコードでは役員や評議員の多様性を確保するために「女性理事の目標割合(40%以上)を設定するとともに、その達成に向けた具体的な方策を講じること」を定めている。
「許されない」「引退してください」
「#森喜朗氏は引退してください」のハッシュタグは、4日昼時点で2万6千以上ツイートされている。
ハッシュタグでは、「女性蔑視の発言を公然としたことは許されない」「身を退くべき」と強く引退が求められている。
また、臨時評議員会を取材していたメディアによると、森氏の発言に笑い声も起こったという。
これを受け、「同調して笑った人もオリンピックに相応しくない」「誰も注意しないこともおかしい。これをスルーするのは問題」との意見も寄せられた。
また、Twitter上ではハッシュタグで投稿するだけでなく、大会組織委員会のお問い合わせフォームなどに「意見を送ろう」という動きも出ている。実際に、フォームに意見を送ったという人や、はがきを送るという投稿もあった。
引退を求める声と同時に、委員会側が森氏を辞めさせるべきだとの声もあがっている。
2月4日の毎日新聞の報道によると、引退論が噴出していることについて、森氏は「そういう声が強くなれば、辞めざるを得ないかもしれないですね」と話している。
また、森氏が問題の発言の中で「私どもの組織委員会に女性は7人くらいか。7人くらいおりますが、みなさん、わきまえておられて」などと話していたことから「#わきまえない女」というハッシュタグもできた。
ハッシュタグでは、「どうも、#わきまえない女です」「私は私の怒りを表明する。黙らないし、わきませない」「これからも永遠にわきまえずにいこうね」と、女性蔑視の発言を受けた女性たちが抗議の投稿をしている。
ハッシュタグ「#わきまえない女」と「#森喜朗氏は引退してください」は、4日午前には一時、両方が日本のトレンドのトップ3に入った。
オリンピック憲章は明確に差別を否定
国際オリンピック委員会(IOC)は「オリンピック・ムーブメントの組織、活動、運用の基準」を示す、オリンピック憲章を定めている。
憲章は、和英対訳で日本オリンピック委員会のウェブサイトで公開されている。
オリンピック憲章は、明確に差別を否定している。森氏の発言は、こうした憲章の精神にも反するものだ。
差別について言及している箇所は、「オリンピズムの根本原則」の項目6。
「オリンピズムの根本原則」の項目6では、このように述べられている。
「このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、 国あるいは社会的な出身、 財産、 出自やその他の身分などの理由による、 いかなる種類の差別も受けることなく、 確実に享受されなければならない」
政界や海外メディアからも批判相次ぐ
森氏の発言については、政界からも批判の声があがっている。
蓮舫議員(立憲民主党の)は自身のTwitterで「もう、いい加減にして下さい」とし、発言を周囲が笑ったことに対しても「『わきまえて』で笑いが起きた?その意識の方々で今夏のオリンピック対応を?」と問いかけた。
山尾志桜里議員(国民民主)は「時代認識をアップデートできない政治家が、海外に向けた超重要ポストに座り続けている原因まで考える必要がある」と指摘した。
UPDATE:森氏は会見を開き、発言を謝罪、撤回した。
東京五輪組織委の森喜朗会長は2月4日に都内で会見を開き、「オリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切な表現であった」と謝罪、撤回した。辞任については否定した。
<サムネイル:Takashi Aoyama/Getty image>