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外国人だから入居NG…「おかしい」「なぜ」。部屋探しで断られる。そんなことがなくなるように。ある女性の思い

高齢者だから、シングルマザー・ファザーだから、LGBTQだからーー。そんな理由で部屋探しの際に断られている人たちがいます。「住宅弱者」の問題に取り組む、LIFULL HOME'Sのサービス「FRIENDLY DOOR」について話を聞きました。

高齢者だから。シングルマザー・ファザーだから。LGBTQだから。障害者だから……。

そんな理由で、住まい探しの際に難しさを感じたり、入居を断られたりしている人たちがいます。

住まい探しでつらい思いをする人がいなくなるようにーー。

そんな思いで、不動産・住宅情報サイトの「LIFULL HOME'S」が、理解があり相談できる不動産会社を検索することができるウェブサイトを展開しています。

FRIENDLY DOOR」の事業責任者、龔軼群(キョウ・イグン)さんに、話を聞きました。

外国籍、LGBTQ、生活保護利用者、高齢者、シングルマザー・ファザー、被災者、障害者。

FRIENDLY DOORのサイトには、7つのカテゴリーが並びます。

バックグラウンドなどが理由となり、賃貸物件を借りにくいなど、住まい探しの際に不便や困難を経験しうる「住宅弱者」と呼ばれる人たちで、社会課題となっています。

LIFULL HOME'Sは、部屋を借りられずに困っている人たちと、安心して相談できる不動産会社をつなぐために、2019年にこのサイトを立ち上げました。

自身が外国籍だからこそ、くっきりと見えた社会の課題

このプロジェクトを立ち上げた龔さんには、日本での住宅弱者をめぐる状況を「変えたい」という強い思いがあります。

中国で生まれ、5歳から日本で暮らす龔さんには、家族が住まい探しをした時に困った経験がありました。

「自分自身も外国籍で、いとこが留学生として一人暮らしをする時に、部屋探しを手伝いました。その際、『入居ができない』と断られる経験があって、おかしいと思った経験がありました」

外国人であることや、留学生であることを理由に、住まい探しで困難を経験することは、残念ながら日本では常態化しています。

龔さんの親が家を購入する際にも、外国籍だということが理由で難しさを経験したことがありました。

「おかしい」「なぜ」と感じた自身の経験を原体験に、龔さんはリサーチを重ねました。

外国人などの住宅弱者をサポートする企画を実現したいという強い思いを持って、LIFULLの前身である株式会社ネクストに入社をしたといいます。

入社後は、社内で諦めずに企画を提案し続け、紆余曲折ありながらも、2019年秋にFRIENDLY DOORをローンチ。

約2年半で、全国3700店舗以上の不動産会社を掲載するまでに規模を拡大しました。

今年の6月20日の「世界難民の日」には、難民・避難民の部屋探しや入居支援のための特設ページも開設しました。

住宅弱者の6割が住まい探しでの「不便」を経験

実際にどれくらいの人々が、自身のバックグラウンドなどを理由に、住まい探しに困難を感じているのか。

LIFULLはこれまで3度にわたり、オンライン上で実態調査を行いました。

最新の調査結果によると、直近2年以内に賃貸契約をした住宅弱者1322人のうち60.4%が、自身のバックグラウンドを理由に住まい探しにおいて不便を感じたり、困った経験があると答えていました。(調査期間:2022年4月15〜20日)

不便を感じたことがある人からは「入居審査が通るか不安だった」という声が多く、物件探しや店頭での対応、内見・契約手続き時に「プライバシーを侵害されていると感じた」という声もありました。

部屋探しでの差別。なぜ起こるのか

いったいなぜ、年齢やジェンダー・セクシュアリティ、国籍などが原因となり、差別的な対応がとられたり、住まい探しが難航したりするのか。

その理由について聞くと、龔さんは、こう答えました。

「不動産会社や大家さん、管理会社などが、『知らない』ことが原因になっていると考えています」

「今までの生活の中で、周りにいなかった人を『怖い』と感じ、その人たちが何か問題を起こしてしまうのではないかと『リスク』として捉えてしまうのだと思います」

FRIENDLY DOORでは、賛同・参加する不動産会社の数をただ単に増やすだけでなく、実際の住まい探しで、不適切な対応などが起こらないよう、研修などを行っています。

参加する不動産会社のスタッフにきちんとした理解と知識を持ってもらい、適切な対応を広めていくことは、「課題」だと龔さんは語ります。

本当の意味で全ての人に寄り添ったサービスとなるよう、不動産会社が接客の際に活用できる、LGBTQの人々への接客チェックリストや、障害者への接客チェックリストをつくり、現場での活用を促しています。

障害と言っても、介助器具の有無など、部屋探しにおいてもニーズが異なります。そのため、「精神・発達障害」「身体障害」「知的障害」の3種類を異なる項目や質問でつくりました。

外国人や障害者、LGBTQなど、様々な人たちのニーズを汲みとったサービスとなるように、それぞれの分野で支援活動や社会起業をする、団体や企業と連携して、課題などを掘り下げ、サービス内容に反映しています。

チェックリストも、それぞれの分野の居住支援法人や企業などと連携してつくりました。

「このサービスがなくても成り立つ社会を」

住宅弱者と呼ばれる人々が存在する背景には、不動産業界、そして社会全体に潜む差別意識や、「違い」への不理解があると考えられます。

それらをなくしていくには、どうすればいいのか。

龔さんは、FRIENDLY DOORのサービスでも改善を重ね、サービスを通してメディア等でも発信を続けています。

現在、FRIENDLY DOORのウェブサイトには「外国籍フレンドリー」「LGBTQフレンドリー」などのカテゴリーが並び、これまではカテゴリーを増やすことでさらに多様な人たちへの対応を進めてきました。

しかし将来的には、「そのカテゴリーもいらなくなるべき」と話します。

なぜなら、社会全体、そして不動産業界全体の理解が進み、差別がなくなれば「〇〇フレンドリー」と分ける必要もなくなるからです。

さらに、龔さんは、こうも語ります。

「FRIENDLY DOORのサービスがなくても、成り立つ社会を目指しています」

「例えば、人は国境をまたいだ瞬間に『弱者』になります。災害などもいつ起こるか分かりません。でも、『弱者』になったから部屋探しが難しいという状況そのものを変えていきたい。そう思っています」

サムネイル:getty image