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「ナプキン着けて生活もしてみた」男性監督が、生理のドキュメンタリーを撮る理由

生理をテーマにドキュメンタリー映画を撮っている男性監督がいます。その思いとは。

腹痛や腰痛、貧血ーー。辛い症状と一緒に、女性には毎月やってくる「生理」。その生理について、真っ正面から向き合い、ドキュメンタリー映画を撮っている男性がいる。

兵庫県在住の朴基浩さん(32)は、ドキュメンタリー映画 "Looking For THAT"(邦題:アレを探して)を制作している。

朴さん自身は男性で生理がない。そのため撮影にあたり、生理を理解するためにトマトジュースを生理用ナプキンに垂らし、日中から就寝中まで着用する擬似体験もしたという。

なぜ、男性監督が、生理についてのドキュメンタリーを撮影したのか。朴さんに話を聞いた。

生理について「話さない」空気。なぜ?

ドキュメンタリー制作に踏み込んだきっかけは、友人女性の「女性にとって生理は身近なものなのに、誰も生理について話さない」という一言だった。

月に一回あるもので、体におきる生理現象なのに、なぜか女性同士でもあまり頻繁に話す話題ではなく、生理の話題やナプキンなどは「隠すもの」という空気がある。朴さんはこう話す。

「生理の話を他人にしたくない、男性にも話したくない女性はまだ多いと思うし、それは女性が判断することだと思う。けど、話しても良いというオープンな空気感はあるべきだと思います」

だからこそ、女性、そして男性、すべてのジェンダーで話し合える土壌を作りたいとドキュメンタリーを撮り始めた。

生理と一言に言っても、腹痛などの症状が重い人、軽い人、その人の職業や年齢によっても、生理との「付き合い方」は異なる。

生理期間も忙しく働く女性や、アスリート、セックスワーカーなど様々な職業の幅広い年齢層にインタビューをし、映画には「生理」をめぐる様々な意見が盛り込まれている。

夫婦間での生理の会話や、男性の率直な意見を聞くために、男性にもインタビューし、登場人物は約20人にものぼる。

日本で「あれ」と呼ばれる生理

兵庫県出身・在住の朴さんは、母親と姉2人の女系家族で育った。女性が3人いる実家のトイレには、生理用品がトイレットペーパーの隣に置かれており、小学生の時には「なんだろう?」と思って開けて見たこともあったという。

オープンな雰囲気の家庭で、性についても話したりする一家だったが、生理のことになると、男性の朴さんの前ではあまり話されることはなかったという。

家族でよく銭湯に行っており、ある日、母が子どもたちに銭湯に行くよと呼びかけると、姉は「今日、あれやねん」と銭湯に行くことを断った。

「生理」「月経」などと直接的に言葉にすることすら憚られる空気に子どもながらに疑問を感じていた。実際、生理用品のテレビCMでも生理期間についても「あの日」「女の子の日」など表現されることもある。

アメリカでオープンに語られていた生理

日本では、女性同士でも生理についてあまり話さない空気もあるため、学校や職場、異性間の友人間、カップル間でさえ、生理が話題になることは少ない。

朴さん自身、「日本で生理になっている女性にどう気を使えばいいか分からなかったし、女性に生理中と言われると恐怖でしかなかった」と話す。

そんな中、生理についての捉え方が少し変わったのが2003年、アメリカに留学した際だった。

留学中、一緒に住んでいたホストファミリーには、同年代のホストシスターと、ドイツ出身の女子留学生がいたという。家にプールがあったのでよく3人で一緒に泳いだりしていたが、ある日、ホストシスターをプールに誘うと「今日は生理だからやめとく」とストレートに返答が返ってきたという。

「あれ」「あの日」と言われたり、そもそも言葉にすることすら気まずい日本に比べて、率直に言葉にする米国の空気感に驚いたという。

「流行語になるくらい、生理を日常の会話に」

日本では、まだまだ生理をめぐっては「オープンな空気」とは言い難い一方で、メディアやSNSで、生理や新しい生理用品が話題になることもぐんと増えた。

人気マンガ「生理ちゃん」が映画化され11月に上映予定で、月経カップが話題になったり、スタイリッシュで可愛い生理用品パッケージの開発も進んだりしている。

「生理が流行語になるくらい、人々が日常の会話で生理を頻繁に話すようになれば」と朴さんは語る。

男性に知ってほしい生理

ドキュメンタリーを撮影すると決めた時に、まずやったのが生理の「擬似体験」だ。トマトジュースを生理用ナプキンにたらして着用し、独特の蒸れや居心地の悪さも経験した。

腹部や腰の痛みは体験できないが、数時間ごとにナプキンを交換する面倒臭さ、服に赤色が付かないか心配する思いを経験した。生理用品を薬局で買う際には中身が見えないような袋に入れられた体験もした。

1回の生理での経血量や、経血量が多い人、少ない人の多い日の経血量なども調べ、ナプキンに垂らすとどうなるか、なども実験したという。

生理の擬似体験をしてみて感じたのは「男性は経験していない労力や時間を取られている」ということ。そのことを含めて「触れてはいけない話題と思っているかもしれないが、男性に生理について知ってほしい。特に男子高校生など若い人たちにも見てほしい」と朴さんは話す。

最近は新しい生理用品の広がりなど「生理ブーム」となっているが「男性がムーブメントに関わることも大切」と朴さんは考える。

例えばトランスジェンダー男性でも生理がある人もいる。「非当事者である男性も関わっていかないと、いろんな人がこぼれ落ちてしまうと思っています」と話す。

撮影を続ける間に感じたのは「私たちが身を置くこの社会が、男性を中心に設計されたコミュニティーである」ということ。それゆえに、生理について隠したり、話さない風潮があると感じたという。だからこそ、「生理を知る必要がある」、朴さんは語る。

ドキュメンタリーは、ナレーションなどは英語で、日本語字幕がつく。

12月に、映画試写を兼ねたイベントが実施されるという。

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昨日も、きょうも、これからも。ずっと付き合う「からだ」のことだから、みんなで悩みを分け合えたら、毎日がもっと楽しくなるかもしれない。

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10月1日から10月11日の国際ガールズ・デー(International Day of the Girl Child)まで、こちらのページで特集を実施します。