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困窮学生への給付金は「狭き門」。日本人学生と留学生に意見を聞いてみた

「学生支援緊急給付金」の給付条件で、留学生用の要件などに成績基準が設けられました。留学生や日本人学生はそのことについてどう考えるのか。話を聞きました。

新型コロナウイルスの影響で経済的打撃を受けた学生らに対し、文部科学省は最大で20万円を支給することを発表した。

だが、この「学生支援緊急給付金」の支給対象者の要件には、留学生に対して「学業成績が優秀な者」などの条件があり、成績評価係数(上限3)で2.30以上という成績基準が明記されている。

そして、日本人学生に対しても、「無利子奨学金を受けていること」といったかたちで間接的に成績基準が設けられている。さらに、支援を受けられるのは、対象となる学生全体の1割強に留まる「狭き門」だ。批判も集まる中、学生らはどう考えるのか。

BuzzFeed Newsは留学生と日本人学生に話を聞いた。

留学生、ギリギリの生活。「これで少し助かると思ったのに」

20代の韓国出身女性(国立大学院・修士2年目)は、留学生は「就労条件である週28時間の中でギリギリの生活を保っている」と話す。緊急給付金について知ったときは、「これで皆、少しは助かるかも」と思ったという。

女性だけでなく、コロナの影響で周りの留学生も大変な状況に置かれている。アルバイト先を失い、帰国せざるをえない人もいた。

「帰国したくてもそもそも(国際線航空便)運休によって帰れない、帰りたくてもチケット代すらもっていない、親からも助けてもらえないという状況に置かれています。(緊急給付金の知らせを聞き)これでみんななんとか耐えられる、助かると思いました。しかし内容を確認して、少しがっかりしました」

「死活問題の中、なぜ『優秀』であることが助けてもらえる基準になっているのか。非常に残念です。かつて上位3割だった学生さんが、どのような形で日本に『貢献』してきたかに関しても疑問です」

留学生への要件には成績基準などが設けられていることを知り、落胆の思いをTwitterに投稿すると、「帰れ」などという酷いリプライがついたという。

「留学生は、日本社会の構成員」

女性は2015年から日本で暮らしているが、昨年夏、一度は帰国を考えた程に体調をくずし、以来アルバイトを辞めたという。

親からの支援と貯金を崩しながら生活していたが、3月頃に親からも「しばらく仕送りできない状態。だから何かあっても奨学金でなんとか耐えて」と言われた。今は奨学金で生活している。

女性は語る。

「日本人学生にも同様、留学生の日常も日本にあります。国籍問わず、日本のすべての学生が学業に集中できるよう、心から願っています」

また、女性は「留学生は、日本社会の構成員」と話す。

『「いずれ帰る」人もいれば、定着する人もいます。いずれにせよビザの有効期限の間は、日本で学校に通って、アルバイトをして、友だちと遊んで、素敵な人々に出会うことは日本人と変わりません。学生たちは、学業のために日本に渡ってきたので、卒業できるまでにはそんな簡単には帰れません」

また「まず、日本人学生に対する支援を見直してほしい」とも語った。

「日本人学生にも行き届かない支援が、留学生に届くはずがないと思います。そして、成績上位3割という条件を見直してほしいです。A大学の申請要件を満たさない7割の学生が、B大学の上位3割より『優秀』でない根拠はどこにあるのかと思いました」

「家賃払えない、ご飯買えないという状態は、成績関係ない」

都内の大学院に通う30代のアメリカ人男性は、困窮学生を支援する給付金が「好成績」を条件としていることに疑問を投げかける。

「家賃払えない、ご飯買えないという状態は、成績に関係ないですよね。だから、そういう判断はおかしいと思います」

「国によって自分の国から給付金もらってる人もいれば、貰ってない・貰えない人もいると思います。なので、こういう時は皆、平等に支援してほしいです」

また、男性は「留学生こそ、いわゆるエッセンシャル・ワーカーとしてコンビニなどで仕事をしています。日本の社会に必要な存在です」と指摘する。

エッセンシャル・ワーカーとは、英語で必要不可欠な労働者という意味。医療従事者やスーパーやコンビニの店員など、人々の暮らしに必要な仕事に従事する人々をさす。

人手不足に悩んできた飲食業やコンビニなどサービス業などは、安価な労働力として留学生を積極的に雇い入れてきた。今では都心を中心に、どこのコンビニや飲食店でも留学生ら外国人が働いているのを目にするようになった。

新型コロナの影響で、特にサービス業などは大きな打撃を受けており、多くの留学生がバイトを失ったり、シフト減で収入が減り、苦しい生活を送っている現状もある。

男性自身も、新型コロナが流行する前は、バーテンダーと大学事務のバイトをしていた。しかしコロナでクラブも大学も閉まったために、それらのバイトのシフトは全く入れていない状態だ。

また男性は、政府の姿勢に対しこうも指摘した。

「これからも国際的に(多様な社会を)アピールをしていきたいのであれば、政府はこういう時こそしっかり、多様性に対する考えを見せて欲しいです」

「奨学金受けずに、必死に学費稼ぐ学生」

緊急給付金では、留学生に対し、成績評価係数(上限3)で2.30以上の「学業成績が優秀な者」という成績基準が設けられている。

一方で、日本人学生に対しても、いま第一種(無利子)奨学金等を貸与されているか、貸与を受ける予定の学生に限るなどといった要件がある。要件の1つである無利子奨学金には成績基準があるため、実質的には日本人も成績上位者が対象となる仕組みだ。

文部科学省の高等教育局学生・留学生課の担当者によると、支援を受けられるのは対象となる学生約370万人のうち、43万人程度にとどまる。

こうした基準についてどう思うのか。都内の大学に通う20代の日本人男子学生は、こう語る。

「周りの学生には、奨学金を借りずにバイトで学費を必死に稼いでいる友人もいます。その人たちは緊急給付金を受けられるでしょうか」

「要件を見ていると、この基準だと学生からの不満が出る事は必至で、必要な学生に届かないこともあるのではと思いました」

日本の奨学金の主流は、「給付」ではなく「貸与」だ。今回の支援の条件となる「第一種奨学金」も、成績基準があり無利子だとはいえ、返還義務のある「借金」であることに変わりはない。

一方で、大学を卒業しても安定した仕事に就けなかったりリストラを受けたりして、奨学金を返せなくなる「奨学金破産」といった問題が、ニュースで頻繁に取り上げられている。このため「奨学金を借りないという選択をする学生もいます」と、この男性は話す。

飲食などサービス業のバイトに就く学生が多い中、コロナの影響で居酒屋などは軒並み休業した。

「学費や生活費のための数ヶ月分のバイト代が入ってこない状況も。広い視野での支援が本当に必要とされています」

男性もバイト収入が減った。

工事現場などの警備員のバイトをしてきたが、現場で感染者を出さないように建設会社の多くが工事を一時休止した。このため、男性も仕事に入れる機会が減ってしまったという。

「ニュースで見て、学生皆がもらえるという印象を受けましたが、要件などを見て違うんだなと思いました。私も緊急給付金の要件に全て当てはまるか分かりませんが、自分の苦境は伝えた方がいいかと思うので、その意味でも応募は試みようと思います」

「大学はぜひ、学生の声を国に届けてほしい。緊急給付金の総額は決まっていますが、実際、本当に必要としている困窮学生に届けるにはもっと必要なのではないでしょうか。総額を増額することも検討してもらいたいです」


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