「飢えるか熱中症になるか」「3食たべさせたいけど無理」値上げで、子どもがいる困窮家庭の状況が深刻化。いま必要な支援は

    コロナ禍と物価高騰の影響で、子どもがいる困窮家庭の状況が深刻化しています。NPO法人のキッズドアは会見で「もう限界を迎えている」と政府による支援を求めました。

    コロナ禍と物価高騰の影響で、この夏、子どもがいる困窮家庭の状況が深刻化している。

    困窮家庭の子どもたちへの宅食や学習支援を行うNPO法人「キッズドア」は8月8日、都内で会見を開き、「本当に厳しい状況」「もう限界を迎えている」と政府による早急な支援を求めた。

    キッズドアの渡辺由美子理事長は会見で、コロナ禍での不況と値上げの影響が直撃する困窮家庭の状況について、こう話した。

    「物価高をめぐる状況は本当に大変です。世間では、多くの方は『電気代が2千円くらいあがったな?』と感じているくらいかもしれないですが、私たちが支援している困窮家庭にとって、2千円上がることは死活問題です」

    「電気代が2、3千円上がると、お米を5kg買うか、クーラーをつけるかを選ばないといけなくなる。飢えるか熱中症になるかを選ぶというような状況の中で、本当に困っていらっしゃいます」

    東京電力や中部電力では1年前に比べ、標準的な使用時の電気代が2千円以上値上がりしている。

    食費の高騰については、キッズドアが支援している家庭からは「子どものために食事に肉や魚をつけようと思っていたけど厳しい。夏休みの間はカップ麺やうどんなどの一品になりそう」「子どもに3食たべさせたいけど無理なので、朝は我慢してもらって昼と夜だけにしている」という声が寄せられている。

    キッズドアは、このような困窮する家庭に向け、宅食をしたり、寄付を募り食費を支援したりしているが、状況は厳しいという。

    7割以上がコロナ禍で収入減。5割が「収入減ったまま」

    キッズドアは今回、夏休みを迎えた家庭のコロナ禍での収入減少の状況、必要とする支援などに関する実態調査を行った。(調査期間:7月5〜12日)

    対象は、同団体が運営する困窮子育て家庭向けの支援の登録者で、今年の夏に食糧支援に申し込みをした世帯。2084件の回答があった。

    調査の結果、コロナ禍前と比べて収入が減った世帯は、回答者のうち75%にのぼり、50%は「収入が減ったままの状態が続いている」と答えた。

    厳しい状況の中を物価高騰が襲い、子育て中の困窮家庭は「かつてないほどに深刻な状況にある」という。

    経済的な余裕がないなどの理由で、49%が夏休みに子どもと一緒に行うアクティビティを「予定していない」と答えていた。

    自由記述欄には保護者から、苦しい状況を訴える声が寄せられた。

    《物価が上がっていて給料が伴わず生活困難が続いている》

    《夏休みが怖いです。給食が無くなるので栄養バランスや食費の増加が恐ろしい》

    《3、4ヶ月の間に家族皆コロナになり仕事もできなくなりました。子どもの部活用品が一切買えなくなりました》

    また、学校での学びや宿題のDX化が進む中で、困窮家庭ではパソコンやプリンターなどを用意する経済的余裕がなく、宿題をするにも支障がでている現状がある。

    回答者のうち、パソコンがない家庭が46%、インターネット回線も11%が「なし」、30%がネットはあるが容量制限があるという状況だった。

    国は「子どもが飢えない」状況の整備を

    非正規雇用で飲食業や観光業などに従事していた人が、やっと仕事に戻れるかという状況でコロナの感染の第7波が来てしまい、仕事に復帰できない保護者もいるという。

    渡辺さんは、「そのような状況の中、体や心の調子を崩してしまう人も増えていて、生活保護を受けることにした家庭も」「親が倒れると、子どもが家事をして生活を維持し、学校に行きづらくなるケースもある」と話した。

    キッズドアは会見で、政府に対し、子ども関連予算の確実な増額や、コロナで減少した収入を補う支援の強化、子どもを持つ家庭のデジタル格差の是正などを求めた。

    渡辺さんは「子どもが飢えない、ごはんが食べられるという状況の整備は、先進国としてはぜひ、国がやって頂きたいなと思います」とし、子どもたちに必要な支援を呼びかけた。

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