• lgbtjpnews badge
  • lgbtjapan badge

「同性カップルの結婚式を担当したら…?」この日、ウエディング業界が集まった理由

同性カップルやトランスジェンダーカップルなどの結婚式を担当する際の勉強会が、ウエディング業界対象に開かれました。

「同性カップルから結婚式の申し込みがきたら、挙式までどのようにサポートできるか?」

「社員の理解はどうすれば深まるか」

「業界全体でLGBTウエディングをどう広げていけるか…?」

都内で12月、ウエディング業界を対象に、LGBTのウエディングについてのセミナーが開かれた。LGBTのウエディングについて業界での理解を深めるため、一般社団法人Marriage For All Japanが主催した。

セミナーでは、実際に同性カップルやトランスジェンダーのカップルの挙式を担当したプランナーらが経験を共有。式を挙げた当事者も挙式の際の話や、思いを語った。

会場に集まったのは、ドレスショップのスタッフやウエディングプランナーなど約25人。自社でLGBTウエディングを担当した経験があるブライダル企業3社のプランナーらの話に聞き入った。

「普段通り」に。でも「配慮」も

「LGBTの方々だから特別に何かということではなく、普段通りの式作りをしていこうと思った」と話すのは、テイクアンドギヴ・ニーズの麻布迎賓館で支配人を務める吉田紗苗さん。

しかし、これまで異性同士のカップルを対象にした式が一般的だったからこそ、配慮が必要なこともあった。

たとえば、ウェブのお問い合わせフォームや書類の欄に『新郎新婦』と当然のように記載されていた。「そのようなことがカップルを傷つけてしまうのではないかと思った。ツール関係では困りました」

また、式の司会でも変更を加えた。「新郎新婦」と呼びかけるところは、女性同士のカップルの場合、本人たちに「両新婦」か「両家新婦」など、どう呼べば良いか確認したうえで、言い換えて司会進行をしたという。

吉田さんの職場では2014年から研修の一つとしてLGBT研修を選べるようにしていた。しかし、研修だけではまだまだ不十分で、「携わる社員一人ひとりの理解という部分、寄り添うというのがやはり難しい」と課題を語った。

「業界として底上げしていきたい」

ジャスマックの丸江みゆきさんは、パートナー企業の理解の必要性も指摘した。同社は同業他社と連携し、LGBTの結婚式をサポートするEqual Weddingなども展開し、これまでもトランスジェンダーカップルの式なども担当してきた。

同社の代表取締役は「LGBTウェディング」という本も出しており、社内の理解はあった。しかし丸江さんは「式は会場だけではできない。ドレスショップなどパートナー企業さんの意識も大切。温度差があることもある」と話し、業界全体として、協力していく重要性を指摘した。

丸江さんは話す。

「私も勉強しないといけないと思い、イベントなどにも足を運び学んでいます。当事者のカップル(からの発信)だけではなく『同性婚って認めてもらわないといけないんだ』っていうのを、業界として底上げしていきたいと思います」

CRAZYは同社の結婚式場で6月、YoutuberのMikiさん、Kanaさんの「誓いの場」をホストした。同性カップルの結婚式をプロデュースする取り組みの一環だ。

CRAZYもウエディング業界での「横の繋がり」を強化するために積極的に動いていく予定という。

同社の吉田勇佑さんは「ブライダル業界から積極的に動かしていければ、インパクトがあると思います。もし同性婚の法改正が先だとしても、(同性の結婚式などが)当たり前という空気感が伝わっていくんじゃないかなと思います」と話す。

「0.1秒を乗り越えて」

勉強会では、実際に結婚式を挙げた当事者も自身の経験を語った。

七崎良輔さんは、LGBTウエディングをサポートする合同会社Juerias LGBT Weddingの共同代表でありながら、自身も2016年10月、築地本願寺(東京都中央区)で同性パートナーとの結婚式を挙げた。

