「もう時間がありません」空襲被害者を救って…首相や自民党に向けられた声

    空襲で障害が残った存命の民間人空襲被害者に補償をする、空襲被害者救済法の成立が急がれています。鍵は自民党の賛同。菅首相に対しメッセージが集められています。

    太平洋戦争中の空襲で体に障害が残った民間人に、戦後、何の補償もされてこなかったこと、知っていましたかーー?

    空襲経験者の高齢化も進む中、空襲で障害を負った被害者に補償をする「空襲被害者救済法」の成立が急がれています。

    法案要綱には全野党が賛成していて、鍵となっているのは自民党の判断です。

    自民党の「一歩」で補償を実現するために、菅首相や自民党に声を届けようと、若い世代がアクションを起こしています。

    現在、存命の空襲経験者は、当時まだ子どもだった人たちも少なくありません。

    国家が始めた戦争に巻き込まれ、空襲によって障害が残ったものの、76年経っても国は補償をしないため、被害者は自費で治療費や手術代を払い続けています。

    空襲被害の実態調査をし、空襲で障害が残った人に特別給付金一律50万円の支給をすることなどが、救済法案の要綱にはまとめられています。

    菅首相、自民党に「声」を届けるプロジェクト

    超党派の「空襲被害者等の補償問題について立法措置による解決を考える議員連盟(空襲議連)」は2020年10月に要綱案をまとめ、今国会中の救済法成立を目指しています。

    「あと一歩」というところまで漕ぎつけていましたが、自民党・公明党の党内手続きが終わっていないため、国会への法案提出がされていません。

    そこで、自民党総裁である菅首相と自民党に救済法成立を求める「声」を届けるため、メッセージを集めています。

    メッセージはオンラインで集められ、5月末を目処に自民党本部に提出される予定です。

    これまでに集まった菅首相に対するメッセージでは、空襲被害者救済をめぐり、このような思いが綴られました。

    《戦後の被害者への救済措置とその調査は不十分であり、補償されるべき人たちに関する調査を一刻も早く行ってください。戦争に巻き込まれた被害者への賠償は国の責務だと思います》

    《元軍人・軍属の手厚い補償と民間人の無補償。不合理な戦後補償が長期にわたって放置されてきました。民間人空襲被害者などを救済する法案の成立が急務です》

    菅首相へのメッセージはオンラインで、誰でも、匿名でも書き込める仕組みです。

    このプロジェクトの発起人である福島宏希さんはこれまでにも、若者たちで空襲被害者の証言を撮影・編集し、YouTubeで動画を公開するなどの活動をしてきました。

    今回、若者を含む多くの人たちに、空襲の被害や補償問題について知ってほしいと、わかりやすく背景を理解できるようなウェブサイトもつくりました。

    福島さんは、救済法案がたどってきた経過についてこう説明します。

    「空襲被害者に残された時間はほとんどありません。既に多くの方が亡くなりました。今、この運動の中心を担っている空襲被害者の方々も、もうあと1年活動できるかどうか…とおっしゃっています」

    「昨年は戦後75年の節目の年であり、世論も盛り上がりました。しかし議連で要綱案ができ、野党の了承が取れたところで終わってしまいました。本当に、あと一歩のところまできています」

    また、秋までのどこかで衆議院選挙も行われます。空襲議連の幹部を含む議員たちも当落の影響を受けるため、今国会中の成立が急がれているといいます。

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    福島さんと大学生が3月に公開した、空襲経験者・利光はる子さんの証言動画

    東京大空襲があった3月10日前後には、法案成立を求める集会などが度々開かれ、その様子も盛んに報じられました。

    空襲経験者たちがつくる「全国空襲被害者連絡協議会(全国空襲連)」は3月3日、衆議院議員会館(東京都千代田区)で集会を開き、法案の早期成立を訴えました。

    集会で空襲議連会長の河村建夫議員は「なんとしても『この国会で』という思いで手順を踏んでがんばっていきたい」「空襲で被害を受けられた国民の皆様に対し、国がやはり慰謝をするべきです」と話していました。

    しかしその後、大きな進展はありません。

    このように議員立法で民間人の空襲被害者に対する補償が提案されるのは、初めてではありません。

    1973年から1989年まで、議員立法の「戦時災害援護法」案が14回にわたって国会に上程されましたが、いずれも廃案に終わっています。

    空襲経験者の声に耳を傾けてきた福島さんは、こう話します。

    「空襲経験者からは『やはりまたダメなのか』『空襲被害者が皆死ぬのを待っているのではないか』という嘆きの声が聞かれます。これまでずっと待たされてきたので、『今回もダメか』というムードがあります」

    東京大空襲で母親と弟2人を亡くし、救済法成立に向け活動する河合節子さんは、3月に開かれた空襲連の集会で、こんな風に呼びかけていました。

    「空襲被害者の大多数が既にこの世を去り、残された者も少なくなってきています。無念を胸に亡くなった多くの人々の思いが私たちの背中を押しています。どうぞ一日も早く、今国会中に法案を成立させてください」


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