パートナーとは、2015年9月にパートナーシップ契約公正証書を結んだ。七崎さんが、ずっと結婚式を挙げたいと考えていた築地本願寺での式を申し込んだが、実際の挙式までの道のりは長かった。

まず電話で申し込みをしたが、電話口で最後まで七崎さんたちが同性のカップルであることが言えなかったという。やっとの思いで、七崎さんもパートナーも男性であることを伝えると、挙式が可能か検討するために、半年間待たされた。

七崎さんは「当事者としては、挙式の申し込みの際にも、スタッフの方に命がけの思いでカミングアウトをする。勇気だした人を傷つけて欲しくないと思います。申し込みを受ける側も、ちゃんと受け止めてほしい」と話す。

電話などの申し込みで、同性カップルであることを伝えた後、相手が返答に戸惑う「0.1秒」の合間があると七崎さんは話す。

「0.1秒を乗り越えて、問い合わせがあった時にはすぐに『おめでとうございます』と対応してほしい」

同性同士での挙式ができるかの検討で、半年間待たされた七崎さんたちだったが、繰り返し電話するなどし、念願の挙式が叶った。しかし、日本では同性婚がまだ認められていないという理由で「結婚式」ではなく「パートナーシップ奉告式」という名で執り行われたという。

七崎さんは「一般の参拝客もいるので、石を投げられるんじゃないかと心配していた」と当時の心境を語る。しかし結果的にはそのようなこともなく、当初出席したくないと言っていた母親も、家族と共に出席した。

七崎さんは語る。

「今は意識が少しずつ変わってきていて、今の高校生が大人になるときには、(同性カップルも)普通に結婚式を挙げるようになっていると思う」

「今は『問い合わせが来たら答えますよ』というスタンスの会社が多いと思う。けど、『同性婚を応援しています』とウェブサイトなどに載っていたら行きやすいです。怖がらないでまずは受け止めて対話をし、進めてほしいです」

同性婚「必ず実現させます」

同性同士の結婚を認めないのは憲法が保障する自由や平等に反しているとして、現在、全国5カ所で13組の同性カップルが一斉に、国を相手取った訴訟を起こしている。

今回のセミナーは、その同性婚集団訴訟の弁護団のメンバーで立ち上げた、一般社団法人「Marriage for All ー結婚の自由をすべての人にー」が主催した。

Marriage For All代表理事で弁護士の寺原真希子さんは、セミナーで同性婚集団訴訟などについて説明。「同性婚を歓迎する空気があるかないかということが、当人たちに与える影響は大きいです」と語った。

スウェーデンとデンマークで、同性婚が認められた後、大幅に同性愛者の自殺率が減ったという統計なども例に挙げ、こう述べた。

「婚姻でついてくる具体的な権利や利益もですが、それと同じくらい大事なのは、国が『正式なカップルとして認めた』ということです」

「同性カップルの方たちが、同性婚が法制化されなくてもできる結婚式を躊躇している現状があります。『ウェディング、あげられますよ』ということを業界もアピールし、同性カップルが式を挙げ、周りから認められ、祝福されてほしい」

集団訴訟の弁護士として奔走する寺原さんは語る。

「今やっている裁判の判決が最高裁で出るのが4、5年後。けど『今』必要な人がたくさんいるんです。5年で解決します。同性婚は必ず実現させます」

今回はウエディングプランナーや式場関係者が集まったが、今後は婚約・結婚指輪を販売するジュエリー業界、新婚旅行プランを販売する旅行会社なども対象に、今回のようなセミナーを実施していく予定という。

実際、同性パートナーと挙式をした七崎さんも、結婚指輪の購入先は、同性婚に支持を表明する企業で購入した。

ティファニーは2015年、ゲイカップルを結婚指輪の広告を起用している。それを見た七崎さんとパートナーが、東京都内の店舗に結婚指輪の購入に訪れると「おめでとうございます」とすぐに案内されたという。

寺原さんは、同性婚と経済の関係性も指摘し、「企業自身が、同性婚を支持しているということをオープンにすることが大切」と話した。